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Episod 169 個人レースのスタート

 だけど、扇商の選手が出てくるまでに頭を切り替えきることができるだろうな。なんて思いながら、個人レースが進んでいくのを見守る。


 さすがに、女子の人数が少ないこともあるのか、個人最初の種目でもある女子の1バックは、メドレーリレーより少ない6組が最終組。

 香奈ちゃんはその最終組で出場予定。

 あまりにも棄権者がでなかったら、6組の9コースで泳ぐことにある。

 正直、最終組に近い組で出てくる選手に対しては、制限タイムを少し気にしないといけない。

 というのも、あまりにも制限タイムをオーバーする選手が多すぎると、学校単位で警告だったり、出場停止処分が検討されるらしく、場合によっては、あまりにも制限タイムがギリギリの選手については、事前に棄権を考えないといけなくなるらしい。

 これに関しては、長浦先生から話を聞いていて、私もそれを頭に入れている。

 だからというわけじゃないけど、先に制限タイム一覧が乗っているプログラムのページに付箋をつけていて、いつでも確認できるようにしている。

 正直なことを言うと、全員ひとり2種目のエントリーをしていて、全員、ひとり2種目は泳ぎ切ってほしいな。っていう考えが私にある。


『続いて、最終組、6組の競技を行います』


 そんなアナウンスが流れた後、香奈ちゃんはその場で軽く飛んで、緊張を飛ばそうとしている姿が見えた。

 そして、笛が鳴り、鋭い笛の音に身体をびくんと跳ねさせた香奈ちゃんは、まったく緊張が飛んでいないように見えた。

 でも、たぶん、遊菜が教えたんだろうな。軽く身体を動かしてたら、少し緊張が飛ぶで。とか何とか言って。

 まぁ、それ自体がおかしいとは思わないし、遊菜もルーティンのようになっている動きがある。それで緊張を取っているんだろうな。なんて思ったことも何度だってあるし、それをインターハイの覇者が助言するなら、みんな真似するだろう。

 そんなことを思いながら、長い笛が鳴り、最終組に出る選手10人が静かに入水。

 どこか遠慮気味に入り、そそくさと、スタートの態勢をとる。

 その中には、すでに、スタート台に身体を引き付けて、いつでも飛び出せるような体制をとっている選手もいる。

 香奈ちゃんに関しては、緊張している中で、まだなんとかリラックスしようとしているのか、スタートバーに捕まりながらも、まだ腕が伸び切っている状態。

 ここからスタートの直前に身体を引き寄せてスタートすることだろう。

 そんなことを思いながら、長い笛がもう一度鳴り、その少し後に「よーい」と聞こえた。 

 その瞬間に香奈ちゃんは体をグッと引き寄せ、少しだけ体を水面から持ち上げる。

 スタートの姿勢はみんなそれぞれで、全身を水から引き上げる選手もいれば、ある程度だけ水から引き上げる選手もいる。

 これはスタートのときに水の抵抗を少しでも減らそうとする努力よね。

 そして、少しだけ間があったあとに、スタートの合図が鳴る。

 さすがに、最終組になると、派手にスタートを決める女子の選手も応援の声もいないようで、静かにレースがスタートしていく。

 かなり寂しいところはあるものの、これに関しては、弱小校がそろうから仕方ないか。なんて思ってしまう。

 静かにスタートしたレース。

 浮き上がり場面ではほぼ横一線。ただ、ここからしっかりと泳ぎに差が出るわけで、3コースを泳ぐ選手と7コースを泳ぐ選手が少しづつ前に出ていくような印象を受ける。

 香奈ちゃんは言い方が悪いかもしれないけど、最下位争いをしているかな。ってところ。

でも、ダントツの最下位じゃないだけマシか。3人くらい一緒になって泳いでいるように見えるし。

 この中からなんとか抜け出して、最下位だけは避けて欲しいかなって思ったりもするけど、どうだろう。

 これだけ最下位争いをしていると、ほんと、制限タイムのことが頭を過ぎる。

 さすがに自己ベストから見たらオーバーすることは無いと思うけど、久しぶりの長水路で感覚が狂って、前半に飛ばしすぎて、後半にバテる。みたいなことが有り得る。それを危惧している。

 ただ、あれかな。1時間くらい前にリレーで半バック泳いでいるから、ある程度感覚は掴めているかな。なんて思ったり。


 そんな香奈ちゃん。3人で最下位争いをしながら折り返しのターン。

 静かにくるっと回ったあとは、少しだけバサロキックを打って浮き上がってくる。

 それでも、5メートルが限界か。

 まぁ、もちろん、しないよりはマシ。少しでも勢いはつけたいし。

 そんなことを思いながら、ラストハーフを見守る。

 一定のリズムを取りながら泳いでいく香奈ちゃん。多少バテが見え始めているところはあるものの、それでもすーっと同じスピードを保とうとしている。

 そして、そのまま泳ぎ続けてラスト5メートル。

 なんとか最下位争いから身体半分ほど抜け出した香奈ちゃんは5メートルラインを超えて頭を水中に突っ込み、距離を確認したあと、4回掻いて、そのままフィニッシュ。

 ……8着の1分37秒66か。まぁまぁ、いい感じに泳げたのかなって思う。

 さすがに、リレーから個人の間のインターバルがあったとはいえ、アップ・ダウンの時間が少なかったのかな。なんて思ったり。

 パーソナルベストに近いタイムは出ているから、来年もベスト更新はできるんじゃないかなって思ったり。

 そんなことを思いながら、スプリットブックに香奈ちゃんのタイムを書き込んだ。

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