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Episode 150 午前最後の決勝

 さすがに、遊菜はフォームこそ意識していたみたいだけど、飛ばしきれなかったって感覚が強いかな。

 なんというか、感覚が狂ったのかなって思うけど、どうなんだろう。さすがに、そこは本人に聞いてみないとわからないけど、たぶん、遊菜は感覚を狂わせているだろう。

 今までギリギリの大会で、シビれるレースをかさねていたから、なおさらだろう。

 これ、どうやったら感覚を戻せるだろうか。なんて思っていると、もうすぐ男子のメドレーリレーが始まろうとしていた。

『第7コース、扇原商業ティーム、中山くん、鮎川くん、成東くん、原田くん』

「扇商ゴーファイ!」


 場内通告の後、愛那を中心にして掛け声が飛ぶ。

 今日一日で定着させるつもりなんだろうか。そんなことを思いつつ、決勝の様子を見守る。

 全チームが紹介され、少しだけ余韻を取ったあとは、審判長の鋭い笛の音が鳴り響き、ガラガラの場内がより鋭さを与える。

 こんなに鋭く響くなんて思っていなかったから、背筋がピシャーンと伸びる感覚を覚える。

 メンバー自体は予選と変わらない。

 ファーストスイマーの部長はすでに長い笛が鳴ってから水中に入っている。多少は緊張しているところも見受けられるだろうか。まぁ、隣が今津高校なら、緊張するのも無理はないか。

 そんなことを思いながら、スタートを待つ選手10人の姿を見ていた。


『よーい』


 予選の時からほんの僅かにレーン順が変わったくらいの決勝レース。

 扇商も、予選の結果から少しひとつ中央寄りになった。

 そんな小さな変化だけど、強豪校が隣に来ると、ちょっと嫌になるのもわかる。

 ……ちょっと考えるのも嫌になってきたな。後ろに下がりたい気分。

 たぶん、ここから扇商が予選より順位を落とすことは無いだろうけど、ただ、強豪校の圧にどこまで耐えられるかってところかな。

 そんなことを思っていると、スタートの合図が鳴り、選手10人が飛び出す。


「そーれぃ!」


 愛那からスタートと同時に景気のいい声が聞こえて、まだ午前のレースを終わるつもりは無いんだと悟り、チーム内の士気をあげたように感じた。

 ただ、やっぱり、今津や毛馬の力強い応援が扇商の応援をかき消す。

 それでも、しっかりと声を出し続ける愛那には頭が上がらないな。

 さすがムードメーカーだ。なんて思いながら、ファーストスイマーが続々とセカンドスイマーに変わっていく様子を見ていた。

 そして、扇商は5位でセカンドスイマーの鮎川先輩に繋いでいった。

 で、タイムをスプリットブックに書き込んでいるときに気づいた。

 ちゃっかり部長はリレーながら自己ベストを更新してきている。

 もしかしたら、強豪校が隣にいるから固くなるというよりは、頑張ってついてった結果と言うほうがいいか。

 まぁ、それがいい効果を生んでいるなら、なおさらオッケーかな。なんて思いつつ、セカンドスイマーに移っていったレースは特段大きな動きはないまま、レースが進んでいく。

 ひとつ上の4位にはライバルの鶴商がほんのわずか先にファーストサイマーが泳ぎ切ったみたいで、わずかに扇商が遅れてセカンドスイマーに繋いで行っている状態。

 セカンドスイマーの鮎川先輩は、成海先輩に教えてもらったフォームで力強く泳いでいき、あっという間にサードスイマーの成東さんに繋いでいく。

 さすがに、インターハイに近いタイムを出す選手が多い高校があるせいで、大きく離され始めているけど、そこはまぁ、仕方ない。

 飛び出していく成東さんだけど、たったワンウェイということもあって、本当にトビウオが飛び跳ねるような泳ぎを見せながら、豪快に泳いでいく。

 成東さんも、かなりスプリンターだけど、たった50だけなら、ばてることもほぼないか。

 そんなトビウオのような泳ぎを絶やすことなく鶴商と並んだかな。なんて思っていたら、するりとかわしていき、4位に浮上。

 少し斜めになっているところもあるから、微妙に見にくくなってきているけど、そんな様子が確認できる。

 そんなレースもあっという間にアンカーに繋がっていく。

 扇商のラストは直哉。

 心配することなく、この位置を確定させるかな。なんて思いながら、アンカーの直哉が飛び出していく姿を眺めていた。

 なんていうか、ここまでみんなリレーの参考記録ながら、自己ベストを更新してきている。

 さすがに、直哉だけは自己ベストの更新は難しいかなって思っているけど、それでもそれに似たタイムを出してくれることだろうと思いながら、強烈なドルフィンキックを打って、ひとりだけまるでイルカのようなキックで進んでいく。

 やっぱり、この場に直哉は場違いだ。だけど、扇商からすると、直哉の爆発力は絶対に必要なんだろうな。

 ただ、それでもいつまでも直哉に頼るっていうのはできないんじゃないかなって思うけど、まぁ、1シーズンでチームが変わってしまうんだから仕方ないか。

 どんな地無が出来上がるのかは、実際に泳ぎ始めないとわからないし。


 そんなことを思っていると、直哉はあっという間にランウェイを泳ぎ切る。

 その姿に場内は少し驚いた歌声が上がるものの、それは、たぶん、鶴商との差が一気に広がったこと、八雲西高校との差が縮まったこともおそらく一因だろうか。

 ただ、なんとなくだけど景気のいい終わり方をしたんじゃないかって思うよね。

 とりあえず、ここからお昼ご飯だ。話を聞いている限り、どうも、お昼休憩を取ってから次に行くみたいだ。

 それほど時間に余裕があるってことなんだろうか。……たぶん、そうなんだろうな。

 一日で全部の競技を終わらせるつもりでスケジュールが組まれていそうな予感もするし。

 そんなことを思いつつ、朝来るときに勝ったおにぎりの包装を破いてスプリットブックを見ながら食べ進める。

 そうしていると、リレメンが戻ってくる。


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