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Episode 119 Misaki side 驚愕の2人

 また2人がやったか。まぁ、やってくれるとは思ってた。

 ただ、さらに2人ともヒートトップでフィニッシュするとは思ってなかった。

 こりゃ、昨日のタイムもたまたまじゃなくて、実力って考えるほうがいいのかもしれないね。そんなことを考えながら、椅子に深く腰掛ける。


 とりあえず、これで2人とも決勝進出は決めてくれた。ちょっとほっとしている私がいるのも事実。

 あとは、決勝でどこまでタイムを伸ばしてくるかってところだけど、私としても、決勝の雰囲気を楽しんでくれたらそれでいいと思っている。

 さて。とりあえず、2人ともクールダウンとしてサブプールで泳いでいるだろうから、私もそっちに向かって、2人のサポートをするか。

 そんなことを考えながら、自分の荷物と、2人の荷物を持って階段を降りていく。

 そして、荷物を貸しロッカーに入れて、必要なものだけ持って、サブプールに入り、直哉と遊菜の姿を探す。

 どこにいるだろうな。なんて思いながらサブプールの中をぐるっと見渡していると、いつも通りというべきか、きれいなフォームで泳いでいる直哉を見つけた。

 ただ、遊菜の姿がどこにいるかわからない。まぁ、とりあえず、直哉は見つけたからそれでいいや。


「お疲れさん。またバケモンみたいなタイム出して。調子よさそうやな」

「うん?あぁ。美咲か。おかげさまでな。ただ、ここまでとんでもないタイムが出るとは思ってへんかったから、ちょっと俺もビビってるけどな」


 どうやら、自分でもびっくりしているみたいね。とりあえず、トップ通過なのは変わらないから、私としては、招集場所でまた見られる目が変わるんとちゃうかなって思う。


「とりあえず、2人とも突破してくれたから、一安心って思ってるわ。ただ、朝より見られる視線は変わるやろうな」

「言われんでもわかってるつもりや。すでに見られる目は変わってるって気づいてるから。まぁ、いつも通り楽しめたらそれでええと思ってるし」


 相変わらずの強心臓で凄いなって思う。私が選手の立場なら、すでに飲み込まれていると思っているのに。


「とりあえず、ダウン用のメニューはいる?」

「あぁ……せやな。一応もらっとくわ。やっとかんとちょっと不安やわ」


 どの口がそんなことを言うんだか。なんて思いつつ、一応、直哉の要望ってこともあり、私は直哉にダウン用のメニューを手渡し、遊菜の姿を探す。


「遊菜は?一緒とちゃうん?」

「大神か?大神はどっかでクラゲしてるんとちゃうか?俺のすぐ後ろにはおったと思うけど」


 直哉にそう言われ、私は直哉がターン側を見たのにつられて、私もターン側を見る。

 すると、かなりリラックスして仰向けにイカ泳ぎをしている遊菜がいた。

 そんな姿を見ていると、これが決勝にトップで通過した選手の姿とは思えないよね。

 だけど、こんな場所でもリラックスできてしまうのが遊菜なんだって思ってしまう。


「あれだけのんびりできる遊菜ってすごいな」

「せやな。やけど招集場所では緊張して、終始落ち着かん様子やったけど」


 それはなんとなく光景が脳裏に浮かんでくる。でも、そこからの切り替えはすごい。

 これだけのんびりしている遊菜を見ると、本当に私たちは全国大会にいるのかって思ってしまうよね。

 まぁ、ゆったりしている時間も必要だよね。と思いつつ、イカ泳ぎでユラユラ戻ってくる遊菜の姿を見ていた。


「おっ、咲ちゃん、お疲れ~」


 イカ泳ぎをやめてサブプールの由佳に立った優奈は私の姿に気づいて、声をかけてきた。


「うん。お疲れ。さすがにテンション高かったんか、こっちもトップ通過やな」

「ほえ~。こっちも予選通過したんや。タイムなんぼやったん?」

「タイム?えっとな。56秒43で大会記録には届いてへんけど、まぁ、トップ通過やからええんちゃう」

「トップ通過か。またえらい目に会いそうやな。まぁ、やるだけやってみて、楽しめたらええかな。とりあえず、ダウンしたいから、メニューちょーだい」


 遊菜は何も気にしていないようで、本当に「楽しめたらそれでいい」って思っているよう。


「メニューは直哉に渡してるよ。直哉に聞いて」

「オーライ」


 それだけ言うと、遊菜は、直哉の横に行き、一緒にメニューを見ている。たぶん、ゴーグルをしたままってことは、度入りのゴーグルを使っているんだろうな。なんて思いつつ、私は、サイドに移動して、2人のダウンの様子を一緒に歩きながら見ていく。


 ……うん。今のところはなにもおかしいところはないね。レースで見たままのフォームでゆったりと泳いでいる。

 ダウンでもこれだけきれいなフォームで泳いでいたなら、大丈夫かな。

 あとは、ゆっくりと泳がせておいて、乳酸を流させて、決勝に臨ませるか。


 ある程度メニューを見届けて、飛びこませるメニューを見て、私も客席に戻り、決勝競技を観戦しましょうか。


「ハーフの飛びこみダッシュか。これやってから、またゆったり泳いで、飯食ってからの決勝レースか。楽しくなりそうやな」


 そんな声がちらっとふたりの間から聞こえて、心の底から楽しんでいるんだって思う。


「ほんまに楽しんでるだけやねんな。まぁ、あんたは昔からなんやろうけどさ」

「そうしとかんと、俺もテンション上がってけぇへんし、ガチガチに緊張して、力入ってるとええタイムなんて出るわけないしな」


 まぁ、それもそうか。直哉はずっとそんな話をしているわけだしね。

 そんなことを思いつつ、直哉と遊菜が泳ぐ姿を見ていた。


「ふぅ~。ほんま、身体が軽いわ。美咲のメニューをやったあとは」

「せやね。この調子やったら決勝は大会記録も出せそうやで」


 このふたりの姿を見ていると、やっぱり楽しそうだ。沙良に言えば、大会記録は目前にしているものの、直哉に関しては、あまり気にしていない様子。

 ここがこのふたりの違いだって言っていいのかな。

 まぁ、それがふたりらしさなんだけどね。


「ほな、軽く飯食って、決勝に備えますか」


 直哉はそういうと、「ラスト、ダウン200やな」とだけ言って、ゆっくりと泳ぎだした。

 それを合図にして、私ももう一度プールサイドをふたりの泳ぐスピードに合わせてゆっくりと歩き、私も次のレースに向けて準備をする。

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