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Episode 15 大会の始まり

「直ちゃん、何見てるん?」


 遊菜は直哉が読んでいる見慣れない察しが気になっているよう。


「あぁ、これか?競泳用品のカタログ。長浦先生が『いらんからやるわ」って言うたからもらった。ええもんあったらなんか買おうかなって」

「ふぅーん」


 ちょっと興味がなくなったかのような返事をするっと、部長と成海先輩が戻ってきた。


「ほんなら、まだ中元さんが戻ってきてへんけど、軽くミーティングしようか。ひょろり。悪いんやけど、荷物番頼んでええか?」

「あいよ」

「ほんなら、ここやったら狭いから、みんな、外出てな」


 部長が言うと、要領を知っている3年生が先に外に出て、1年生はその後ろについていくような感じで外に出て、輪になる。

 そこにちょうど沙雪先輩が合流。まるで図ったかのように全員がそろった。

 そして、部長の話では、毎年、レースが予定している時間より大幅に速く進むから、招集漏れの無いようにということと、コース台が滑るから、怪我とフライングに注意すること。何かあれば、部長か成海先輩、沙雪先輩に伝えること。の3点。

 そのあと、成海先輩からはなにもなく、沙雪先輩からは、部長が言った通りで、レースの進行が速いから招集漏れの無いようにということと、明日からまた平日で、この教室も普通に使われるから、きれいに教室を使うこと。ゴミは各校で持ち帰ることの3点が伝えられた。


「よっしゃ、それ以外、何もないか?ないな。よし。ほんなら、今年も楽しく行きましょう!行くぞ!ゴーハイゴー!」

『ダークレッドナイト!』


 この掛け声は代々やっているものらしく、昨日、思い出したように沙雪先輩から伝えられ、その掛け声をかけると、リレーのメンバーは自分のスイム用品を持って、プールの方へ向かう。


「美咲ちゃん、悪いんやけどさ、場内でタイム取りしてくれへん?原田くんに聞いてんけど、タイムを取るのうまいらしいやん。お願いしていい?」


 また直哉か。いつの間に沙雪先輩に行ったんだ?まぁ、仕事がないよりは断然マシけどさ。

 沙雪先輩に言われると、私はスプリットブックとプログラムを持ってプールに向かう。

 アップの時と同様、湿気を感じる場内。やっぱり、水を温めるためにボイラーを炊いていることもあるんだろうか。とにかく、湿気がこもっている。

 こりゃ、長くいると、髪の毛が暴発するんだろうな。とか思いながら、選手と選手の間をすり抜ける。

 さらに奥に進んで、プールサイドへ足を踏み入れる。

 場内からは、強豪校から感じられるピリッとした空気と、そこまで強くないと思われる高校から感じられるふわふわとした空気。その2つが感じられた。

 強豪校同士でけん制し合う視線が私の方に流れ弾として飛んでくることもあるけど、完全に無視を決め込んで、スタートとゴールタッチが見える位置に無理やり割り込んで、場所を確保する。

 あと少しでレースが始まる。その雰囲気を感じ取って、スタート側を見る。

 すでにファーストスイマーの選手はみんなゴーグルをつけて、身体をたたいたりして気合を入れたりしている。


『お待たせいたしました。ただいまより大阪高校総合体育大会水泳競技大会兼、大阪高校選手権水泳競技大会兼、近畿高校予選会を行います……」


 いよいよだ。今年初めてのレース。どんな感じになるかわからないから、ものすごくワクワクしている。


『プログラムナンバー1番、女子400メートルリレー、予選1組の競技を行います』


 懐かしい笛の音。ただ、少しトラウマが残っているのか、レースに出るわけじゃないけど、足がすくむ。ただ、予選会だからかなのか、笛の音がすごく雑で、少しだけ緊張感が緩む。そんなことを思いながら、プルグラムを開けて、どこの学校が出ているのか確認する。

 開催校でもある海宮高校は6レーンあるうちの2レーン。センターラインは、桃谷女学院と、強豪校のひとつでもある将星学園。

 ただ、桃谷女学院のファーストスイマーは、言い方が悪いかもしれないけど、まったく早そうに見えない。

 パワーはあるけど、その力をスピードに活かせそうにない感じ。

 そんなことはよそに、号砲が鳴り、レースが始まった。

 そして、飛び込んでからというもの、強豪校の応援がいろんなところから発される中で、1番最初に浮き上がって頭1つ抜け出したように見えたのは海宮の選手。どうやら、スプリンターで前半から突っ込むタイプの選手らしい。

 そういうタイプの選手が、目に見えるように突っ込むと気持ちがいいよね。

 あっという間に25メートルを泳いでいく。手元の時計も動かしていて、ラップタイムを取ってみると、驚きのスピード。

 最初の25メートルはたった12秒で泳いでいった。遊菜といい勝負をするかもな。なんて思ったのは、最初のクォーターだけ。


 そこからは目に見えてわかるように落ちていき、差は十分に確保できているけど、遊菜にはかなわないか。そんなことを思いながら、海宮高校のファーストスイマーのラップタイムを取ってみる。

 ファーストスイマーのタイムは1分2秒23か。女子にしては相当早い。たぶん、インターハイにも頑張ったら出られそうなくらい。……インターハイの制限タイムは見てみないと何とも言えないけど。


 それにしても、思ってもいなかったチームからトップが出ていったな。

 でも、これでも全国大会の記録が切れていないことにびっくり。でも、ここから出るかもしれないし、ちょっとだけ注目してみようかな。


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