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Episode 160 大会の打ち上げ

「はい。1日お疲れさん。みんなええ結果は出たんかな?そのへんはマネージャーから聞いてると思うけど、喜ぶ人もおったら、反省するところがある人もおると思う。それは人それぞれやから、しっかりと考えて、次に活かしてください。あと、3年生は今日が最後の大会やったな。今年1年は、例年以上に活発な練習が詰めたんとちゃうかなと思います。たぶん、それは1年生の影響が強かったんとちゃうかなって思うし、みんな負けたくないって思ったから強くなったと思います。ほんなら、俺がずっと喋ってるのも疲れるやろうから、あとは、みんなで楽しく飯行くんか?ほんなら、羽目外さんように楽しんでください。そしたら、お疲れさん」


 そう言った長浦先生は、このあと、なにがあるのかわからないけど、そそくさと駅の方へと向かって行った。


「ほんなら、俺らも移動するか。今日の打ち上げ会場に」


 部長がそういうと、3年生の先輩たちが先に前を歩きだし、私たち1年生も後ろをついて行く。

 そこから10分も歩かないうちに着いた小さな居酒屋。どうやら、ここで打ち上げをするようね。

 お酒を飲むつもりじゃないよね……。なんて心配したけど、話しを聞くと、どうやら、棚橋先輩のご実家のようで、打ち上げ会場として快く貸してくれたみたい。

 食事もドリンクも用意してくれるみたいで、引退式さながらのような楽しげな雰囲気で打ち上げが始まる。


 そこからだいたい2時間くらいかな。ジュースを飲んだり、食べ物を食べたりと、みんな1年、3年関係なく、ワイワイと楽しく、最初のプール掃除のような雰囲気が漂う中で、打ち上げは進んでいく。

 男子は、ひょろり先輩を取り囲むように3年男子の先輩たちが絡み合っていて、そこによっしーがいたのは少し笑ってしまったし、女子については、棚橋先輩を中心に遊菜だったり、成海先輩だったり、ほとんどの女子がワイワイと楽しんでいた。


「美咲ちゃん、いろいろとありがとうな。初めてのマネージャーやったやろうに、いろいろ仕事を押し付けてもうた感じになってしもうて」


 ワイワイしていた群衆から抜けてきたのは沙雪先輩。

 正直なことを言うと、私が水泳部に入ったのは、沙雪先輩の言葉があったからだし、沙雪先輩の言葉がなかったら、私はここにいなかったんだろうな。なんて思う。


「いえ。沙雪先輩がいなかったら、私はここにいなかったと思うので、逆に、私は沙雪先輩に感謝です。仕事量なんてどうでもいいって思ったくらいです」

「うち、なんかした?なんもしてへんような気がするけど」


 たぶん、何気ない一言だったんだろうけど、私にとっては、忘れもしない一言だった。だから、沙雪先輩に感謝しかないのよね。


「そんなことはないです。沙雪先輩は忘れてるかもしれませんけど、『選手がベストタイムを更新するところを間近で見れるのが嬉しい』って言ったとき、私もちょっとやってみようかな。なんて思ったのが最初なんですよね。正直、最初はやりたくない。入らないでおこうかななんて思ったこともありましたけど、実際にやってみたら、直哉と遊菜の成長を見届けられるのが本当に楽しくて、沙雪先輩は、これを言うとったんや。って思ったんですよね」

「でもさ、それは、美咲ちゃん自身がいろいろ知識持ってるかるからやろ?そうやないと、選手にいろんなことを教えられへんし、その先も見ることはできひんかったと思うからさ、そこは、美咲ちゃんも誇ってええところやと思うで」


 でも、最初のきっかけに関しては、沙雪先輩だからさ、そこは、やっぱり、感謝は伝えないといけないよね。


「でも、そうやとしても、うちが水泳部に入らへんかったら、こんなことにはならへんと思うんで、やっぱり、沙雪先輩に感謝ですよ」


 そこまでいうと、沙雪先輩は、少し照れた表情を浮かべた。


「ほんまに、そんなおだてても、うちからはなんもでぇへんで」

「大丈夫です。来年のプール掃除のときにOGとして差し入れを持ってきてもらえたらそれでいいんで」

「ハハッ、ほんまちゃっかりしてんな。まぁ、たぶんそうなるやろうから、もちろん、来るつもりやで。たぶん、ジュースくらいしかもってけぇへんかもしれんけどな」

「それでも十分ですよ。たぶん、部長も成海先輩も来るでしょうし。どうなるかはわかりませんけど」

「そうやね。それに、うちも大学に進むから、どうなるかわからんしな。正直、プール掃除はやりたいって思ってるけどな。人も増えるやろうし、楽しそうやから」


 正直、ずっと楽しい時間が続いていたから、こうやって先輩たちの引退を受け入れられないところがある。

 これで本当に最後なんだよな。


「何寂しそうな顔してるんよ。うちかて、いつでも遊びに来るしさ。それまでにどれだけレベルアップしてるかわからんから、その分楽しみやけどな」

「そのうち、本当に手の届かないところにいるかもしれないですよ?」

「原田くんと遊菜ちゃんでしょ?楽しみにしてるで」


 ちょっとした責任を感じたりするけど、それはそれでいいかな。なんて思ったり。


 さらにそこから1時間くらいみんなでワイワイと食事をしながらしていると、さすがにいい時間になってしまい、私たちもそろそろ帰路につくことになる。


「飛鳥、ありがとうな。ほんまに助かったわ」

「ええねんって。うちの親もノリノリやってんから。それに、おんなじ部活の人らが来るの楽しみにしてたってところもあって、今日はこれで営業を終わるつもりやし」


 その話を聞いて、私たちも棚橋先輩とその両親に深くお礼を言って、棚橋先輩のお店を出る。

 そこから、みんな地下鉄に乗ってから、それぞれの乗換駅でみんなバラバラになる。

 さすがに、私と直哉は家に帰るまでずっと一緒だったけど、さすがに、別々に帰る理由なんてなく、並んで座って家に帰る。


「直哉、あんた、テンション上がり切らんかった?」

「最初から最後までな。やっぱ、競り合わな調子が上がらんな。正直、俺も感覚がおかしなってんのかもしれんわ」

「まぁ、ずっと追いかける立場やったからな。インターハイも追いかける立場でまさかの優勝やったからな。それに慣れてしもうたら、しょうがないやろ」

「闘争心が沸き上がらんかったら、もうあかんな。まぁ、とりあえず、次の新人戦でどうにかなんとかもう一回湧きあがらせなあかんな。なんとかするわ」


 そういう直哉はちょっと寂しそうな顔をしていた。

 このあと、しっかりと直哉と遊菜のモチベーションが上がってくれたらいいんだけどなぁ。なんて思いながら私たちは、家路につく。


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