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Episode 199 落胆する稲葉沙良

「愛那、沙良ちゃんのフォームはどう?気になるところはある?」


 しばらく様子を眺めていた愛那に聞いていみる。そして、その愛那はまたしばらく様子を見てから沙良ちゃんの泳ぐ姿を見ながら私に言う。


「スタミナ不足がひとつやろうし、本人も気づいてへんかもしれへんけど、腕から指先まで全部やな。インも雑やし、プルもストレートストロークなのはかまへんねんけど、インからすぐやから、インのときのスプラッシュの泡まで掻いてんのよね。プッシュこそ最後まで掻き切れてるけど、泡も一緒。リカバリーも力が入りすぎてる。やから、早く泳ごうとし過ぎて力みまくっているかなって感じ。というか、何もかもに力が入りすぎてる。そんな感じかな。なんなら、ギータも同じ。やけど、ギータに関してはスタミナあるから、そのへんで差が開いてる感じ。直ちゃんらは、早すぎてよーわからん」


 まだお願いして20分も経ってないけど、しっかり見てるところは見てるみたい。やっぱり、愛那もまだまだマネージャーだね。


「了解。これが終わったら、ルースンからのプルでスカーリングのクォーターエイトワンハーフ入れて。で、そのあとワンエイトで直哉と遊菜はワンツー、沙良ちゃんとギータはワンハーフで。ギータと沙良ちゃんの順番は戻して。スカーリングあとのスイムはスカーリングの時のキャッチを意識させてな」


 サーっと流しながら言うけど、愛那はちゃんとメモを取ってくれるから話が早い。


「オッケー。あと、メニューはどこをカットする?」


 あぁ、そうだった。増やすだけだったら時間オーバーするし、徐々に増やすつもりでいるから、一気に増やすのはナンセンスだな。


「ツーエイトスリーハーフだけカットして。たしか、オールハードのあとにそれを入れとったよな?」

「せ~やね。オールハードのあとがそれやけど、若干時間オーバーすんで」

「向こうの子らも時間オーバーしてるからちょうど終わると思う」

「そうなん?了解。ほんなら言われた通りに進めるわ。またなんかあったら言うで?」

「もちろん、言うてくれんと何がどうなってるかわからんし、あと沙良ちゃんのフォームだけ注視してほしいのと、このメニューのラストだけ直哉と遊菜のタイムを採ってほしいわ」

「了解。5本目まで5秒前。……ヨーイゴっ!」


 メニューの合間だったけど、伝えることは伝えられた。たぶん、この先を任せてもいいかな。……あっ、そうだ。このオールハードが終わったら沙良ちゃんと少し話をするんだった。


「ごめん、オールハードが終わったら沙良ちゃんとちょっとだけ時間ちょうだい。他はワンラフ入れてくれていいから」

「了解」


 そこから直哉たちのこなすメニューの様子を見ていた。

 もちろん、力の差があるから、直哉たちと沙良ちゃんとでは差が開くのはもちろんだけど、徐々に差が開きだす。それは、前を泳ぐギータとも。


「こうなるとはわかってたんやな」

「まぁね。口だけ達者なら、実力差を見てもらおうと覆って。思うツボになってんで。まぁ、愛那が言った”力みすぎ”っていうのは見抜けんかったけどな。ただ、なんとなくいまのままやったら早くならんやろうな。っていうのは思ってた」

「ほんま、咲ちゃんって人を見る力があるよな。去年もギータがS1をフリーって言うとったのに、バッタに回したやろ?結果、フリーは速くなるし、バッタ不足も解消してるやろ?まぁ、女子のブレに関しては、まだ決め切らんけどさ」

「ギータのときは気休めやって。フリーばっかりじゃ頭打ちになるしさ。やから、直哉と遊菜にもバッタ指定でメニュー組んでるで。それの応用やし、そんな特別なことしてへんよって」

「でも、そんなことできる咲ちゃんがすごいわ」


 会話をしながらだけど、愛那の視線はバッタの2人に注がれている。それほど2人をじっくり見てくれている。

 そんな中、扇商が持つ中で一番きついメニューを泳ぎ切った4人。まぁ、みんな息切れしているけど、バッタを泳いだギータと沙良ちゃんは完全に気力を出し切った。そんな感じがする。


「なんでこんなに離れんのよ。今までのメニューでうちが間に合わへんことなんかなかったのに」


 その声に少し落胆の色が入っているのを感じた。


「なんでかわかるか?」


 私が口を開こうとすると、先に直哉が口を開いた。


「えっ?あっ、いや……わかんないです」

「はぁ……。そんなことやろうとは思ったわ。大神、ギータ。たぶん、美咲のことや、ルースンで100行ってこいって言うやろうから、先に行ってくれや。美咲、ええやろ?」


 直哉の言うことを全部先取りして言われたような気がする。まぁ、そうするつもりだったから、軽くうなずいて、それを見た2人は軽く泳ぎだした。


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