Episode 158 閉会式
「もう終わってもうたんか。なんか、長いようで短かったな」
隣でハッとした愛那がポツリとそんなことを言った。
でも、私としても、そんな感覚が強くて、今までは、地区大会と八商大会を除いて、絶対に2日以上の大会期間があった。
それが、今回は公式大会で、選手全員が出ているのに、1日しか大会期間がないって言うのも、なんだか、変な感覚。
もっというなら、長水路プール(25mプール)だと、2日以上の大会が絶対だったから、なおさらに、変な感覚に陥る。
でも、逆に、出場人数が少ない大会だからこそ、味わえる体験なのかな。なんて思ったり。
ただ、マネージャー陣が忙しすぎるよね。この大会。
来年はどうなるだろうな。そんなことを思いながら、選手全員が返ってくるのを待つ。
もちろん、その間に、リレーのタイムを計算して、各個人のタイムを算出。
レースが終わってから、リレーの上位3校……毛馬、今津、八雲西の男女のチームが表彰されている間に、女子のリレメンが戻って来て、その数分あとに男子のリレメンも戻ってきた。
「みんなお疲れ~!ようやったで。人それぞれやと思うけど、ええ結果でた子もおるんちゃう?」
みんなが戻ってきたタイミングで喜びを爆発させる沙雪先輩。
もちろん、それに悪気がないこともわかっている。ただ、直哉と遊菜がいる前でそれをするか。と思ってしまった。
まぁ、私の過去を知らないから、仕方ないところはあるんだろうけどさ。
『このあと、閉会式を行います。各校の男女それぞれ3名の生徒代表者は、プールサイドのお越しください』
本部からの放送は、生徒代表を招集する放送で、3年生の先輩たちは、誰が行くか相談をしていた。
ただ、どこからともなく、3年生だけで行くと思っていた閉会式に直哉と遊菜が選ばれたのは不思議に感じて、その直哉と遊菜も同じことを思っていたみたいで、成海先輩に聞いていた。
「今年の扇商MVPは原田くんと遊菜ちゃんやからね。2人のおかげで成長できたと思ってるし、2人の力があったから、ここまでのし上がってこれたと思ってるからな。2人は逃さへんで」
そう言った成海先輩に同意するかのように、部長、ひょろり先輩、沙雪先輩がうなずいた。
その直哉と遊菜は「そういうことなら」と言って、渋々、プールサイドへと降りて行った。
結局、プールサイドへ降りて行ったのは、男子が部長と直哉、成東先輩の3人で、女子からは、成海先輩、遊菜、福浦先輩の3人。
何のためにこれだけの人数がいるのかわからないけど、まぁいいか。なんて思いつつ、自分の周りを整理する。
さすがに、レース続きで散らかっていることはないんだけど、使ったものを片付けていくだけ。
ベストタイムを確認するのは、後にしようかな。なんて考えたりもしたけど、さすがに、先輩たちの引退記念の食事会がこのあとにあるから、そこまでにはなんとか拾っておきたいかな。なんて思ったこともあり、閉会式が終わる前に、先輩たいtのベストタイムをノートから拾い上げ、今日のタイムと見比べる。
……おっと?直哉と遊菜以外、みんな自己ベストを更新している?そんなことがありえていいのか?なんてちょっといろいろおもうところはあるものの、一番はやっぱり、自己ベストを更新してくれるのがありがたい。
「とんでもないな。直哉と遊菜以外みんな自己ベスト更新してるわ」
「嘘やん?そんなことあるん?」
「うちもびっくりしてるんやけどな……。あともう少しやったな。とか思ったりしてまうわ」
「まぁ、そのへんはしゃあないよな。いろいろ環境が悪かったんやと思うわ。かわいそうやけど」
「それで済めばええ話やけどな。ここからは、視線も新人戦に持って行かなあかんで」
「せやな。さすがにそこまで来たら、多少油断しても、一気に気持ちも入るやろ」
「大阪府だけで収まる話やないしな。府の新人戦の制限タイムをクリアしたら、近畿の新人戦に繋がるわけやからな。エンジンはかかるやろうね」
「どこまでかかるかやけどな」
愛那と少しだけ話をした後、閉会式が始まり、審判長の挨拶から始まるけど、それはある程度聞き流して、順位発表を待つ。
『それでは、順位発表を行います。男子の部、第8位、南商業高校、2点』
決勝に出られただけ御の字っていう子が8位に2回入ったのか、7位に1回入ったのかわからないけど、強豪校で半分以上を占めるなかで、健闘したほうなんじゃないかと思う。




