Episode 194 休憩時間
「よっしゃ!オッケー!もうちょっとだけ続けるけど、いったん休憩にしよか。美咲らはもうちょっとだけ頼んでもかまへんか?」
「べつにかまへんよ」
「ほんなら、3人で床を流してくれへん?それで終わり。そのあと、男子が水きりでいったん空にしてから水溜めて遊ぶ流れで」
「了解。もう終わりなんやね」
「まぁ、いうて、もう昼前やしな。はよ終わりそうやからええやろ?それに、おてんば娘2人の機嫌も損ねんで済むし」
そういって直哉は、愛那と遊菜をちらっと見る。
たしかに、2人の顔は充実した表情をしている。それに、このあとが楽しみにしているような顔も一緒にしている。
「まぁ、あながち間違いやないやろうな。よし、優奈ちゃん、奈々美ちゃん、もうちょい頑張ろうか」
「はい!」
で、こっちの2人はものすごく素直。まぁ、こっちとしても、すごいやりやすいし、ありがたいんだけど、まだ入って2週間くらいしか経っていないから、まだ様子見ってところなんだろうな。って思っている。
そんなことで、3人並んでプールの端から端まで高圧洗浄機で流していく。
だいたい5分くらいかな。淡々と流して、あっという間に直哉からの指示を終わらせる。
「直哉~、終わったで~」
「サンキュー。ほんなら、上がって、昼飯行ってや。男子!中に入って最後の仕事な。デッキブラシか水きりで、中の水全部流していって。それで終わりな」
「エイ!」
「あと、2年男子は先に高圧洗浄機を上げてほしい。ほんで、水を切り切ったら終わりやし」
「あいよ」
直哉の指示を聞いて動き出す男子たち。その姿を横目にして私は直哉に聞く。
「うちらは昼行ってええん?」
「おう。もう終わったからな。なんやったら、さっきの休憩でバスケ部含めて女子には飯行ってもらってるし。ほんでから、予定では1時から遊ばせるつもりでおるから」
「オッケー。ほんなら先に行かせてもらうわ。ってことで、ごはん行こうか」
「はーい」
「あっ、あと、1時から遊ぶのは誰にも言わんといてな。大神も福森も休憩中に暴れだすやろうから」
たしかにそうか。そんなことを思い、「了解」とだけ返し、あと一仕事をしてくれている男子たちを横目に、屋上から階段を降りて、私たちは音楽室に向かう。
あと、直哉の読み通りっていうか、ちょっと水に浸かっただけでも、身体は足元を中心に、少し冷えている。
もう、音楽室に入って、暖かいところでご飯にしようか。
そんなことを思いながら音楽室に入ると、ちょっとムッとした空気が吐き出され、少しだけ不快感を覚える。それでお、すぐに慣れて、出入り口から遠い机を陣取り、来る途中に買ってきたパンを広げる。
「さ~きちゃん、正面ええ?」
「遊菜か。別にかまへんで。なに?もうなんか企んでんの?
「べ、別に。うちは、みんなと仲良くなるために遊びつくすことしか考えてへんで」
ぽろっと答えがこぼれたような気もするけど、遊菜は遊び100でお昼から突っ込むんだろう。
愛那と一緒にテンションマックスで突っ込んだ挙句、ところかまわずちょっかいをかける。そんなところなんだろうな。
まぁ、それで部の雰囲気が盛り上がるなら構わないんだけど。
「とりあえず、暴れてもええけど、怪我だけはせんといてほしいし、させんといてや。シーズン棒に振ることになるんやから」
「さすがにそこまではせぇへんって。うちもそこまでアホとちゃうし」
それはわかっていることだけど、何て言うか、遊菜と愛那はそれぞれハメを外しそうな気がして仕方ない。だけど、まぁ、ただただ楽しそうならそれでいいか。
「とりあえず、もう少しだけ横になって体力回復するわ」
それだけ言うと、遊菜は、ピアノのある方へ移動し、人の少ないところでゴロンと横になった。
「遊菜先輩、ものすごくウキウキですね……」
少し引き気味に来たのは、お弁当を持った優菜ちゃん。この後のことを少しでも心配しているのだろうか?
「こういうときの遊菜は遊ぶことしか考えてへんからな。でも、遊菜の場合は、ただただ遊びに来たってわけやなくて、やることは早く終わらせて、そのあとは、全力で遊ぶって感じやからな。まぁ、去年のことがあるから、気ぃ付けてな」
「去年のことって……何かしたんですか?」
「大したこととちゃうし、ビビらせるわけとちゃうけど、愛那とそろって、先輩後輩関係なく、盛大に暴れるからな。まぁ、去年を知ってるからこそ、言えることやねんけどな」
「まぁ、部活中の遊菜先輩を見ているとなんとなくわかるんですけど……」
「今年は物理的に人が多いから大丈夫やと思うけど、遊菜と愛那に見つからんように遊んどったら大丈夫やと思うで」
「だといいんですけどね……」
まぁ、2人のことだから、大丈夫だと思っている。無茶なことはしないだろうし、家から持ってきた水鉄砲を使って乱射することと、ここに置いてあるビート板を使ってヘッドスライディングをすることくらいだろうし。
ただ、去年以上に暴れられたら、私としても、止められないと思う……。




