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Episode 13 地区大会に向かいます

 2週間という日はあっという間に流れて行って、地区予選の日。扇原商業からは、とりあえず選手全員が出場する。

 というのも、制限記録を切れていない人もいるけど、エントリーに公式なタイムは必要なく、自己申告でいいらしいから。扇原商業の選手たちは、記録会という意味合いで出場する。

 人一倍準備に時間がかかる私は、いつも起きる時間は5時半。

 なにより時間がかかってしまうのは、人一倍癖の強い髪の毛を飾り気のないストレートに戻すから。

 もう、最近では、短くしてもこんなに外はねするんだったから、一層のこと肩甲骨あたりまで伸ばしてやろうかと思って伸ばしているんだけど。

 顔を洗って、ある程度髪をまとめて、後ろで縛る。

 いつもならある程度戻したら何もしないんだけど、屋内で凄い湿気と言われたらくせっけが暴発するに決まっている。それなら、先に対策って言うわけじゃないけど、髪をまとめる。

 それが終わると、ゆっくりとご飯を食べて、制服に着替えて家を出る。


『あっ』


 声が重なったのは、お隣で同じタイミングで出てきた直哉。


「なに?」


 先に沈黙を破ったのは私。なんとなく先に行かくする。まぁ、いつものことなんだけど。


「そっちこそなんやねん」


 そういう直哉を無視して自転車にまたがり走り出す。

 自転車をこぐ足は軽い。踏み込むたびにスピードが出る。しかも、河川敷を走るから障害物もなく、走りやすく、スピードがなおさら出やすい。

 そんな道をさっそうと走り、レース会場になっている府立海宮高校を目指す。

 ここは府立高校で何校かしかない体育科が設置されている公立高校。聞いた話でしかないけど、競泳でインターハイに進むことがあるんだって。でも、たいした順位は取れていないらしい。まぁ、インターハイに行けるだけでもすごいことなんだけど……。

 そんな高校に、昔から振り分けられている地区内の高校が集まり、次の大会、中央大会に進むためのレースが行われる。

「自転車はこっちに手前から順においてくださ~い」

 そんな感じで、海宮高校の生徒の誘導される。

 自転車を置いて、プールが見えたから、そっちの方に異動しようとすると、ちょうど部長と鉢合わせた。


「おはようさん、2人とも早いなぁ。気ぃ張りすぎなんとちゃうか?」

「そういうキャプテンも早いじゃないっすか」

「俺は、扇商の人らが迷わんように先に来てるだけや。別に原田みたいに泳ぎたいわけとちゃうからな」


 ちょっとあきれた顔で私たちを見る部長。その顔は「お前らだけとちゃうけどな」と言わんばかりの顔だった。


「キャプテン、照れ隠しはやめましょうよ。見ててみっともないっすよ」

「うるせぇな。別にええねん。今年で最後やし」

「やからこそっすよ。最後くらい中央行きましょうよ。1レースでも多く出たら得じゃないっすか。それに、今年は美咲もいるんっすよ?美咲が作ってたメニューでだいぶ早くなったんとちゃいます?」

「やと信じてるわ。ほんで、選手らの控室やけど、正面の教室の1角をすでに占領してるから、楽にしてくれや」


 そういうと部長は軽く伸びて、自分が言った教室に入っていく。それを見て私もついていく。

 教室は、いたって普通の教室。新しくもなく、古くもなく。まぁ、扇商と同じ感じかな。それに、普段はきれいに並んでいるであろう、机やいすは、教室の4分の1に固められ、積み上げられている。それが出入口とは反対側の広報に。

 その前には、中学では意外と強かった私立の神埼女学院。ただ、高校になると、そこまで強くはないみたいで、地区大会を突破して、ほとんどは、その上の中央大会で壁にぶつかって終わりみたい。らしい。

 なぜ『らしい』とつけたのかというと、去年のプログラムしか見ていないから。

 私たちは、教室の後方、出入り口に近いところから4分の1ほどを占領している。

 あと、何校来るかわからないけど、たぶん、大丈夫なはず。でも、こういうのは、もちろん、譲り合いって言うのもあるけど、早い者勝ちなところもあるしね。


「よっしゃ。ほんならいこか」


 荷物を置いた直哉が一言だけ呟くように言い、スイム用品を一式持ってプールに向かった。


「あっ、せや。学校受付終わらせてプログラム持ってくるわ。中元さんがなんか言うてたけど、やることあるんやろ?」


 そういうと、部長はどこかに行って、控室に1人残された私。何もする当てがなくボーっと教室の中を眺める。とはいうものの、部長はすぐに戻ってきた。


「なんか知らんけど2冊もらったから、マネージャーで1冊使って。たぶん、俺らは1冊でええと思うし」


 それだったら、ありがたく使わせてもらおうか。

 部長からプログラムを受け取ると、1枚ずつめくって眺める。誰か知っている人がいないか見たかったから。ただ、誰1人いなかった。

 それがわかれば、マネージャーっぽいことをしていくか。

 マネージャーっぽいことといえば、選手たちのラップタイムを手書きで書きとめるスプリットブックというものがある。それをレース中に書くのはタイムだけだから、それ以外を全部埋めていくか。

 それと合わせてマーカーペンも持ってきているし、ついでに選手が出る種目をマーカーで印をつけていこうか。

 ただね、1人2種目プラスリレー。トータルで40種目行かないくらい。全種目に制限の2人が入ってくるとなると、とんでもない数を書かないといけなくなるから、大変だったかもね。

 とりあえず、半フリと1フリに出る直哉は、両種目とも1組センター。遊菜は、ともに6レーンでレースが行われるうちの1組4レーン。やっぱり、地区大会だと相当速いほうか。地区が変わればどうなるのかわからないけど。


「あっ、咲ちゃん、おはよー」


 レース前なのに“異常”がつくほどまでに疲れている遊菜。どうしたんだろう?


「どないしたん?めっちゃ疲れた顔して」

「朝から迷子になった。ほんまやったらもう泳いでるはずやのに」

「大変やったね。もう直哉は泳ぎに行ってるから、一緒に行っといで。9時まで泳げるらしいし」

「オーライ、いってきまーす」


 いつもなら、面白いくらいすぐにテンションが上がる遊菜なんだけど、今日はなかなか上がらないみたい。

 まっ、泳いでいるうちにいつもの遊菜に戻るだろうな。そんなことを思いながら、さっきの続きをしながら、ほかの選手・マネージャーが来るのを待った。


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