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Episode 187 アップして、本番のレースを観戦します。

 そんなことを思っていると、直哉が首をひねりながら、プールサイドに上がってくる。


「うーん。たぶん、ハーフレースやったらええんやろうけど、1フリのレースでのこれはさすがに致命傷やな」

「自分でもさすがにわかってるか」

「さすがにな。ただ、あれやな。ずっとパワー上げたままでは泳がれへんことはわかったから、1本目と同じパワーで行くのが一番かもな」


 自分でもわかっているようならそれでもいいか。


「とりあえず、もっぽん飛んで、力の入れ具合、もう一度確認しとくか?」

「せやな。たぶん、感覚狂ったまま行くのも怖いからな」

「了解。とりあえず、もっかい動画回すで」

「あぁ、頼むわ。もうちょっとだけ確認したいからな」


 またそう言いながら、スマホで動画を確認しながら50メートルを歩く。


「あぁ、ここか。ドルフィンもっかいできるか?それもちょっと試してみるか」


 直哉は何を思ったのかわからないけど、独り言のようにつぶやき、確認していた。


 そこから、もう一本飛んだ直哉は、かなり満足したのか、何度かうなずきながらプールサイドに上がってくる。


「今の感覚崩したくないから、これで終わるわ。ダウンして本番向かうわ」

「了解。ほんなら、長浦先生見つけて、一緒におるわ」


 それだけ言うと、直哉も「了解」とだけ返し、さっきまで軽く泳いでいたコースに身体を浸け、ゆっくりと泳ぎだしている。

 これを見て、私もホッと一息つき、少しだけプールサイドから下がり、壁際で少しだけゆっくりする。

 アップ中、あまり気にしていなかったけど、私がスーパーマネージャーだっていうことに気づいていないみたい。もしかしたら、周りが気にしていないだけかもしれないけど……。

 それでも、私としては、声を掛けられずにアップを進められるって言うだけでストレスがなくて嬉しいくらい。

 あと、昨夏に仲良くしてくれた宮武さんにも声を掛けられるかなって思ったけど、そもそも、このメインプールでは泳いでいないみたいで、私に声を掛けられることはなかった。

 正直、ふぅっとひと息ついたころにようやく気付いたけど、これだけなにも関与されないってだけでまったく気疲れがない。

 あとは、直哉がレースで泳ぐのを待つだけだな。なんて思いつつも、気を抜かず、最後のダウンまで見守り、プールサイドに上がったところで、更衣室の入り口まで一緒に歩く。


「どうなん?気が楽になったんちゃう?」

「ほんまにな。でも、いろいろ試せたからオールオッケーやろ。本番、どれだけ行くかってところやろ。決勝の来れたら御の字やろうけど、まぁ、やるだけのことはやるわ」


 そう言いながら、直哉は男子更衣室に入っていった。

 そして、私は、関係者客席にいるはずの長浦先生を探す。


 長浦先生は、関係者客席の最上段にいて、私の席もとっていてくれたみたいで、ひとつ詰め寄ってくれ、私はそこに座る。


「お疲れ。どうや、原田の様子は」

「正直、タイムがどこまで伸びるかわからないですけど、楽しんでくるんじゃないですかね」

「それやったらええねんけどな。まぁ、あいつのことやから、あんまり心配はしてへんけど」


 それはそうなんだよな。

 その直哉。エントリーはインターハイの時のタイムで行くしかなく、さすがにそんなタイムを持っていたら、エントリータイムの遅い順で行われるこの大会のレース。4組3レーンで入っている。

 そこにはさすがにビックリしたけど、インターハイ覇者でもこのレベルなのか。と思ったのは事実。とはいいつつも、さすがにトップレベルではないから仕方ないかもしれないけど。

 まぁ、私からすると、インターハイのときと同じように下剋上を起こしてくれたら面白いかなって思っているくらいだしね。

 今の期待度は正直それくらい。本人が楽しんで帰ってきたらそれでいいって思っているくらいで、決勝進出はあまり期待していない。

 それは長浦先生も同じで、直哉が決勝に行くこと自体、あまり期待していないように見える。むしろ、直哉が決勝に出たら、水泳部を始め、扇商全体が大ビビりするだろうから、どうだろうって言うところではあるだろうね。


『お待たせいたしました。ただいまより、第91回日本選手権水泳競技大会、5日目の予選競技を行います。競技役員が入場します。拍手でお迎えください』


 先にこんなのがあるんだ。なんて思ったのは秘密の話。でも、大事なことなんだろうな。って思ったところもある。

 そこからは少し場内アナウンスを聞き流し、競技が始まるまで、プログラムを眺め、どんなトップ選手がどのレースに出たのかを見ている。

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