表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/228

Episode 18 個人レースの始まり

 最初の種目は女子の2個メから。ここには、扇商から誰も出ないから私は少しばかり休憩タイム。この休憩タイムが終われば、怒涛の扇原ラッシュが続くから、少しでも余裕を持っていないと、息が詰まりそう。

 とはいうものの、たいていは組が割れているから、あわてる必要はないんだけど、朝のうちの1バックだけは最終組で2人かぶっているから、そこだけあわただしくなりそう。

 まぁ、そんなことは置いといて、ちょっとだけゆっくりしようっと。


 10分弱の休憩が終わると、いよいよ男子の2個メ。ここにはさっき登場した鮎川さんが20分のインターバルを開けて登場する。

 そんな鮎川さん。ここから招集場所が見えるんだけど、そこまで緊張はしていないみたいで、バッタに出る成東さんと笑顔で話している様子も見える。まぁ、大丈夫だろうな。と思いながら、レースに目を戻すと、すでにバックを泳ぎ終わってブレを泳ぎ始めている選手もいた。

 そろそろだな。と思い、私も観客気分からマネージャー気分に切り替える。

 ということで、手元のスプリットブックもあとはタイムを書き込むだけやし、ストップウォッチもオールゼロになっている。あとはレースを待つだけだな。と思いながら、ラストのフリーを見ていた。

 最後のフリーはみんな、最後の力を振り絞るかのように全力を出しているように見えた。まぁ、ここでセーブする理由なんて皆無だもんね。

 誰がどこを泳いでいるのかはわからないけど、やっぱり、個メって、個人差が1番出るよね。

 バッタには強いけど、ブレに弱い。バックには強いけど、バッタには弱い。みたいなね。

正直、人それぞれだから何とも言えないのよね。

 そして、鮎川さん。たぶん、最初のバッタは全力だろうな。そのあとのバックで粘り、ブレで流した後、フリーで勝負。ってところかな。なんとなくそんな気がしている。


『同じく2組の競技を行います』


 その声で、パンパンと体をたたく音が響く。もちろん、攣らないようにするためだ。人によっては、心拍数を上げるためだとか、緊張を解くためだとか、神頼みだとかいう人もいるけど、私は、心拍数を上げるためというのと、攣らないようにという両方だと思っている。

 私は、基本的に、胸の上あたり腕と脚とを中心にやっていたかな。

 稀にこぶしで胸を強くたたく人がいるけど、あれは、怖くてできないよね。

 そんな派手な音が鳴り響く中、出発合図員の鋭い笛の音が鳴り響く。

 すると、選手たちは、体を叩きながらも、スタート台に乗りだす。そして、次第に体を叩く音は小さくなり、審判長の「テイクユアーマークス」が聞こえると、完全に静寂になる。

 そのすぐあと、出発合図員が号砲をならし、一斉スタート。

 やっぱり、滑ることを警戒したのか、スタートはかなり慎重だった。

 だけど、泳ぎに関しては、持ち味の力強さをしっかり見せつけている。ただ、バッタで飛ばす選手ばかりで、鮎川さんが前に出て、レースを引っ張るということはなかった。

 だけど、鮎川さんは遅れることなく、ついていっているのは大きい。バッタで遅れ出したら、もう、どうにもならないだろう。

 とりあえず、バッタは飛ばせるだけ飛ばしたみたいで、5着33秒でバックに移った。

 バッタを全力で泳いだあとのバックのバサロは、まぁキツい。すぐに息をしたくなるから、浮き上がりも早い。

 私は、バッタを流して、バックで巻き返して、ブレで少し休憩して、最後のフリーで逆転を仕掛けるタイプだったから、あまり経験はないけど、中学のとき、オールダッシュメニューで最後の方、キツくてバサロが打てずに、すぐ浮上する。っていうのが何度かあった。懐かしい記憶だ。

 話を戻して……。鮎川さんは、早々に浮き上がって来たあとは、なんとか粘りながらレースを進める。

 そしてひとつ気づいた。前に指摘したところが直ってる。

 前に指摘したのは、バッタの勢いをそのままにしようと、勢いで腕を回すところ。

 どこからどこを切り取っても、力が入りまくりで、入水のときも水面を叩きつけるように入水していた。

 そこで少しタメができるなら、それでもいいかなと思ったけど、そんなことはなく、入水後、タメもなく、次の動作に入っていたから、入水後のタメを作るようにと言って、しばらくの間、S1がバックの部長と練習してもらっていた。

 その成果がしっかりと出ているのかな。と一安心。

それも相まってか、最初の100メートルを1分16秒で折り返した。そして、苦手なブレはさすがに47秒以内でクリアしたい。それなら、フリーに最後の望みをかけられる。

 ただ、苦手なものは苦手で仕方がない。それでも、バックも克服したんだから、なんとか頑張ってほしい。

 ただ、やっぱり、息が相当上がっているせいか、一掻き一蹴りのタイミングが早い。もう少し搔いた推進力を活かしてほしいなと思ったけど、まぁ、仕方ない。

 ストロークピッチは今までに比べてかなりゆっくり。大きく泳いでいるようなイメージ。

 ここまで大きいのは、たぶん、ブレスを確保したいからだろう。それは私も一緒だったしな。そこは仕方ないかな。

 その大きなストロークのブレを泳ぎ切ったタイミングでのタイミングは2分08秒。リミットは2分40秒ジャストだから、猶予は32秒弱。飛ばしきる気力が残っていて、腕と足に乳酸が溜まっていなかったらいいんだけど……。

 ちょっと祈るような気持ちでラスト50メートルを観戦。

 ラストということもわかっているはず。それは、力強いキックが物語っている。

 ラストは、なんとかというような感じで、フィニッシュ。

 手元のストップウォッチでは、トータル2分40秒55と、ほんのわずかにタイムオーバー。ただ、私の手元のストップウォッチは、公式なものではないから、何とも言えない。

とりあえず、沙雪先輩に速報タイムを送って、公式記録はあとで確認してもらうように伝えようっと。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ