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Episode 181 Naoya side おてんば娘の残したジンクス

 ほんまに、あのおてんば娘には、舌巻くわ。あんなにテンション高めでレースに向かって、さくっと優勝を決めてるんやから。

 ほんま、あいつにはかなわんわな。なんて思いつつ、決勝入場の時の曲が流れてくる。

 これは俺にとっても、テンションを上げにかかってくる。

 正直なことを言うと、あいつのレースを見てから、負けられへんよな。なんて変な敵対心とまでは行かんくても、ライバル視している気が出てきてるのも事実。

 それでも、インターハイから、決勝競技のときは、あいつのあと、同じコースを泳いでいて、そのたびに、力を残してくれてる。そんな気がして、俺も優勝が続いてる。そんな気がしている。

 正直、ジンクスって言うたらええんか?ようわからんけど、ずっと流れが来てる気がしてるんよな。

 今回ももしかしたら、あいつのジンクスで優勝できたりしてな。なんて変なことを考えつつ、場内に入場。

 俺が泳ぐのはあいつが泳いだ同じコース。センターレーンの5レーン。

 そこまで来ると、あいつの歩幅にあったスタート台の羽根を、俺の歩幅に変えて固定する。そのあとに、自分の衣服を脱ぎ、レーシングウェアすがたになり、近くにある椅子にドカッと座る。

 ここからは、もう俺のルーティンが続く。

 とは言いつつも、短い笛が4回と長い笛が1回鳴るまで何もせず、長い笛がするどく鳴ってから動き出し、さっとスタート台に乗る。

 右足は前の縁に、左足を後ろの羽根に。右手は秘儀脚の外側の縁を掴み、左手は、左の太ももの上に。

 なんていうか、これがいつもの流れやから、正直、俺も、違和感はない。

 インターハイで優勝した後も、美咲を含め、いろんな人に相撲の立ち合いと言われるこの形は一切変わらず、俺の中のルーティンは崩れんまま、今日にいたる。たぶん、これに関しては、ずっと変わらんと思う。

 それが俺の中での落ち着き方やからな。

 ほんで、出発合図員の「よーい」と言う声で、左手を前の縁を掴む。

 そのあとは、スタートの合図に集中。

 ピッ。と高い音が聞こえると同時に、自分が持てる瞬発力のすべてを使って、思い切り飛び出す。

 さすがに、今でも大神のスタートするリアクションタイムには叶わんけど、それでも、自分の中では、いいタイミングちゃうかってくらいええスタートを切る。

 そして、いつもと同じようにスタートした後は、入水を少し浅めに、入水した後は姿勢を整えてから水中でドルフィンキックを打って行く。

 いつもの流れからは何も変わらへん。

 15メートルラインを目指して力強く打って行って、自然な浮き上がりを促して、「このタイミング!」ってところで、右腕で1掻き目を力強く思い切りキャッチからプルまで持って行く。

 ……よっしゃ。完璧。軽さが何ひとつない。このままリカバリーはどうやろう。とか思いながら、左腕を力強くキャッチからプルに行く間に、右腕のリカバリー。

 ……重さなし。ってことは、完璧なタイミングで浮き上がれたな。そんなことを思いながら、力強くバタ足でキックを打ち、力強く腕を回していく。もちろん、意識するのは、自分のフォーム。

 さすがに、これをしても、頭ひとつから身体半分くらいの差しかないやろうけど、ほんの少しでも前にでれてるんやったらそれでオッケー。そのまま最後まで全力を尽くすつもりでおる。

 そうやないと、男やないやろ。そんなことを思いながら、あっという間のファーストハーフのターンをしていく。

 感覚では22秒台。あわよくば21秒台。そんな感じで回っていって、ラストハーフに向かう。

 正直、ラストハーフに関しては、タイムを結構落とすことがあるから、感覚的には、ビルドアップの感覚を取りつつも、最初から全力で突っ込んでいることもあって、なかなかうまくいかないこともわかっている。

 とは言いつつも、ここで抜くことはありえへん。ミドルとかロングならあり得るやろうけど。

 そんなことを思いつつ、周りを気にせんようにして、全力で腕を回し、足を動かし続ける。


 ……あっという間に、ラスト5メートルまで来たようで、そのラインが見えた。

 それを見た瞬間に、ブレスをひとつ挟んで、残りはノンブレスで突っ込むことを意識。

 ファーストハーフのターンからドルフィンで浮き上がってくるとき、いつもと変わらない回数で上がってきた。たぶん、タッチまで合うはず。

 ただ、合わへんとしても、ラストのタッチを無理に合わせるだけやから、気にすることはない。

 ということで、タッチ板に勢いよく手のひらをぶつける。これで、自分の時計を止めることになって、これで、自分のタイムが止まる。

 ふぅ。ブレスの回数は、相変わらず少なくしてるけど、結局は、肩で息をすることになる。

 さすがに、インターハイのときは、ブレスひとつでレースが変わりそうな気がしたから、極力減らして、ほぼノンブレスで言ったけど、今回は、予選で余裕があったことで、ほんのわずかにブレスの回数は増やした。感覚的には53秒台かな。とは言いつつも、結局は、振り返るわけやけどな。


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