Episode 156 ファイナルレース
そんな川上先輩。イーブンペースで泳いでいくこともあって、順位はすぐに落とす。
そこから、じわりじわりと差が広がっていくようにも見える。
ただ、扇商のリレーの組み方だと、4人の中で一番遅いのはセカンドスイマーに置くって言うのがあるから、そのへんは仕方ないかな。なんて思いつつ、レースを見守る。
あと、それとやっぱり、セカンドスイマーだけは、どうしても固定できないよね。
さすがに、リレメンは引き継ぎモーションのこともあるから、固定できたらいいんだけど、扇商のリレメンは、どうしてもタイムが似通っているから、ここがどうしても変動になっちゃう。
だから、毎度、前泳者の変わってしまう成海先輩の対応力はすごいな。って思ってしまう。
そんな川上先輩も、普段と変わらない泳ぎを見せ、なんとか、順位はひとつ落としたままキープしてサードスイマーの成海先輩に繋ぐ。
サードスイマーに選ばれている成海先輩は、癖のない川上先輩のフォームに完璧に合わせ、飛び込んでいった。
飛びこんでいった成海先輩は、いつも通り、ダンダンダンダンと4回のドルフィンキックを打った後、ちょっと早めに浮き上がってきたあと、腕を回し始め、前を泳ぐ鶴商を追いかけていく。
この前の八商大会のときには気づかなかったけど、扇商と鶴商とで、リレメンの組み方は少し違うみたいで、鶴商は一番遅いスイマーをサードスイマーに置いているようで、なんとか成海先輩が泳いでいるときに、順位をひとつあげた。
これでこの順位は確定だろう。
あと、鶴商には遊菜みたいなタイムを持つ選手はいないはずだから、たぶん、少し差を開けてフィニッシュかな。なんて思ったり。
まぁ、今の遊菜の状態なら、今津や毛馬からは少し離されるだろうけど。
成海先輩はいつも通りのフォームで泳ぎ、順位を4位に上げてアンカーの遊菜に繋いでいった。
さすがに前を泳ぐ八雲西高校とは10秒ほど離されているから、少しでも差を縮めて、来年に繋がればな。なんて思っている。
打倒八雲西なんていう目標は立てるつもりはないけど、いいところに行けばなぁ。なんて思っている。
そして、アンカーの遊菜は、調子が悪いながらも、頭から突っ込むようにして、後ろの鶴商との差をじわりじわりと広げていく。
これが遊菜の力なんだよなぁ。なんて思いながら、さすがの女子のエースだな。って思ったよね。
「さすがの力やなぁ。遊菜っちひとりで、とんでもない速さを見せつけるんやから」
「せやね。やけど、テンションが上がらへんって言うてたものの、一人だけ違う泳ぎ見せてんから、そこはええやろ」
「まぁな。それでも26秒台?出てるんちゃう?はっきり計算はできひんけど」
引き継ぎ込みの26秒台は出ている。25秒25という自分のベストからrはかなり遅れているものの、そこから比べると1秒以上も遅れている。
それを考えると、張り合いが足りなかったのかな。なんて思いつつも、短時間でかなりの数のレースをこなした選手たちを讃えてあげようかなって思う。
最多で8レースを7時間でやったことになるんだから。人によっては、予選から決勝までの間がかなり短かった人も要る狩っラ、一概には言えないけど、ちょっと疲れたレースにはなっただろう。
「あとは男子だけやな。男子も同じくらいやろうな」
「男子の2継は予選と同じようなレースになるやろうな。とは勝手に思ってるけど」
「まぁ、男子は最初から全力やからな。こういうところやったら、毛馬と今津は流してたところはあるやろうけど、こっからはさらに全部全力になるやろうからな。まぁ、扇商は順位もタイムもあまり変わらへんやろうな」
「やろうな。とは思ってるけど、ちょっとでもタイム伸ばしてくれたらなぁ。なんて思ったり」
「咲ちゃん的には、やっぱりそこが一番よな。スーパーマネージャーって呼ばれるからには」
「この際、スーパーマネージャーかどうかは別にして、この夏みんな必死に食らいついてきたわけやからな。どうにかしてタイムは伸ばしてほしいなって言うのが本音やね」
正直、それしか考えていないわけじゃないけど、マネージャーの視線から考えると、やっぱり、そこは思ってしまうよね。
あとは、どれだけのタイムを出してくるかってところだな。
大会最後を締めくくるレース。派手に暴れてくれていいと私は思っている。
そんなことを思いながら始まる男子の2継。




