Episode 177 眠気と戦いながらレースを見守る
レースが終わりすっかりとオフモードになった鈴坂さんと伊丹くんを横にして、男子の2個メと女子の半バタが進む。
たまにフライングや個人メドレーのバックからブレに移行する時の泳法違反が出たりもしたけど、なんとか順調に進んでいるかなって言う印象。
そして、レースは気づけば男子の半バタに入ろうとしている。
ここでようやくギータが出てくるわけだけど、12組あるうちの7組で登場。思ったより早いタイミングだったな。なんて思っている私がいる。
ギータのエントリータイムは32秒台で登録しているけど、それよりは1秒ほど早く泳ぐんじゃないかなって思っている。
とは言いつつも、長水路に慣れていない分、どうなるだろうなってところある。それで調子に乗って最初から飛ばしすぎると、疲れに繋がってしまうところもあるしな。
特にバッタの場合だと……。
そんなことを思っていると、徐々にギータのレースが近づいてくる。
さすがに、早い1組のレースは26秒台から27秒台であっという間に終わるけど、そこからじわりじわりと目に見えてタイムが落ちてきて、ギータが泳ぐひとつ前の組は、31秒台から33秒台でフィニッシュしている。ギータもこの間に食い込めるかな。なんて思いつつ、短い笛を聞いている。
たった50メートルだとしても、このシーズンで頑張った姿を見せて欲しいかな。なんて思いながら、長い笛が鳴り、スタート台に乗る10人の選手を見ていた。
ここから見るギータの様子は少し緊張しているようにも見える。
というのも、普段見せない動きを見せているって言うのもあるかもしれない。
でも、それも経験かな。なんて選手の気持ちを忘れかけている元選手のマネージャーが言うのは筋違いかもしれないけどね。
出発合図員の「よーい」という声でほんの少しだけ身体を後ろに引くギータ。
昔は限界まで身体を後ろに引っ張っていたけど、直哉が「そこまでせんでも、飛距離変わらんのとちゃう?」と助言したのが最初だったかな。
実際に、私も目の前で見ていたけど、対して変わらなかったし、リアクションタイムも、その分遅く見えた。
その様子も動画に撮って本人が見たあとに変わった記憶がある。
そして、スタートの合図が鳴り、選手10人は一気に飛び出していく。
さすがに、私のドルフィンキックの技術を教えると、変に力むだろうし、疲れるだろうと思い、教えることはしなかった。
だからというわけじゃないけど、ギータは打つだけのドルフィンキックを打って、浮き上がってくると同時に、リズムよく跳ねるように泳いでいく。
さすがに、女子みたいに組が進んで行く事に大人しいフォームになるということは無いから、豪快さは正直変わらないと思っている。さすがに、スタミナ差でバテて、フォームが大人しくなるというのはあるだろうけど。
ただ、たったの50メートルだ。トップスピードから少し落ちるとしても、フォームに影響するほどバテないと思う。
とは言いつつも、豪快に飛ばす様子を見せるギータを見守り続ける。
ワンウェイのレースは組後半になってもあっという間っていう感覚は当然で、最後まで快調に飛ばすギータはさすがに、トップ争いにはくい込むことが出来ていないけど、ハーフラインを超えた辺りでは13秒台と、なかなかいい飛び込みを見せ、ラストクォーターも力強く泳いでいく。
ただ、あれだな。ここから見る限りでも、リズムは一定に保っているかな。それだけでも絶対に違うしね。
そんなギータは、リズムを一定にしたままラストまで突っ込み、31秒44でフィニッシュ。
こっちはどうだろう。長水路ではベストのような気もするけど、短水路も含めたらさすがに少し落ちてるか?
まぁ、短水路なら、ターンの勢いもあるわけだし、そのあとのドルフィンキックの加速もあるから、同じようには比べにくいけど……。
……なるほどね。やっぱり、短水路の方が少し速いか。まぁ、それは仕方ないことだとして、さすがに、長水路ではベストタイムが出ている。そこはもちろん収穫になる。
来年、さらなる成長に期待かな。そんなことを思いながら、今度は、女子の半ブレに出場する杏里ちゃんを待つことになる。




