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Episode 184 挑戦的な日本選手権

 朝を迎えると、久々にケータイの目覚ましで目が覚める私。

 朝からやることはあまりないんだけど、わざわざ家からノートを持ってきていて、そこにしれっと直哉のタイムを追加しておこうと思っているくらい。

 スプリットブックはさすがに邪魔になるだろうし、後々、どこかの大会で変に部員に勘付かれるだろうから持ってきていない。

 それに、直哉は、この冬でどれだけ落ちるかみたいだけって言っているから、そこまでタイムも気にしないだろうと思っている。

 とは言いつつも、直哉がどれくらいのタイムで泳いでくるかがあまり検討がつかないぶん、少し怖いなって思ってしまっているところがあるのも事実。

 まぁ、私が気張ることじゃない。私は見守るだけだから。


 そんなことを思いながら、ロビーに向かうと、すでに直哉がスタンバイしていた。


「うぃっす。よう寝れたみたいやな」

「あんたもな。練習はよう詰まれへんかったけど、体調は良さやそうやな」

「ビックリするくらいにな。でも、それがええ感じやねんから、調子はええんやろうな」


 前日に泳げなかったことが少し悔やまれるか。そんな事を思いつつも、あとからこのロビーで合流する長浦先生を待ってから、会場となる東京辰巳国際水泳場に向かう。

 まさか、こんなに早くこの場所に来ることになるとは思ってもいなかったから、ビックリしているところではあるけど、なんというか、感無量。

 これも、直哉のおかげなんだろうな。なんて思ってしまうよね。

 そんなことを思いながら、電車に揺られ、15分くらいかな。最寄駅に着いて、そこからさらに15分歩く。その間も、直哉は少し緊張した面持ちを見せているのか、ほとんど無言。

 こちらとしては、緊張するのも無理ないだろうな。なんて思っている。

 さすがに、インターハイのときは、運が良かったとはいえ、2種目で優勝している。その色眼鏡が変に付きまとうことになるんじゃないかなと、勝手に思っている節はあるし、スターと呼ばれる選手もいれば、それなりのパワーを持っている選手だっているはずだ。

 その雰囲気に飲み込まれずにレースができるかどうか。そこは正直、直哉にしかわからないところだろうけど、私としては信じたいよね。


「原田〜、お前、ガッチガチに緊張してんな。珍しいやんけ。普段はそんな様子見せへんのに。インターハイのときも、集中はしたたけど、緊張はせんかったやろ?」

「いや、その時とは、感情がちゃいますって。さすがに俺もそこまでアホやないっすよ。逆に、年代も広いし、自分の力落ちてるってわかってたら、集中出来んかもしんないっすね」

「そこはもうお前次第やからな。まぁ、自分で、自分の力がどんなもんか確かめるだけって言うてるんやから、なんも気負うことはないやろ」


 長浦先生はいつになく、直哉のメンタルケアに走っているような気もする。

 もしかすると、長浦先生のほうが緊張しているのかもしれない。まぁ、こんな機会は滅多にないだろうし、これからもないだろうから、どうしたらいいとか周りへの対応とか、いろいろ考えることがあるのだろう。

 正直、今回に関しては、所属クラブがない直哉が特異なだけだし。それに、今回はお試しで出場したいだけ。って言っただけだしね。

 たぶん、これより先、扇商から日本選手権に出たいっていう選手はいないだろう。私からすると、いてたまるかってところだけど。

 たぶん、大抵の選手は強豪校の名前で来るか、所属しているスイミングクラブの名義で来るだろう。ただ、直哉はそれが一切ない。所属していないって言うだけでそこにも驚かれるだろう。

 まぁ、これも直哉自信が望んだことなんだけどね。(……よくよく考えたら、学校の部活の練習だけでインターハイを制する直哉って化け物か?)

 そんなことを思いつつ、夢にまで見た東京辰巳国際水泳場に到着。

 普段から、ずっと手の届かないところなんだろうな。なんて思っていたのに、あっさりと目の前にあって、ものすごく不思議な感じ。

 さすがに私たちは、一般入り口からではなく、選手関係者と書かれた入り口から入る。

 思わず一般入り口から入りそうになったのは秘密の話ね。

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