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Episdoe 203 レース前のウォーミングアップ

「ほんならアップ行くか。香奈ちゃん、8時半から代表者ミーティングあるから、ちゃんと行ってな」

「わかってるよ。いってらっしゃ~い」


 香奈ちゃんはいつもよりのんびりした感じで返事をする。

 いつもより朝が早いためか、眠そうな顔。やとしても、会場の学校が駅から遠いから、いつもと変わらないと思うんだけど……。

 そんなことを思いながら、アップしにプールに向かい、軽く身体を動かしてから水に身体を浸ける。

 ……やっぱり、春先で水温が低いプールとは違い、温水で少し温いくらいに管理されたプール。

 その感覚に一瞬怯み、何とかして慣らそうとしても、身体が慣れることを拒否する。


「咲ちゃん、なんかえらい泳ぎにくそうやな」


 気付けば後ろを泳いでいた遊菜が声をかけてきた。


「なんかな~。なんか慣れへんわ。こんな水温で泳ぐのは。それに、なんかぬるっとしてるし」

「まぁ、水温が温いのはありがたいことやけど、その分泳ぎにくいのはしゃあないやろ。あとは、ターンもしにくいし、タッチもちょっとなぁ。っていうのがあるから怖いんよな。あとは、スタートもやね。去年、直ちゃんも言うてたと思うけど、派手に滑るから気をつけろよとは言うてたけど、想像以上やもんな。足打ったら絶対痛いわ」


 そっか。愛那は去年のこの時期、ドクターストップでマネージャーとして動いていたもんね。だから、この会場で泳ぐのは、今年が初めてなのもわかる。


「ほんまにな。うちもこれまでの感覚で飛んだら、つるんといったわ。あれはヤバい。こんなん初めてやから、対応しきる余裕がないかもしれんわ」

「せやね。それに咲ちゃんは、上からだけやなくて、バックのスタートもあるもんな。感覚掴むの、かなり苦労しそうやな」

「そこなんよな。バックのスタートもさっき滑ったし。それだけ怖いんよな。スタートミスったら絶対萎えるよな」

「マジでな。でも、やるだけやるしかないよな。まぁ、やるだけやるだけやな」


 そんなことを離した後、自分の泳ぎに集中する。

 とにかく、出るのは2種目だけやし、遊菜たちみたいに4レース出るわけじゃないし、あと私のフォームの確認できればそれでいい。正直、メドレーリレーが初っ端の競技だから、アップのときから泳ぎ過ぎて疲れるのは避けたい。

 とりあえず、ダッシュを1本だけやって、あとはダウンして身体を休ませるか。で、レースに挑もうか。


「どうや、美咲。泳げるか?」


 クールダウンを済ませて控え室に戻ると直哉がストレッチをしながら私に話しかけてきた。


「なんとかって感じやね。昔のようにはさすがに無理やわ。とりあえず、自分ができる最高のパフォーマンスをするだけかな」

「そうか。あんまり気張り過ぎんなよ。楽しめたらそれでええんやし」

「わかってるって」


 それだけ返すと、私も壁に手を付けて大きく背中を伸ばす。

 正直に行って、私のタイムはバサロ次第。

 バサロキックが昔みたいに戻っていれば、その分進むだろうから、昔には程遠いだろうけど、タイムは期待できる。さっきのウォームアップでやった感覚は、まだなんとか行ける。そんなところで、感覚はまだ戻り切っていないっていうのが本音。

 なんとかしたいな。とは思いながら練習していたけど、さすがに戻り切らなかった。

 このちょっとした違和感がどう働くか。いい方向に向いてくれたらいいんだけど……。


「おし。全員戻ってきたか?」


 ゆっくりしていた時間は10分くらいかな。代表者ミーティングに行っていた香奈ちゃんも戻ってきたタイミングで直哉が声を上げて、周りを確認している。


「また大神がおらんか。まぁええわ。いつものことやし。オッケー。ミーティングするから、みんな、外集合してほしいんやけどええか?」


 直哉がそういうと、みんなゾロゾロと外に出る。だけど、私は動かない。

 直哉から『外に出てほしい』って言われたときに、左手で電話を掛ける振りをしていたから、私が荷物番をお願いしたいんだろな。って思ったからであって、ミーティングはどうするの?みたいな声があると思うけど、スマホを通話状態で私にも声が聞こえるようにぬかりなくやっている。


『えっと、おはようございます。あんまり長々としゃべるのは性に合わへんから、簡単に終わらせたいと思っているけど、2つだけ。1つ目は今日1日を楽しむこと。もちろん、みんなでワーキャー言えってことやなくて、いつも言うてるけど、力を抜くために。力んだってええタイムが出るわけやないし、悔やむだけやろうし、それやったら、リラックスして、いつも通りに行けばタイムは出るから、楽しむことを第一に心がけること。2つ目は、ミスっても慌てない・諦めない。アップの時、慣らすためにやったと思うけど、ここのスタート台とターンの時の壁、めっちゃ滑るから気をつけろよ。正直、俺も大神も滑らんようにって思って飛んでるけど、それでもやっぱり、つるんと滑るもんやしさ。焦らず、気にせず、自分のフォームを立て直すことに集中すること。そのあとは、しっかり泳いだらええだけやからな。俺からはこれくらいやな。鈴坂、何か聞いてるか?」

『うん。聞いているよ。えっとね、毎年のことらしいんだけど、レースはいつも時間をかなり巻いて進むから、時間に遅れないでね。一応、マネージャー同士で連絡を取り合うから、近づいてきたら教えるつもりでいるけど、自分たちでも一応気にしておいてね。わからなくなったら言ってくれていいから、招集に遅れないようにお願いします。あとは、見ての通り、普通の学校で、控え室も普通の教室を借りてます。で、今日は日曜日で、明日は月曜日です。授業もあるから、散らかさないように、ごみは自分たちで持ち帰って下さい。だって。香奈からはこれくらいかな』

『よし。ほかになんかあるか?……特にないな。よっしゃ、吠えてレースに備えるか。行くぜ、ゴーハイゴー!』

『ダークレッドナイト!』


 その声が聞こえた後、選手たちがぞろぞろと戻ってきた。そのころには、直哉との通話も切っていた。

 そこからまた各々が招集に向かうまでの時間を好きなように過ごす。

 そして、ミーティングにいなかった遊菜は9時になる前に戻ってきた。

 どうも、その遊菜は、アップギリギリまで泳いでいたみたい。……ちょっと呆れるよね。


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