Episode 135 スーパーマネージャー?部活の女神?それともただのおまじない?
……いた。相変わらず、派手な姿で泳いでるな。そんなことを思いつつ、ピンクのスイムキャップ、水色のスイムウェアを着た直哉に近づく。
「相変わらず、派手な姿で泳いでること」
「おぅ?あぁ、美咲か。まぁええやろ。正直、アップのときは泳げたらええって思ってるくらいやし。それに、俺の姿が見えたほうが扇商の選手らも安心するやろ。実際に、俺の後ろ、成東先輩と鮎川先輩と部長が泳いでるし、さらにその後ろにギータもおるし」
そう言われて、ちらっと後ろを見ると、確かに、同じような泳ぎをした4人が見えた。
あの泳ぎ方は、確かに、扇商の選手だ。で、たぶん、スピード順になっているんだろうな。なんて思いながら、扇商水泳部の選手がアップする姿を見ていた。
「なるほどな。意外とあんたが先導してるわけや。遊菜は5レーンでうちの作ったメニューやってるけど、あんたはどうする?」
「いや、ええわ。いつものメニューで頭の中に入ってるし。やることどうせ変わらんやろ?」
「まぁな。ちょっと本数減らしただけ。それでも、遊菜はいつも直哉のあとついてるだけやから、メニューわからんかったんやろうな」
「まぁ、いつもちゃうことやってること思ってたんかもしれんな」
「そうかもな。正直、いつもサインだけやったし、俺から話聞いてただけやから、あんまり気にしてへんかったんやろうな」
「そうか。いつも遊菜は、度なしのゴーグルしながら泳いでたもんな。そりゃ、見えへんはずやもんな。まぁ、まさか、近畿大会もインターハイもいきなり度なしのゴーグルに変えるとは思ってへんかったもん。とりあえず、話しは変わるけど、遊菜から話は聞いてるけど、無理しなや」
「話?……あぁ、国体行かずに新人戦に出るって話のことか。まぁ、俺もいろいろ考えてるわけやからな。あいつがどう考えてるんかわからんけど、俺は俺が楽しめたらそれでええねん」
そういうことか。でも、国体で強い選手たちともっと楽しむと思っていたから、正直ビックリしたところではあるけど、まぁ、それもこいつらしさというか、いろいろ自我を持っているんだな。と思った瞬間でもあった。
「そう。そう決めたんやったら、うちからはなんも言わんけど。もっと高いところで楽しんでもええんとちゃうん?とは思うけどな」
「ええねん。インターハイで優勝するって決めてたし、正直、次の目標がないからな。楽しむだけ楽しんだらええねん。今のうちに」
何て言うか、入学したての頃は、1年からインターハイを狙うって言ったり、インターハイが終われば、次の目標がないって言ったり。なんていうか、自由気ままに過ごしているな。こいつ。
そう思うのに時間はいらないかった。
でも、楽しめているなら、それでいいやと思ったよね。
「とりあえず、なんかあったら、客席の一番前におるから言うてな」
「おう、了解。まぁ、たぶん、今日は戻ることないやろうけど」
「やと思うわ。タイムスケジュール見てても。とりあえず、楽しんで来ぃや」
私がそう言って拳を直哉の方に向けると、「いつも通りや」と言って拳を当て返してきた。
いつもの光景に、調子はいいだろうと思いながら、成東先輩や鮎川先輩、部長も同じように拳を向けてきて、それに合わせて私も拳を軽く当て返す。
何の行事だ?と思いながらも、調子が上がるおまじないだと直哉が嘘を吹き込んだらしく、女神的な存在として扱われているようやね。とギータが教えてくれた。
まさか、そんな扱いをされているとは思っていなかった私だけど、それはそれで悪くないかなと思う反面、女神と言うなら、容姿で言ってしまうけど、愛那なんじゃないの?と思ってしまった。
でも、確かに、私としても、スーパーマネージャーともてはやされたり、いろんな冷やかしがあるよりは、縁起のいい女神の方がいいって思ってしまったかもね。
そんなことを思いつつ、客席に戻る。
まぁ、その道中、スーパーマネージャーという異名は、しっかりとほかの学校の生徒にも伝わっているようで、私をちらちらと見てくる視線を感じていた。
たぶん、それは、私だけじゃないだろうけど、扇商水泳部のクラブTシャツを着ているからだろうと思う。
「人気者は辛いねぇ~」




