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Episode 164 強者の余裕

『ただいまより開会式を行います。スタンドにいる選手、マネージャー、顧問の先生方、ご来場の皆さまはご起立のうえ、大型スクリーンにご注目ください』


 ここから始まる開会式。

 正直、仕事が終わっていない私からすると、最初に立って座る合図があってからは、ほとんど何も聞かずに黙々とスプリットブックに書き込み、なにかいろいろやっているのも気にならず、気づけば、開会式が終わっていた。

 もしかしたら、朝が早くて寝ていたかもしれない。そんなことを思いながら、プログラムを見て、メドレーリレーの組を確認。

 女子が7組8コース、男子が10組6レースと、まぁまぁ、弱小校としては、妥協しないといけない所かな。なんて思いながら、少し苦笑いを浮かべる……。

 これ、来年、八商大会、連覇できるかな。と心配になる布陣。

 まぁ、こればかりは仕方ないから、来年に入ってくる新入生と、選手たちのレベルアップを期待するしかないかな。そんなことを思いつつ、選手全員をメドレーリレーに送り出す。

 競技開始から30分以上は待たないといけないのか。なんて思いつつも、市立大会に比べたら、待機時間が長く、暇な時間ができるのはありがたいかな。なんて思いながら、まだ競技が始まっていない場内を見る。


 スタンドでは、至るところから応援合戦の大声が響き渡る。

 これが人数の暴力か。なんてしょうもないことを思いつつも、雑音にしか聞こえなくなる応援合戦の声を聞いていた。


 それも、10分くらいしたら、落ち着きを見せ、各校、存分に士気を高めたのか、特にスタンドの下の方を陣取っている強豪校を中心に熱があるようにも思える。

 まぁ、私ひとりでやったところでどうにもならないんだけど。

 そんなことを思いつつ、いよいよ始まるレース。最初からたぶん、熾烈なレースが繰り広げられるんだろうな。なんて呑気なことを考えながら、椅子に腰深くかけて、レースを見守ることにする。


『お待たせ致しました。ただいまより、大阪高校新人水泳競技大会、1日目の競技を行います。プログラムナンバー、1番、女子200mメドレーリレー、予選1組の競技を行います』


 やっと始まるな。なんて思いつつ、強豪ばかり蔓延る1組のレースが始まろうとしている。

 メンツも、将星高校もいれば、御幣大附もいる。こうなると、本当にコンマ数秒以内のレースになりそうだな。なんて思いながら、強豪校のレースを観戦することにする。

 たぶん、このまま1時間は私ひとりで荷物番することになるだろうから、私が思うままに荷物番をしながら過ごせばいいか。なんて思いつつ、雑音にしか聞こえない声援を聞き流す。


 1種目目の1組目だから、そんなこともないのかな。なんて思ったけど、思った以上に声援の声が大きく、鋭く笛が鳴り響き、場内を静寂に仕向ける。

 まぁ、それでも、案の定、静かにならない場内に呆れながらも、長い笛がひとつ鳴り、それを聞いたファーストスイマーたちは、じゃぼんと水中に入る。

 ここでようやく場内が静かになっていき、背泳ぎの選手たちの準備を促す長い笛が鋭く鳴る。

 正直、私もあの場にいると、身体が硬直するんだろうな。なんて思ってしまう。

 最後に出た八商大会から2ヶ月は経っているものの、あれは、非公式大会っていう位置づけが私の中である。

 そう考えると、やっぱり選手復帰は無理だろうな。なんて思いつつ、いよいよ始まるレースを見守る。


『よーい』


 ここにいてもはっきりと聞こえる声。いつも同じ人が言っているのもわかるんだけど、今日に限っては、なぜか、いつもよりクリアに聞こえた。

 そのすぐあと。スタートの合図が鳴り、選手10人は思い切り飛び出していく。

 もちろん、強豪が揃う10校。スタートのリアクションタイムも尋常じゃない。

 そこからは、バサロキックでしっかりと加速しながら距離を稼ぎ、15mラインを超えないうちに、浮き上がってきて、水しぶきを少し立てながらグングンと泳いでいく。

 さすがに、ひとり50mだからということもあり、レースの展開はコロコロと変わる。

 やっぱり、どこもかしこも、得意不得意の種目があるなぁ。なんて感じた。

 バックがラストフィニッシュなのに、そのあとのブレで5位引き継ぎを見せるなんてこともあったし、トップが上位3チームで入れ替わったりなんてこともざらにある。

 現に、トップフィニッシュするだろうな。と思っていた将星高校のチームは、1位に躍り出たり、2位へ落ちたり。ジェットコースターのようにとは言わないけど、順位の入れ替わりが激しくレースは進み、最後のフリーで3位から御幣大附がトップまでまくってフィニッシュした。


 まだ予選なのだからだろうか。セカンドフィニッシュした将星高校はフリーの選手がどこか余力があるように感じた。

 まぁ、セカンドフィニッシュだから、決勝には確実に進むんだろうけど、なんというか、格の違いを見せつけられた。そんな気がした。


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