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ハルは水花火  作者: 田作たづさ
ハルは水花火
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「綺麗……!!」


 ピンク色の花びらがひらひらと落ちてくる。花織さんの行きたい所とは、県内でも有名な桜の名所だった。大きな川の両端に、桜の木が沢山生えている場所だ。現在はすっかり暗くなったが、満開の桜はライトアップされており、幻想的な雰囲気である。


「花織さん! 私ここ初めて来たんです! あ! 水に桜の花びらが沢山浮かんでますよ! めっちゃ綺麗じゃないですか!」

「灯さんに喜んでもらえて良かったです」


 花織さんは微笑みながら言った。


 いけない! ついついはしゃいでしまった! ここには花織さんへのお詫びとして来たのに……。


「いやその……何か飲み物でも買って来ましょうか?」

「今は要らないです。ありがとうございます」

「そうですか?それじゃあ……」


 あれ……待てよ?


 私……そういえば……。


「そ……そういえば、おばあちゃんに恋人だって紹介してすみませんでした! おばあちゃん元気だったし、恋人だって言う必要なかったですよね?! すみません!!」


 私は土下座をしようと思ったが、踏みとどまって頭だけ下げた。これなら周りに笑われまい!


「あぁ、そのことですが、僕達本当に付き合いませんか?」

「え……?」


 私はパッと顔を上げた。思考が停止する。花織さんの言ってる意味が理解できない。


「今日僕のことを恋人だと紹介してくれて、とても嬉しかったんです。だって僕、灯さんのことが、ずっと前から好きだから」

「本当ですか?」

「本当です」


 花織さんが私を好きだと言う。これは夢だろうか。


「いやだって花織さんはみんなに優しいから! その、私に特別な感情は無いのかと……」


 花織さんは笑った。眉を八の字にして、困ったように、悲しそうに。


「僕、灯さんだけには特別優しいですよ。気づきませんでしたか?」


 全然気づいてなかった……。


 ずっと手の届かない存在だと諦めていた花織さんが、私を好き……?


「改めて言います。灯さん、僕と付き合ってくれませんか」


 花織さんは真剣な表情で言った。


 風が吹いて桜の花びらが舞う。花織さんと桜。あまりにも美しく幻想的で、これはやっぱり夢なのかもしれないと思う。


 しかし、色々ぐるぐる考えたって、私の答えは既に決まっているのだ。彼に釣り合う自信は全くないけれど。


 もしこれが美しい夢でも構わない。


「あの……私で良ければ……ぜひ」


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