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Episode 206 途中経過を聞きに行く

「やっぱ、沙良っち、気にしてんの?」

「かなりな。遊菜が飛んで行ったあと、自分の泳ぎに満足してへんのか、首傾げてたわ」

「こうなったら、個人も微妙やな。行けても中央が限界ちゃうか?」

「マネージャーとしては、せっかくのタイムを持ってるんやから、磨いて上に行ってほしいんやけどな……」

「それくらいの力はうちもあると思うんやけどな。なんか、あんまり人のことをどうこういうつもりなんかないんやけど、沙良っちの行ってるスクールのコーチに問題ありそうやな」


 こりゃ、矯正しても、こっちで育てるのはかなり時間がかかるかもしれないな……。

 そんなことを思いながら、先にスタスタと歩いていく沙良ちゃんの背中を見ていた。

 控え室に戻った私は久しぶりに疲労感を覚え、少しウトウトする。

 そんな時だった。男子のリレーレースのメンバーが戻ってきた。


「ナイスファイトな」

「お前ほどとちゃうわ。誰が久しぶりのレースで1分20なんか出すねん。大野さんに言われてびっくりしたわ。わざわざ言いに来たのもちょっとびっくりしたけど。しかもさ、頭が37って、ほとんど現役のときのタイムやろ?スタートは見てられへんかったけど」

「そんなに出てたん?もっと遅いと思ってたわ」

「よう言うわ。ほんで、福森も30やし、稲葉さんも10やし、大神に関しては1分切ってるしさ。えぐいやろ。男子と女子のタイムがほとんど変わらへんって」

「でも、うちのバックがなかったら、プラス20秒やからな。そんな変わらんくなるで」

「ほんまはな。それやったら、はよ選手に戻ったらええねん。そのほうがお前も楽しいやろ?まぁ、別に無理強いするわけとちゃうけど……」

「うちはうちで、ちゃう楽しさを見つけたから、マネージャーのままでええんよ。それに、あの事が頭をよぎってスタートできひんかったわけやしな。選手はもうええわ」

「そうか。ちょっと楽しそうに見えてんけどな。お前の泳ぎ終わった時の顔。スタート以外は克服したもんやと思ってたわ」


 まだまだトラウマの克服には時間がかかる。たぶん、直哉に言った通りで選手に戻るつもりはない。例外は今回だけだ。

 バックのリレメンの香奈ちゃんが手首を怪我しているから復帰しただけ。

 この大会が終われば、また、ただのマネージャーに戻る。そして、頭の中はすでにマネージャーモードに。

 そんなこともあってか、更衣室で普通に着替えて、控え室に戻ったあと、自分の荷物を大分あと、荷物番をしてくれている優奈ちゃんに声をかける。


「ごめんだけど、ちょっとプール行ってくるね」

「わかりました」


 ほかの選手も聞いていたことだろうから、たぶん、大丈夫なはず。そんなことを思いながら、奈々美ちゃんのいるプールサイドへと向かう。


「お疲れ様。今のところどうよ」

「あっ、咲先輩。おつ……ナイスパフォーマンスでした」

「マネージャー同士のときは『お疲れ様』で構わへんよ。禁止なんは、選手たちのモチベーションを保つためのものだけやから。それに、うちは選手とちゃうんやから。ほんで、今の感じは?」

「今の段階だと、沙良と遊菜先輩、原田先輩の3人が中央進出確定で、伊丹先輩が自己ベスト更新ですかね」

「やっぱりそんなもんか~。言い方が悪いかもしれへんけど、今年は意外とみんなタイムが遅いからな。中央に出られる人数は増えへんかなぁ」

「でも、ギータ先輩もバッタならいいタイムを残してるから行けるんじゃないですかね」

「たぶん、ギータならいけると思うけど、どうやろうね。今年は4人だけかな」

「そういえば、愛那先輩は?結構惜しいところにいたと思うんですけど」

「愛那も復帰したばっかりやからな。あんまり無理をさせるわけにはいかへんし、こんなことを言うのはどうかと思うけど、足を滑らせるから、かなり慎重に行くんとちゃうかなとは思ってる。そりゃ、行ってくれたらうれしいけどな」

「ですよね。それに、練習も軽めでしたもんね」

「腰の故障が一番厄介やし、様子見ながらってところやけど、ドクターストップも解けて、楽しそうにやってるから行けると思ってるんやけどな。とりあえず、了解。朝の間はよろしくな」


 とりあえず、タイムはある程度把握したから、選手たちのメンタルケアに行こうか。たぶんね、遊菜と直哉、それに自己ベストを出した伊丹くんは問題ないと思っている。

 伊丹くんに関しては、顔には出さないけど、おそらくテンションが上がっていることだろう。

 だとするなら、とりあえず、タイムもあまりよくなかった沙良ちゃんのケアかな。とは持っているけど、果たして、私の話は聞いてくれるかな。

 そんなことを思いながら、沙良ちゃんの姿を探す。


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