Episode 140 Naoya side 楽しめたらええやろ
こうやってみんなでわいわいとレースができんの、めっちゃ久しぶりやな。
たったワンウェイやったけど、チームの誰かとリレーをやんのはええもんや。まぁ、成東さんは、緊張でどれどころやなかったかもしれんけど。
でも、やっぱあれやな。インターハイも楽しかったけど、こっちもこっちで違った楽しさはあるよな。
それでも、ここで手を抜くわけには行かんのも事実。
楽しみたいのであれば、どんな規模のレースだとしても、全力で行くのが俺の性。
正直なことを言うと、リレーもトップが取れたら最高やってんけど、さすがにそれはこのチームの実力じゃ難しいのはわかってた。やからっていうて、やる気がなくなるわけやなくて、チームを盛り上げるために全力を尽くせたらええと思ってる。
正直、無理やって思うんやなくて、俺としては、みんな楽しくベストが出せたらええと思ってるくらい。それでええ夏の思い出ができるんやったらそれでええやん?って思えへん?って言うても、やってへん人からしたらわからんか。
でも、最初こそ、俺だけが楽しめたらええわと思ってたところあ有るけど、それだけやと、チームとの開きが出そうやったから、そういうことはせんと、チームで楽しめて、俺が引っ張っていけるような土台作りができたらって思ってる。
もちろん、技術的なことは美咲たちマネージャー陣に任せているところはあるものの、俺からも少し話したりはする。
それも、インターハイが終わって少し落ち着いてきてからやけど。
それでも、いろいろ全国の泳ぎを見てきたことには変わりなくて、専門的なこともマネージャー陣と一緒に教えたりしてる。
自分が楽しみたいからってだけでインターハイに行ったわけとちゃうしな。いろんなことを吸収できてよかったって思ってるくらい。
それが活きるとは思ってへんかったけどな。
「ほんまサンキューな、原田。これだけ順位を上げられるとは思ってへんかったわ」
レースが終わり、アッププールに設定されているダイビングプールでクールダウンをしようとしていると、部長から声をかけられた。
「お疲れっす。正直なことを言うたら、もう一個順位上げたかったところっすけどね」
「鶴商より上にこれたらそれだけで十分やわ。去年は、リレー位の差で総合6位に泣いたからな。やけど、ここまで来るとは思えへんかったけど」
「まぁ、鮎川さんも成東さんもグンとタイムを縮めましたもん。これほど来るとはだれも思わないですって」
「せやな。俺ももうちょっと伸びてほしかったけどな」
「大丈夫ですって。個人のレースもいいところまで行きますって」
「それやったらありがたいけどな」
部長はそれだけ言うと、俺を抜かして、先にどぶんとプールに入り、軽い力で泳ぎだす。
そんな姿を見た俺も、部長の後ろを泳ぐようにして、ゆっくりと泳いでいく。
正直、まだまだ乳酸とかは溜まってないから、クールダウンというよりは、身体を冷やさんためのアップって感覚の方が強いと思う。
まぁ、とりあえず、美咲の見立てではリレーが終わってから15分くらいしてから半フリのレースになるんとちゃうかなって話やった。
そう考えたら、クールダウンしてゆっくりする時間はないけど、身体を冷やすことはできひんな。なんて思ったこともあり、いろいろ考えた結果、ダッシュはできひんやろうけど、ゆったり泳いでフォームを確認してからジャージを着て、身体を冷やさんようにしようかって考えた。
そんなことを思いながら、男子の2個メ、女子の1ブレが進んだタイミングでダイビングプールから上がり、水滴とふき取ってからジャージを着る。
正直、まだ乾ききってへんウェアが違和感やけど、それはまぁ、今日に関してはしゃあないかなって思ってる。とはいえ、半日で8レースを泳ぐことになるとは思ってへんかった。
やからってわけとちゃうけど身体がどこまで持つかってところ。
まぁ、あわよくば、インターハイの覇者の威厳を見せて、個人レースの全部で大会記録を更新で着たら最高やな。なんて思ったり。
ただ、ベストタイムを見ると、確実に大会記録を更新できるんやろうな。ちょっと緊張感がないところが怖いところやけど、まぁ、優勝してチームに貢献できたらええわって感じ。
さて。ちょっと泳いだことやし、招集行って、レースに備えるか。
そう思い、サブプールからゆっくり上がり、スイムタオルで身体についた水分をふき取り、招集の列に入る。
「男子50メートル自由形の招集を始めます」
そんな声が聞こえ、俺も召集の列に入る。
なんていうか、思った以上に小さい大会で、近畿大会やインターハイみたいに遅い順にレースが組まれているんじゃなくて、速いもん順に並んでるようで、俺もセンターレーンに組み込まれている。
まぁ、それはしゃあないけどな。なんて思いながら、ゴーグルをつけなおす。
シリコンキャップに関しては、前の組がレースに向かったタイミングで被って、レースに集中し始める。
さすがに周りは、インターハイの時のような緊張感はない。とはいえ、半フリで近畿大会に進んだ選手が今津にも毛馬にもおるから、意外と気は抜かれへんけどな。
まぁ、美咲が言うには、5秒台出せたら十分だろうって話やったけど、まぁ、ベストの2秒5は出るわけないと思ってるものの、3秒台が出せたら十分やろうと思ってる。
準備は怠らんようにしてたものの、まぁ、ちょっとくらいなら遊んでもええかな。なんて思ったり。
予選は様子見るためにちょっと余力を残しながら流してみるか?まぁ、それはラスト5メートルくらいだけでええかな。
たぶん、トップに出られるやろうけど、それは様子を見ながらでええか。




