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Episode 168 男子のメドレーリレー part2

 サードスイマーのギータは、この夏、スピードを求めるために、バッタをメインに練習していた。

 そのおかげかどうかわからないけど、1フリを測ってみると、パーソナルベストを3秒以上更新したって言っていた。

 さらに言うと、1バタを10秒近く伸ばしたって言っていたし、直哉がフリーでメドレーに入っているから、メドレーでフリーに入れないこともあり、バッタに回った。

 そのギータ。しっかりと順応したようで、9位まで落ちた順位を必死に戻そうとする。

 ただ、ヒートトップは難しいかな。

 さすがに、トップと20秒くらい離れてしまえば、さすがの直哉も巻き返すのは難しいだろう。

 そんなことを思いながら静かにレース展開を見守る。


 そんなギータ。ストロークピッチもキックの強さもいつもと変わらないように見え、じりじりと前を泳ぐ選手に追いつき、追い抜きまではしなかったけど、かなり近づいたところでアンカーの直哉にバトンタッチ。

 直哉も直哉で、どこか調子がいいみたいで、切り絵に飛び込んだ後は、水中で力強いドルフィンキックを打って行く。

 ここからはとんでもないスピードで泳ぐ直哉に視線が集まることだろう。あんtね思いながら、ドルフィンキックでいい気に距離を稼ぐ直哉の姿を見ていた。

 すでに、場内の一部は、直哉がドルフィンキックをしただけで、かなりのスピードと距離を稼いでいることにざわつきを見せていた

 まるで、このクラスのこんな選手がいてもいいのか?と言わんばかり。

 だけども、もちろん直哉はここにいていいクラスだ。

 さすがに、個人だと「はぁ?」と言われるレベルだけど、うちは直哉を除いたら、そこまで速くないし、むしろ、弱小校に分類されるレベル。


 そんな直哉は、泳ぎで格の違いを見せながら、まるで水を得た魚のように、元気に突っ込んでいく。

 こんな姿を見せられたら、前の不調のことは頭から消え去るわけで、私の頭の中は、どれだけのタイムで泳いでくれるだろう。と少し期待するような思考になってきている。

 たぶん、高期待されるっていうこと、本人は苦手でやめてくれって言うかもしれないから、口には出さないでおくけど、やっぱり、期待はどうしてもしてしまうよね。

 そして、傍から見たら、シャチが弱い者いじめをするわけじゃないけど、遊びながら泳いでいるように見える。

 ただ、何かを試しているのかわからないけど、ノンブレスで突っ込んでいるように見える。

 もしかしたら、アップ感覚で泳いでいるのかもしれない。たまに、公式ウォーミングアップの時、スタート練習をさせているとき、ノンブレスで突っ込んでいるのをたまに見る。

 たぶん、直哉自身は、アップのときに感覚を確かめているのもあるだろうし、たまに、こういうリレーのときに感触を試しているときもあるだろう。


 引き継ぎで飛び込んでから直哉は一切息継ぎをせずに突っ込み、驚くことに、6位でもらったバトンを3位にまで持ち上げて、フィニッシュ。

 さすがに、タイムはそこまで振るわないけど、直哉ひとりのおかげで、必要以上にタイムを落とさずに済んだ。そんな印象を受ける。

 そんなことを思いながら、スプリットブックに書き込んだタイムを計算して、ベストタイムを書いたノートと見比べながらボソッとつぶやく。


「なんとかタイムを落とさずに行ったか。どうなるかと思ったけど」


 もちろん、周りにだれもいないことを確認してからね。

  さて。リレーもあと3組過ぎたら、個人種目に移る。

 個人種目のトップは女子の1バックからスタート。

 香奈ちゃんが出場予定になっているけど、さすがに、タイム的に最終組に近い。

 まぁ、ここはしょうがないな。と思いつつ、香奈ちゃんだけじゃないけど、各選手、自分の泳ぎをしてくれたらな。と思っている。


 そして、その3組もようやくレースが終わり、予選結果が表示される。……とはいっても、決勝に進む10チームとその下10チームを下から順にだけど。

 もちろん、この20校の中に扇商の名前は入らない。

 どれくらいの順位なのかはだいたいの予想でしかわからない。というのも、各組でタイムに差が開きすぎて、すべてを拾い切れていないから。

 どこかのタイミングでどこかにレース結果が紙で掲載されるはずだから、それで確認するつもり。

 余り順位を気にすることはないってわかっていても、リレーもなぁ。男女ともにどのあたりの順位かまったく予想もできない。

 まぁ、これに関しては、決勝競技が始まるくらいに愛那にお願いしようかな。それか、一番早くレースが終わる香奈ちゃんにお願いするか。まぁ、どっちでもいいんだろうけど。

 そんなことを思いながら、そろそろ始まる個人種目に私も頭を切り替えていく。

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