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Episode 142 愛那からの提案

 なんやろう?直哉のテンションが上がってへんように見えたけど。

 それに、ハーフラインを超えたあたりから、ガクッとタイムを落とした。

 余裕なレースが直哉のテンションに影響をしたのかわからないけど、なんていうか、自身のベストから2秒近くも遅れたタイムでフィニッシュしている。

 それでもトップ通過なのはさすがというべきなんだろうけど、かなりテンションが下がってそうやな。なんて思いつつ、次々に行われるレースを観戦。

 ただ、リレーのタイムを見たときから思っていたけど、これくらいのタイムで成り立つのか。なんて思ってしまった。

 これに関しては、たぶん、私たちが悪いんだと思う。

 近畿大会、インターハイと、ずっとトップレースを見ていたせいなのかもしれない。

 タイムがずっと遅いって思ってしまう。これはさすがに私たちが悪いのはわかっている。

 インターハイが終わってからたった2週間だからなぁ。

 ほかの部員たちのタイムを把握しているとはいえ、しばらくの間、トップレベルのレースを見ていたせいもあるから、やっぱり、感覚がおかしくなっている。


「咲ちゃん、どないしたん?表情おかしいで」

「せやね。なんていうか、美咲ちゃんの顔がいつもより渋いよな」


 マネージャーの2人に指摘され、私はハッとする。

 どれだけ渋い顔をしていたのかと思ってしまう反面、それが顔に出てしまっていたのかと思って、自分の気分をリセットさせようとする。


「今までハイレベルなレースを見たせいかもしれないですね。私の中の感覚が乱れまくって、変な感覚になってます」

「まぁ、そうやろうね。近畿もインターハイもずっと見てきたわけやし、高校大会もタイム順やったから、大きく離れることはほとんどなかったし、美咲ちゃんの感覚が来るのもわかるような気もするわ。でも、そこは、ちょっと切り替えなあかんよな」


 それはわかってる。だけど、どうも調子がおかしいのもわかっている。


「すぐに切り替えます。そうでないと、選手たちに影響が出そうですし」

「まぁ、まだうちらがおるし、そんなに気にせんでええやろうけど」


 いや、そう言われると、やっぱり気になってしまう。

 ただ、確かに、ムードメーカーの愛奈がいるから問題はないけど、私のテンションが上がり切らないのも問題だろうな。

 女神的な存在な私がいつまでもローテンションのままだと、チームの士気にも影響が出そうだし。

 とは言いつつも、扇商水泳部にはムードメーカーが多い分、私がローテンションなのは気にならないだろうけど、遊菜と直哉、それ以外にも何人か私のテンションに影響される人もいるだろうから、早めに戻さないと。


「それか、咲ちゃん、ウェア持ってるんやったら泳いできてもええで?正直、マネージャー陣はうちという手が空いてるし」


 それはどうだろう。私はあの過去をいまだに引きずっている。現に、今年のインターハイでの半フリ決勝。

 たった100分の1秒で表彰台を逃した選手がいた。それを見た瞬間、あの記憶が一瞬で蘇った。

 さすがに、私としても、この記憶によるダメージがなくなるまでは選手復帰は無理だと思っているし、たぶん、直哉と遊菜がこういうのになってしまう限り、私の精神的外傷(トラウマ)は思い返されることだろう。なんて思いつつ、夏の間に少しばかり泳いでいたこともあり、久しぶりに泳いでみたくなった。


「そうするわ。気分転換してくる」


 それだけ言うと、私も練習用のウェアを持って階下のダイビングプールに向かう。

 泳ぐつもりは何ひとつなかったけど、それでも、忘れた人用にFINAマークをつけた練習用のウェアを持って来ていたけど、まさか、自分が着て泳ぐことになるとは思わなかったし、久しぶりの大阪プールで泳ぐことになるとは思わなかった。

 それでも、この感覚、久しぶりだな。なんて思いつつ、更衣室で着替え、場内に足を踏み入れる。

 プールに降りることはインターハイのとき、公式アップのとき降りていたこともあって、はじめてっていうわけじゃないけど、今までピリついた空気の中レースを観戦していたこともあり、これだけ緩んだ空気の中プールに降りるって言うのが、私としては、ものすごく違和感がある。

 やっぱり、それでもピリついた空気はなく、私としても、変な気を起こさないで泳げたことにちょっとした安ど感を覚える。

 これが本当に楽だなぁ。なんて思いながら、軽い力でフリーを泳いで、ワンウェイ泳いでみる。

 これだけでも全く違った。久しぶりに泳いだものの、人が泳いだ後ろを泳いでいくような形で、水流に身を任す。

 多少ばかりは、軽い力で泳げるし、あまり疲れないし、扇商のプールで泳ぐよりある程度早くなったように感じる。

 まぁ、選手じゃないから、ゆったりと泳ぐつもりだし、私も気分転換になる。

 まぁ、ダイビングプールも競泳のアッププール代わりというのと、飛込競技の練習と半分ずつシェアして使っていることもあり、長さ25メートル、深さ5メートルの深いプールになっている。

 もちろん、この深さを体験することはめったにない。深く潜って遊んでいる他校の選手もいるくらい。

 まぁ、私はそんなことしないけどね。


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