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Episode 195 よく許してもらえたな

「それにしても、扇商って、プール掃除した後に遊ぶんですね。てっきり、一日中掃除にかかりっきりなのかと思っていました」

「まぁ、なんせ今年はバスケ部のお手伝いがあるからって言うのはあるけど、ほかの部活に比べて人が多いからな。それでも、去年もこれくらいの時間から遊んでたし、掃除するのは結構早いほうやと思うで」

「それは、咲先輩の段取りがいいからですか?」

「まさか~。今日のうちは、朝の準備だけで、ほかはなんもしてへんよ。全部直哉が仕切って、朝のうちに終わらせたんやから。それに、今日はどういう風に動くんか、集合の時に初めて聞いたくらいやし」

「そうなんですね。でも、体験入部してからずっと咲先輩がメニューの指示をしているし、部長なのかなって思っていたくらいなんで、今回もそうなのかなって思いました」


 優奈ちゃんが言うのも無理はないかな。

 直哉は、部長らしいことは一切してこなかったし、なんなら、私に任せっきりなところもあったし。

 それに、冬の間の陸トレは、私がいろいろ指示して、直哉は選手としてこなすだけだったし。

 でも、実際は直哉がこの水泳部の部長。それだけは変わらない。


 ふぅ。とりあえず、お昼ご飯も食べたし、あとは日向ぼっこして終わりかな。


「先に上がってるな。また直哉がゴーサインだしたら呼びに来るから」

「りょーかいでーす」


 さぁ、とりあえず、更衣室に戻って着替えるか。今年は水遊びしないつもりだし。

 それより、今年はいろいろ忙しい年になりそう。

 というのも、マネージャーとして部活の管理もしないといけないし、後輩の2人も育てないといけない。それに、メニューも考えないといけない。やることが去年と比べて格段に多くなっている。

 まだ時間が速いかもしれないけど、私がやらないといけないと思うことを全部洗いだしておきたいって言うのもある。


「なんや美咲。もう戻ってきたんかいな」


 屋上に戻ってくると、部室の横にある教官室の窓から直哉が顔を出して声をかけてきた。

 ……というか、直哉、こんなところでご飯食べていたのか。


「なにしてんの、こんなところで」

「みたらわかるやろ?飯食うてるんやんか。それ以外になにがあるよ?」

「いや、そういうこととちゃうやん。なんでそんなところにおるんかって話やん。べつにこんなところで食わんでもええやん」

「ここがちょうどええねん。きれいな机もあるし、日陰やし、風通しもええし」

「そんなことしとったら、体育の先生に怒られんで」

「もうちゃんと許可はもらっとんで。永ちゃんもやし、橋本先生にも。なんやったら、先代が引退した後に、岡本先生から勝手に使ってええからなって話ももらってるし」


 ほんと、ちゃっかりしてるわ~。まぁ、そうじゃなくても、これくらい勝手にしそうな気がするけど。


「あっ、そうや。美咲もええか?って聞いたら、お前もええらしいで。まぁ、使わんかもしれんけど、ここに部活のノートとか置いて行ってもええんちゃう?ロッカーのとこ、湿気でノートえらいことになったんちゃうん?」


 あぁ、そういえばそうだったな。沙雪先輩も、毎年こうなるんよ。なんて言ってた気がする。

 ここだったら、プール上がりの濡れた生徒が勝手に見ることもないだろうし、ノートの扱いは困らないかな。なんせ、レーンごとに分けてメニューを作っているのもあって、ノートは4冊もあるんだから。


「ご丁寧にどうも。ほんまちゃっかりしてるわ。やけど、ありがたく使わせてもらおうかな。ノートにダメージが入らんねんやったらそれで。で、昼からはどうすんの?遊ばせるんやろ?直哉も入るん?」

「いや、今年はええわ。主役は大神と福森に任せるし。それに、橋本先生も日ごろのストレスを発散させてくれって言うて、混じる気満々でおるしな。そこが一番驚きやし、いろいろ視野の広い先生やから、俺も遊ぼうかなって思ったけど、さすがに大神に攻撃されてケガしたらかなんから、やめとこって思ってるし。あと、長ちゃんは仕事残ってるらしいから、教員と言う監視がおらんようになるし、ちょうどありがたいわ。そういうお前はどうするん?」

「うちも今年はええわ。早いかもしれんけど、いろいろスケジュール組みたいし。それに、もう動き出しとかんと、時間なくて、いろいろ間に合わんくなりそうやし」

「そうか。まぁ、去年もなんだかんだあっという間やったしな」

「とりあえずさ、もう遊ばせちゃってもええんちゃうん?さっき、遊菜と話とったけど、かなりエンジンかかっとったで。いつでも一瞬でフルスロットルになって突っ込むと思う」

「まぁ、あいつのことやからな。何とも言われへんところはあるけど、みんなが楽しいんやったらそれでええんちゃうかなとは思うけどな」


 確かにそれには共感する。先代が引退してからの直哉の動きを見ていればよくわかる。


「まぁ、もうちょっと待ってくれや。男子がまだ飯食うてるはずやし、よーいどんくらいは揃えんと不公平やろ」


 やっぱり、去年までの直哉とは人が違うみたいに違う。


「なんか、直哉らしくないな。なんか変なもんでも拾い食いしたんちゃうん?」

「んなあほな。形だけでも部長やねんから、せめて選手として活動せん時くらい、部長らしくさせてくれや」


 まぁ、それもそうか。


「まっ、部長も練習中は練習に集中できるように周りを見れる優秀なスーパーマネージャーがここにおるもんな」

「それを自分で言うか……。まぁ、俺らも周りも言うてるから間違いないんやけどさ」

「まっ、スーパーマネージャーって言いだしたんは花梨さんやけどな。やけど、うちはなんて言われようとも、正体をばらすわけもないし、天狗になるつもりもないし。なんなら、雲隠れを貫こうとしてるくらいやしね」

「まぁ、それがお前らしいわな。まっ、今年も頼むわ」


 なんだろう。この違和感。たぶん、いつにないくらい優しいって感じているのかも。


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