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Episode 132 視線は次の大会へ

 直哉と遊菜がインターハイで2冠を達成してから早くも2週間が過ぎ、水泳部の中では、まだざわついている中、練習の合間に直哉も遊菜もインターハイのお土産話をしながらも、練習のときは、みんなの気を引き締めるように自らが姿勢を見せ、次の大会へと視線を据えていた。

 とはいっても、次の大会は、ものすごく小さな大会だから、直哉と遊菜は気負うことはないんだろうけど、それでも、入賞を目指す3年生が多いことから、みんなやる気を見せている。

 これが本当にいい効果を見せているのかわからないけど、中でも私がメニューの面で頼られることがものすごく増えた。

 まぁ、私のメニューでほとんどの選手が実際に速くなっているのも事実だから、私のメニューをすれば、必ずタイムが伸びる。なんていう迷信もできている。

 みんなが努力するから、タイムが伸びているんだけどね……。

 そんなことを思いながら、直哉と遊菜の1コース、福浦先輩と鮎川先輩、成東先輩が入る2レーンにメニュー指示を出す。


「久々にやっていきましょうか。スイムでハーフエイトワン、ベスプラピラミッドでパーセンテージは30、20,10、20、30、20、10、10の順番で」

「出たで、そのきっついやつ。久々にやるから、身体がうめき声上げるで」

「しかも、原田くんも大神ちゃんもインハイの大会記録とか、高校記録とか持ってるから、ベスプラはきついぞ~」


 私がメニューを伝えると、直哉が天を仰ぐように言うと、福浦先輩が煽るように言ってきた。その姿を見て、アハハと笑う成東先輩。まだ自分たちはベストタイムが遅いからと油断しているところがあるんだろう。

 そんな姿を見ていると、私もちょっといたずらをしたくなる。


「もちろん、スタミナ重視で、オールフライで行きましょう」

「ば、馬鹿じゃねぇの!?」


 思った以上に速くかみついてきたのは直哉で、屋上に響き渡る声で私に抗議してきた。

 そこに、福浦先輩や成東先輩も笑いが止まり、「えっ!?」という表情で私を見ていた。


「冗談です。みんなの反応が見たくてちょっと言ってみました。とりあえず、オールチョイスです」

「あ~、びっくりした。これでほんまにオールフライやったらゲー吐いてんで」


 あまりにも現実的じゃないメニューじゃないことに安堵したのか、胸の撫で下ろす5人。それを見ていて、少しおかしく感じてしまったのはナイショの話ということで。


「とりあえず、上から行きま~す」


 そんな冗談はさておいて、私は頭を切り替えて、マネージャーモードに入る。

 ちょうどタイマーは60秒を回ったところでキリが悪い。

 30秒を意味する「下から」言ってもよかったけど、まぁまぁキツイメニューだって言うことはわかっているから、あえて、ブレイクタイムを少し長くとって、メニューに備えさせる。

 このメニューでみんなボロボロに疲れるのは目に見えているしね。

 だから、このあとはちゃんとフォームチェックを入れて、乱れたフォームの修正と疲れをとるような形でメニューを組んでいる。

 それが終われば、ドリルメニューを作っているから、それもこなしてもらって、普通に泳いで、ダッシュして終わりかなって感じ。

 正直、ここまで来ているなら、あとは部員のタイムをもう一回測って、どれだけ伸びたか実感してほしいところ。

 ダッシュメニューを入れていることもあるから、さすがにタイマーを見て、ある程度のタイムは把握してくれているんだろうけど、改めて本気で測ってみてもいいかもね。なんて思ったり。

 あとで、部長と沙雪先輩に相談してみようか。夏休みだから、いつでも時間はとれるだろうけど、さすがに「いきなり今日測るで!」とはなかなか言えない。

 それか、レース当日に実感してもらおうか。……うん。それがいい。変な時期に半日潰すくらいなら、レース当日にどれだけ伸びたか感じてもらうほうがいい。

 そのほうが喜びも倍増するし、レース結果に満足してくれるだろう。直哉以外は……。

 そんなことを思いながら、各コースで泳ぐ選手の様子を見て、たまに、気になったことがあれば、各コースを見るマネージャーと変わって、選手たちのフォームについてアドバイスをしていった。

 そして、アドバイスが終わって、もともといた直哉たちのコースのマネジメントに戻ると、ちょっとげっそりした直哉たち5人がいた。


「ベスプラ、えぐいわ。ハーフやから、10パーのとき、25で戻ってこなあかんねんから。しかもそれが2セットやろ?バケモンかと思うたわ」


 まぁ、そうなるか。なんて思ったときには、私もちょっとやりすぎたかな。って思ったけど、これがいい練習になることはわかっているから、入れている。

 たぶん、そろそろシーズンとしては終わるだろうけど、オフシーズンのときも、週に2回は入れると思う。それくらいの負荷をかけてもいいだろう。とは思っている。


「まぁ、いろいろ考えがある中での、このメニューやからね。これで伸びるんやったら、儲けもんやろ」

「まぁな。普段から強豪校はもっとハードな練習を積んでるのはわかってるけど、これだけやるってのはさすがにしんどいわ」


 私もいろいろ考えているし、宮武選手の学校のメニューを参考にしているところもある。

 さすが強豪校だな。って思うところもあるし、そういうやり方もあったか。と勉強になるほど。

 さすがに、全部を強豪校のメニューでやることはないと思っているし、それは、直哉と遊菜だけでいいとも思っている。まぁ、多少は、ほかの部員たちに目線を合わせて組み込んだりしている。


「シーズン中はこれくらいのメニューを続けるつもりやからね。まぁ、シーズンオフも週に何回か入れるつもりやし」

「まぁ、週に何回か入れるんやったらええわ。それに、美咲のおかげでここまで来れたんやから、これからもついていくしか、俺は伸びひんと思ってるし」

「せやね。伊藤ちゃんのおかげで、うちも中央大会に出られたわけやし、こんなに伸びるとは思ってへんかったし」


 いろいろと5人から感想を聞きながらも、少し恥ずかしくなったりするけど、あらためて、続けてよかったな。って思っちゃう。

 それでも気は変わらないのかよって言われたけど、キツいメニューとクーリングメニューを交互に入れながら、結構なメニューをこなした。


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