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Episode 170 マネージャーが少ないデメリット

 そこからすぐに男子のレースが始まる。とは言いつつも、また20分くらい暇な時間ができる。

 次に出てくるのは伊丹くんで、13組あるうちの10組で登場。

 まぁ、そんなものか。なんて思いつつ、私は何もやることがなく、ただただ、ぼーっと待っているだけ。

 その間に女子では半ブレに出る杏里ちゃんと半バタに出る愛那が、男子では、半バタに出るギータがいったん戻って来ていた。

 3人とも、レースは昼をまたいで泳ぐことになるから、先にお昼ご飯を食べに来たよう。

 まぁ、それもそうか。なんて思ったりしたし、たぶん、私でもそうしている。

 と言うか、今日の私、お昼ご飯をどのタイミングで食べようか。なんて思い始めている。よくよく考えれば、中途半端なタイミングしかなくて、選手全員のレースを見ようとしたら、買いに行って、食べる間もなくすぐにレース。とかになりそう。

 今までは、マネージャーが何人かいたから、順繰りで休憩を回していたからご飯を食べる時間も確保できていたけど、今回はひとりでマネージャー業務をしている。さすがにどうしようか迷う。

 あれだったら、予選と決勝の間に少しだけでもインターバルはあるだろうから、そのすきに買ってきて食べようかな。なんて思っている。


「咲ちゃん、ちょっとお昼ご飯買ってくるわ。なんかいる?あれやったら、一緒に買うてくるで」


 それは、本当にありがたい。それだけ思っていい感じのお弁当をひとつリクエストして、財布から500円玉を渡す。


「了解。食べたいものあるん?」

「幕の内があればそれがええんやけど、なかったらなんでもええわ」

「オーライ、ほんなら行ってくるわ」


 それだけ言うと、愛那は階段を軽やかな足取りで降りていった。

 正直、その姿を見ているだけで、元気だなぁ。なんて思ってしまう。

 言って、年齢は一緒のはずなんだけど……。


 時間をもてあましている杏里ちゃんとギータはすでにそれぞれお昼ご飯を食べている。とは言いつつも、ギータはお昼ご飯としてカウントしていいのか?


「ギータ、それ、お昼?」

「レース前のな。レース終わったらもうちょっと食べるつもり。原田からアドバイスもらって、軽く入れるのはええけど、入れすぎたら、死ぬで。って言われてな。あと、レース終わりに食ったらええねんって言われたから、それちょっとやってみよって思って」


 なるほどね。確かに、近畿大会やインターハイでレースがお昼を少しすぎてからって言うのが何度かあったから、そのときの経験を伝えたか。

 まぁ、それも悪くない判断か。それに、自分が経験したことをしっかりと伝えられているし、いいか。それくらいは。

 それに、たぶん、インターハイを経験した直哉だからっていう色メガネが着いているのかもしれないけど。

 そんなことを思いながら、伊丹くんのレースを待っていた。


 たぶん、愛那がお昼ご飯を買いに行ってくれて10分もしなかったと思う。

 やっと1バックを泳ぐ伊丹くんのレースの番がやってきた。

 やっとか。という感情の方が強くて、いろいろとマネージャーとしての仕事を忘れそうになった。

 だけど、笛が鳴った瞬間に、いろいろとスイッチが切り替わって、ダラダラとしていた頭が一気に覚醒した。

 これでやっとマネージャーの仕事できるな。なんて思っているけど、いろいろと待ち時間が長くて、覚醒したものの、どこかから回っている感覚に陥った。

 だけど、やることはやらないといけないし、それが私の仕事だし、と思って、スタートしたレースのリアクションタイムを先にプログラムに書き込む。

 コンマ69か。まあまあってところだな。あとはもうファーストハーフとラストハーフを採るだけだから、あまり気負うこともない。

 まぁ、これが終われば、すぐに遊菜の1フリが待っている。退屈になることはほとんど無いだろうな。

 なんて思いながら、伊丹くんのレースは折り返しを迎える。


「そーれい!」


 伊丹くんがターンするのと同時にギータが声を張り上げる。

 さすがに、場内に響くことは無いけど、それでも気持ちが入っているのはわかる。


「あっ、わりぃ。原田がリレーのとき、こうしてたなって思ってさ」

「気にせんでええよ。うちもやることあるし。とりあえず、ファーストハーフはっと……」


 ファーストハーフは40秒10か。意外と速くなったな。ここまで伸びるとは正直思っていなかったから、あとで褒めてもいいかもね。なんて思いながら、ラストハーフを泳ぐ伊丹くんを見ていた。


 結局、伊丹くんは1バックを1分25秒44でフィニッシュ。ヒートトップにはちょっと届かなかったけど、まぁまぁいいタイムが出ている。たぶん、これ、ベストなはず。

 そんなことを思いながら、ペラペラとノートをめくり、自己ベストを更新していることを確認してプログラムに赤マルをつけ、自己ベストだという意味合いで印をつける。

 とりあえず、扇商最初のパーソナルベストということもあり、幸先はよりいいかな。なんて思ったり。

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