Episode 165 女子のメドレーリレー
そこから時間はすぎて、いよいよ扇商水泳部の大会ファーストレース。
たぶん、遊菜以外初めてのリレーになるはず。
この経験のなさがどう影響するか。練習中にしっかりと時間をかけて引き継ぎの練習をしたものの、その成果が出るかどうかよね。
まぁ、うだうだ言っていても仕方ないし、ここは暖かく見守るしかないよね。そう思い、笛が鳴る場内で、扇商のメンバーが泳ぐ8コースに視線を集中させる。
相変わらず笛は響くものの、トップレースに比べると、鋭さや威厳はないように感じる。
適当にしているわけじゃないんだろうけど、応援の数が少なく、やりやすいからなんだろうな。なんて適当なことを思いつつも、ガチガチに緊張しながら入水した香奈ちゃんを見ていた。
スタートが少し無様でも、フォームさえしっかりしていれば大丈夫だろう。とは勝手に思っているけど、どうだろう。
私の感覚と香奈ちゃんの感覚とは違うからなんとも言えないところはあるけど、正直、私は大丈夫だと思っている。
ちょっと自信なさげに入水したものの、スタートバーを持ったのを見ると、割り切ったみたいね。
構えてから天井を見上げて一息ついたところまで見えた。
大丈夫そうだな。まぁ、気楽にやってよ。なんて思っていると、スタートの合図が鳴る。
それと同時にスタートしていく香奈ちゃんを含めた選手10人。
リアクションはある程度言いタイムが出ている。
緊張している中でも、しっかりとコンマ68と、いい滑り出しだな。
これであとは筋力がもう少し付けば完璧なんだろうな。なんていらないことを考えてしまう。
トップレースでは、規定ギリギリの15mまでバサロをする選手が多いけど、さすがにこの組になると、そういった選手は少なくなって、香奈ちゃんも10mも行かないところで浮き上がってきて、腕をリズム良く回し始める。
それを見た瞬間、香奈ちゃんは大丈夫だ。いつも通りやってくれる。そう思った。
そこからは、私が思った通りで、順位こそ奮っていないけど、どうも、ベストに近いタイムを出すんじゃないかって思い始めている私がいる。
というのも、いままでハーフを短水路含めて、22秒以内で回ったことがなかったのに、今日はまだ、目視換算だけど、21秒台で過ぎていったように見えた。
これで本当にベストが出せるなら、御の字かも。そんなことを思いながら、必死に泳ぐ香奈ちゃんを見ていた。
そしてここに来て、最初の組で感じた感覚は、より一層強くなる。
各校、そろそろ弱小校と呼ばれる部類に入ってきているからか、数合わせでリレメンに選ばれている人も多いのか、種目に速い・遅いがはっきりと目に見える。
これだけはっきり見えると、やっぱり、水泳をやっている人はめっきり減るんだな。なんて思いながら、進むレース展開を見ていた。
最初の50mを過ぎていくファーストスイマーの香奈ちゃん。
47秒82の7位でセカンドスイマーの杏里ちゃんに繋いでいく。
さすがに、ここはまだ我慢だな。
最悪、遊菜に繋ぐまでに最下位まで落ちることも考えないといけないところだけど、どうだろう。
とりあえず、香奈ちゃんはリレーのファーストスイマーながら、ベストタイムを叩いてきた。
さすがに、レースだからと、アドレナリンが出たか?まぁ、詳しいことはわからないけど、いかんせん、ベスタタイムを叩いたことに関しては、本当に素晴らしいことだ。
さて。視線は変わって、ぎこちない飛込をしていった杏里ちゃん。
いつもより高くて慣れないスタート台に少し恐怖を感じてしまったのか、少し飛び込みが遅いようにも見えた。
だけど、そこからはドルフィンを打った直後に一掻き。少しもったいないかと思いながらも、一蹴りして浮き上がってきた杏里ちゃんは、自分のペースでレースを進める。
たぶん、ここから見える限り、ストロークピッチは練習の時より少し早いように見える。
これも、レースの緊張と、速く泳がなきゃっていうプレッシャーが送させているのかもしれない。
だけど、それもめったに出ない大会だからこその見えるところだと思う。
それに、ハーフラインを超えたところ範囲で6位に順位を一つ上げているようにも見える。
ほとんど並んでいるようにも見えるから、いいいちにで愛那に繋げるんじゃないかな。なんて思うけど、どうだろう。
それに、あまり、前と差は開いていないようにも見えるから、もしかしたら、愛那で詰めて、遊菜で逆転ってこともありえるだろうな。なんて考えている。
まぁ、愛那で詰められなくても、現状を見ていると、最悪、遊菜で捲れるかな。なんて思ったり。
この大会のこのクラスだから言えることなんだろうけどさ。
そんなことを思いながら、杏里ちゃんが泳ぐ姿を見て、改善点がないか見ていた。
ただ、この夏、しっかりとフォームチェックとかいろいろきれいなフォームを固める練習をしていたから、パワーがなくて進む距離が短いことを除けば、何も言うことはない。
そんな杏里ちゃんは、前を泳ぐ選手にしっかりと追いつき、6位のままサードスイマーの愛那に繋いでいった。




