Episode 154 やっぱり気になってしまう……
そんなセカンドスイマーからサードスイマーまでの動きはあまりなく、強豪校の3校と鶴商のあとに扇商がつづく。
ただ、ここから扇商は早い2人が登場する。前を泳ぐ鶴商とは1秒も差がない。上手く行けば捲れるだろう。そんな思いが私の頭の中を駆け回った。
そして、豪快に水しぶきを上げながら泳ぐ成東先輩は、悔いのないレースを。と意識しているのかわからないけど、最初から全力。
まぁ、成東先輩は、もともと゛超゛が付くほどのスプリンターだから、最初から抜くということを知らないだけだとは思っている。
ただ、その成東先輩も、かなりタイムを伸ばしたんだから、この頑張りは認めてもいいと思う。その分、スタミナは伸びて欲しかったな。なんて思っていたところはあるけど、まぁ、仕方ないか。
そんな成東先輩も、頭からほぼ全力で飛ばしていき、なんとか鶴商と並んだ状態でアンカーの直哉に繋ぐ。
飛び出しの差はほぼない。ここまで来れば、かなり直哉のほうが優位に立つ。正直、2秒差までなら、直哉に軍配が上がると思っているくらいだし。
もちろん、引き継ぎから飛び出していった直哉は、水中の時点からすでに頭ひとつのリードを取ったと思ったら、グングンとドルフィンキックで加速して、浮き上がりと同時に、腕を回し始めると、一瞬で身体半分に、ハーフラインを超えるときには、身体ひとつまで差が開いていた。
さすがに調子が悪いとはいえ、こういうレース展開を見せられると、本当に調子が悪いのか?って疑いたくなる所はあるものの、タイムを見ればその辺りはハッキリする。
ここから見える限り、全力を出しているようにも見えるし、フォームも綺麗なんだけど、いまひとつ、伸びきっていないようにも見えるんだよな。
どこか、から回っているようにも見てるんだよな。
そんな直哉。5着でもらったバトンを4着に持ち上げると、そこからは譲らずそのまま4着でフィニッシュ。
「調子悪いとは言いながら、あそこまで飛ばせるんやからすごいよな、直ちゃんは」
そういう愛那の横で、各メンバーのタイムを計算するけど、鮎川先輩と成東先輩が28秒台、部長が30秒台、直哉が24秒台と、傍から見ると、まぁまぁいいタイム。
ただ、直哉だけ見ると、ベストタイムから1秒以上遅れている。
リレーでこれだもんなぁ。個人よりも少し遅れている。
こういうとき、リレーの方が引き継ぎの分、早く飛び込めるから、タイムは早くなるはずなんだけど、リレーのほうが遅くなるっていうのは、私としては、あまり考えられないな。なんて思っていたけど、こうなってくると、直哉のコンディションはかなり良くないんじゃないかって思う。
「ほぇ〜。それでも直ちゃんで24か。決勝でもうちょっと上げてきてくれるんちゃうん?あんまり心配せんでもええやろ。とりあえず、どれだけほぼ同時で引き継いだわけやし、離れるか見たかっただけなんちゃう?」
「どうやろうな。その辺はさすがに本人やないからわからんけど、たぶんそうやろうな。というか、そうやと信じたいけどな」
無理にそう思うことにして、決勝はもう少し伸びてくれることを信じることにしよう。
そこから、レースは個人に移り、各選手が全力を尽くし、記録を残していく。
もちろん、その中には、自己ベストを更新した選手、決勝に残った選手、惜しくも両方とも叶わなかった選手もいるわけで、感情は十人十色。
特に3年生はいつも以上に嬉々としてはしゃいでいる。
タイムも残せているし、順位もそこそこに残っているからなんだろうな。なんて思うのは容易なことで、夏の成果がはっきりと表れている。私としては嬉しい限りだ。
ただ、その中でも浮かない顔をしている選手もいるわけで、そんな選手には沙雪先輩や愛那が慰めに行ったりしている。
ここは、一番気持ちがわかる私の仕事だと思ったんだけど、過去のことを話すのがやっぱりまだできなくて、沙雪先輩や愛那に任せっきりになっちゃう。
もちろん、私は私でマネージャーとして、できることをやっていくだけで、タイムを書き込んだり、招集のタイミングをみたり、声をかけたり。
慰めることはできないけど、マネージャーとして手が空いているところがあれば、いろいろとやっていく。
今日は、そこまでやってようやく、沙雪先輩たちと肩を並べられるんじゃないかなって思う。
そんなことを集中してやっていたら、いつの間にか決勝競技も終盤に近くなっていた。さらには、今気づいたけど、遊菜と直哉のレースすら終わっていた。
まったく記憶ない……。ただ、出場した1フリのタイムはしっかりと書いてあって、遊菜が56秒13で、直哉が52秒04と、なんとも言い難いタイムで泳いでいたみたい。
やっぱり、2人ともテンションが上がりきらずでタイムも伸びなかったのかな。なんて思ったり。




