表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
152/238

Episode 151 因縁のプール

「おつかれ。直哉、遊菜、2人ともイマイチやったな」

「あんまりやわ。燃え上がらん。たぶん、今までギリギリのレースばっかりやったからとちゃうかなとは思うんやけど、どうも張り合いがないわ。マジでトップ通過できひのとちゃうかって一瞬ひやってしたわ」

「せやね。たぶん、今日は無理やと思う。弱気になるわけないけど、あまりにも環境が違いすぎるわ。とりあえず、うちは昼からの1フリで大会記録を狙うつもりではおるけどさ、やっぱ、どうなるかはわからんわ」


 どうやら、厳しい戦いを勝ち進んできた2人とっては、少々物足りない模様。まぁ、それは仕方ないか。なんて思いながら、直哉と遊菜のタイムを確認する。

 インターハイから1週間ほどしか経ってないけど、半フリでコンマ5も落ちている。

 正直、それだけだとなんにもおかしいことはないんだけど、やっぱり、今までド派手にギリギリのレースを重ねてきたこともあって、やっぱり張り合いがないと、これだけ落ちるのか。なんて思ってしまった。

 今日は、これ以上のタイムは見込めなさそうだな。このあと、直哉も遊菜も1フリの予選を控えているけど。


「とりあえず、俺も大会記録やな。さすがにどんなタイムが出るかってところやな」


 かなり自信喪失になってきているようにも見える直哉。

 ちょっとメンタルがやられはじめているか。

 ただ、私としても、ここまで来るとは思ってもいなかったな。

 そんなことを思いつつ、スプリットブックを閉じ、軽くメニューを作ることにする。

 こういうときは、気楽に泳がせるのが一番だろうけど、ただただ泳ぐんじゃなくて、フォームチェックをさせながら、記録を出すために渡しも手伝う決心をする。


「とりあえず、早く食べてまいな。この昼休憩中はメインプール使えるから、ちょっとでも泳いだほうがええんちゃう?」

「せやな。そうするわ。気分転換とはわけがちゃうんやろうけど」


 何かを察してくれたのか、直哉は食事のスピードを少しだけはやめて、すぐに食べ終わろうとする。


「遊菜はどうする?一緒に泳ぐ?」

「せやね~。咲ちゃんが泳ぐんやったら、うちも泳ごうかな」


 最初から、愛那がいいよって言うなら、私もメインプールで泳いでみたかったし、ちょうどいい機会だなって思ったから、私も泳ぐことにした。

 そのことを伝えると、遊菜は速攻で「泳ぐ」って言って、私も泳ぐことにしている。

 ただなぁ。私がどこまで泳げるか。なんだよなぁ。なんて思いつつも、泳ぐ準備を進める。

 そこからものの3分でお弁当を書き込んだ遊菜と一緒に更衣室に行き、着替えてから、しれっとメインプールに入り、ゆっくりと泳ぎだす。

 さすがに私だって、ほかの選手の邪魔にならないように泳ぐつもりだから、堂々と真ん中のコースは使わず、細々と橋のコースで泳ぐ。

 ついでに言うと、直哉と遊菜の邪魔にならないように、2人の後ろをのんびり泳ぐようにしてね。

 それにしても、公認長水プールで泳ぐのが久しぶり過ぎて、つい、こんな感覚だったっけ?っていう感覚に陥ってしまう。

 それは仕方ないことなんだろうけど、この感覚を楽しんでいる私がいる。


「久々ちゃうん?長水で泳ぐの」


 スタート側に戻ってきた私を待っているかのように2人が私の泳ぎを見ていた。


「あの事件以来やね。しかも、なんの因果関係やろうか。まさか、長水をここで泳ぐことになるとは思ってへんかったし、めっちゃ悔しいって思ってまううち「悔しさを忘れてへんかったらええやろ」がおるわ」

「悔しさを忘れてへんかったらええやろ。まぁ、まだ飛ばれへんと思うけど」

「さすがにどう頑張っても、ここは無理やな扇商の飛び込み台はさすがに慣れたし、恐怖感もなくなったけど、さすがにここはな……」

「やろうな。まぁ、今はスーパーマネージャーって立場やし、無理に慣れる必要はないやろうし」

「そう言うてもらえるとありがたいな。まぁ、俺は選手に戻れるんやったら、戻ってもええと思うけどな」


 直哉はそんなことを言ってくるけど、たぶん、それはないだろうな。なんて思いつつ、まだ泳ぎだす直哉たちの後ろをゆっくりとついて行く。

 ただ、あれよね。わかりきっていたことだけど、スピードの差がハッキリとでているから、はっきり言って、おいて行かれる感覚はものすごく強い。

 だけど、私の前を泳ぐ遊菜も、ゆったりとしたフォームで泳いでいるわけで、意外とスピードは出ていない。

 ゆったりと泳ぐことを目的にしているのか、前を泳ぐ直哉を追いかけることは何もしないようにも見える。

 さて。私もゆったりと泳ぐことはやめないけど、クロールから背泳ぎに変えるか。

 それだけ思うと、50メートルのターンをした後、仰向けのままバサロキックを打ちながら、背泳ぎで泳いでいく。

 さすがに、人が少ないこともあり、波は立っていない。むしろ、遊菜が泳いだ後の水流に乗っていた、あまり力を入れずともある程度進む。

 これくらい気楽に進めれば私としても、あまり力をいれずに進むなら、それだけでオールオッケーだと思っている。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ