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Episode 174 愛那の公式初レース

 そこから15分くらいして、ようやく男子の1フリ予選が終わった。

 やっぱり、28組は多すぎるって。そんなことを思いながら、どの種目でも同じように、予選上20人のランキングが上から表示される。

 ここに直哉の名前が一番上にあることを確認してから、ようやく一息つくかな。

 とは言いつつも、このまま決勝も泳ぐことになるだろうから、こっちには戻ってこないかな。そんなことを思ってしまったよね。

 まぁ、3時間もしないうちに決勝を泳ぐことになるんだろうから、かなりルーティンが固まっている2人が戻ってくることはないと思っている。

 とは言いつつも、お昼ご飯くらいは食べに戻ってくるかな。そうじゃないと、腹を空かせて、しっかりとしたパフォーマンスができないだろう。


 そんなことを思っているうちに、女子の2個メが始まっていて、1組がラストのフリースタイルに入っていた。

 さすがに、早い1組だから差は小さい。ここはさすがに、すっと終わるか。なんて思っている。

 だけど、最終組にいる愛那がどれくらいのタイムで泳ぐのかはわかっている。ただ、その周りがどれくらいのタイムで泳ぐのかがわからないから、愛那の実力がわからない。

 まぁ、5組5レーン。

 センターレーンで泳ぐことになるようだから、エントリータイムは8人いる選手の中で一番速いみたい。


 そんな愛那のレースが刻一刻と近づいてきていて、私としては、愛那の初レースがどんなものになるのか、不安を感じている。

 だけど、階段を降りて行った愛那の顔は、にっこにこしていた。

 初めてのレースで楽しみにしているんだな。なんて思っているけど、たぶん、スタート台の前に来ると、緊張するだろう。いかんせん、1年ぶりのレースだ。

 ずっと選手として泳いでいる杏里ちゃんでさえも、毎レース緊張しているというから、愛那に関しては、もっと緊張するだろう。なんて思っている。


「うぃー、お疲れさん」


 そんなことを言いながら戻ってきたのは遊菜だった。


「戻ってきたんやな。とりあえず、そろそろ愛那のレースやで」

「そうなんやね。ちょうどええタイミングで戻ってきたんやね。ご飯食べてすぐに戻ろうかな。って思ってたんやけど」

「直哉とは一緒とちゃうんやね」

「直ちゃんがおらんかってんやん。どこ泳いでんのかわからんくて、ダイビングプールで軽く泳いできたんよ。まぁ、普通に泳がれへんのはわかってたけど、思ってた以上に泳がれへんかってさ、もしかしたら、決勝、タイム落とすかもしれんわ。そんなことはしたくないんやけど」

「まぁ、それに関しては、実際に泳いでみてって感じやろ?それに、決勝に入るから、ダイビングプールは多少人が少なくなるやろ」

「そうなれば御の字やねんけどな。ただ、直前が半バタやろ?男子も今プログラム見たら10組くらいあるから、それくらい人がおるんやな。って思ってんのよね」


 ちょっと遊菜の顔がショボーンとしているのを見てちょっとかわいいな。なんて思っているけど、さすがに、そんな姿を見て、可哀そうかなって思ってしまったのも事実。

 でも、チラッとダイビングプールを見ていると、かなり混雑している様子がうかがえる。こんな中で泳ぐのもなぁ。遊菜は泳ぎにくいだろうな。って思ってしまう。


「まっ、とりあえず、愛那っちのレースを観戦しますか」


 そう言いながら、少し前かがみになりながら、お弁当を広げてゆっくりと食べている。

 とは言いつつも、愛那のレースまでもう少し時間があるから、パクパクと食べ進め、愛那が出る前のレースがフリースタイルまで進んでいて、あと1分もすれば、愛那のレースが始まる。


「よっしゃ~!行け~!愛那~!突っ込んだれ~!」


 まだ前の組のレースが終わった直後なのに、一度お弁当を片付けて大きな声で声を張り上げる遊菜。たぶん、今まで私がやっていたことが聞こえていたんだろうな。なんて思いつつ、私も遊菜と一緒に愛那に声援を送る。

 さすがに最終組で、声援の声がほとんどないこともあったのか、遊菜の声も、私の声もはっきりと場内に響く。

 さすがに、インターハイでも近畿大会でも、府大会でも、遊菜に声をかけたときはなかった感覚に、ちょっとスカッとしてしまった。


『続いて最終組、5組の競技を行います。なお、第3コースは棄権いたします。以上』


 そのアナウンスのすぐあと、適当とは言わないけど、少し気の抜けた笛の音が鳴り、愛那を含む7人の選手がスタート台に登ろうとする。そして、長い笛がしっかりと1回鳴り、スタート台に登る。

 さすがに、4種目泳げる選手がレースに出るわけで、スタートの姿勢はそれぞれなものの、経験者だな。という動きを見せている。

 愛那自身、久々のレースで少しぎこちない動きを見せているけど、自分のルーティンを思い出しているのか、ひとつずつ、丁寧に動いていた。


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