表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
150/230

Episode 149 Yuna side 感覚が狂いっぱなしでヤバい

 うちの1発目は男子と違って、個人のレースからやったって言うのがあるんか、感覚をつかみきれへんまま予選を泳いだこともあるんか、インターハイの覇者らしく、大会記録はサクッと更新したけど、ベストタイムからはちょっと離れたタイムで泳いどった。

 そのあとの決勝も、調子が狂ったままやったし、勝手ももうわからん状態で泳いどったこともあって、予選よりは多少速いタイムで泳いで、こっちでも大会記録を更新したことはしたけど、やっぱり、インターハイのときから比べるとコンマ5くらい遅れてる。

 それくらい誤差やろっていわれるかもしれんけど、うちの中では誤差は50につきコンマ3までって決めてて、それ以外は完全な不調と捉えている。

 そんなこともあって、不完全燃焼のまま今のリレーレースを迎えている。

 ほんでから、あまりタイムがよくなかったことを考えすぎてんのか、ちょっと落胆してるのも事実。

 そんな状態で混継を泳ぐのはちょっと気が引けている。

 現に、10数分前に半フリの決勝を泳いだばっかりで身体自体は疲れてもないし、アツいはずやのに、まったく気分が盛り上がってけぇへんのと、冷め始めているのを感じてる。

 あと、一番大きい要因が、自陣と他陣の距離差が離れすぎてること。

 これを見て、さらに熱が冷めてる感覚すらしてる。

 自慢の大声を響き渡らせようとしても、まったく響かんような気がしてるほど。

 そんなん感じてたら、ええパフォーマンスができひんことわかってるのに、レースはサードスイマーに移って、少し経ってる。

 うちもルーティンとしていろいろグワァって吠えることが多いけど、それはうち自身のテンションを上げるために吠えることも木手系の一つやったし、自チームの周りを盛り上げるためって言う一面もある。

 まぁ、基本的には、ラストまで声を上げ続けてほしいって言う思いもあって、うちが自分から声を上げている。

 やけおd、いまのうちはそこまでの余裕がなくなっている。

 いつもうるさいはずのうちが静かなことが不思議なんか、飛鳥先輩も不思議そうに見てる。

 ……ってか、そろそろ集中せな。福浦さんもハーフラインを超えてきてる。

 そう思ったうちは、スタート台に乗った後、天井を見上げて一息ついた後、全力で泳いでくる福浦さんの姿を視界にとらえる。

 成海さんがライバルって言うてる鶴商とは差が最初に比べたら縮まってるけど、わずかに鶴商の方が前に出てるように見える。

 さすがに福浦さんが泳ぎ切る前に順位を入れ替えることはできひんか。

 単純計算で7秒差までやったらうち一人のパワーで追い抜けるやろうって咲ちゃんに言われてるものの、それは、らくしょうにねらえるはんい。

 ……ええか。とりあえず、飛ばせる範囲で飛ばしたろ。それに午前最後や。午後に向けて景気良く終わらせたい。

 そう思ったうちは、無理やり気持ちを切り替えるように両手を3回たたいた後、「福浦さん!ラスト!上げて上げて上げて!」と思い切り吠える。

 ただ、こうやっても自分の気持ちが切り替わってないのはわかってる。やけど、心配をかけへんための見せかけや。

 多少タイムが悪くても、長水路に慣れてへん先輩たちのせいにできるやろうと考えてのこと。

 そんなんは言い訳にしかならへんのはわかってるんやけどな。

 そんなことを思いつつ、ラスト5メートルまで来てる福浦さんの姿を指先で追いかける。

 ……うん。大丈夫。福浦さんのタイミングはおうてる。あとは、うちが合わすだけや。

 そして、福浦さんが壁にタッチする瞬間、だいたいこんなもんやろ!と思って思い切り飛び出す。

 福浦あさんのタッチが完璧やカラって思っただけやし、もしかしたら、フライングになってるかもしれん。やけど、そこはもう自分の感覚を信じてる。

 それに、度の入ってるゴーグルをしてるわけやから、タッチする瞬間は見えた。その場面でうちの足はまだ台から離れてなかったはず。

 まぁ、今さら考えとってもしゃあないから、思い切り泳ぐことにする。


 飛びこんだうちは、今までと変わらんように意識しながらも、ストリームラインを取り、体勢を整えた後、思い切りドルフィンキックを打って浮き上がりを促す。

 そこからは、フォームを意識しながら飛ばせるだけ飛ばす。

 ただ、あれなんよね。両隣がおらんから、正直、どれくらいのタイムで泳げてんのかわからんし、自分がどこの位置におって、どれだけのスピード差があるんかがわからへん。

 もう、最初っから狂いっぱなしの体内時計はより狂って、自分のタイムすらわからんくなる。

 こうやってしもうたら、うちの悪い癖で自棄になってまう。ただ、染みついたフォームはそのままよね。

 なんて思っていると、あっという間のラスト5メートルまで来てるみたいで、ラストくらいノンブレスやろと思い、最後まで気合いで突っ込む。

 そして、手をタッチ板に叩きつけて、一息つくと、いつも以上に疲労感がないことに違和感を覚えながら、ひょいとプールサイドに上がる。

 やっぱり、この大会、うちの感覚を全部ぶっ壊しに来てる。

 いくら何でも、全員が出られる大会やからって、こんだけ実力差があるとキツすぎる。

 さすがに個人の半フリはインターハイにも出た選手が隣におったから、タイムは悪いとしても、まだマシなほうやった。

 やけど、このリレーはヤバいわ。もう、感覚がわからなさすぎて、気が狂いそうやった。

 やけど、成海さんからハイタッチを求められたときはさすがに返した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ