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ハルは水花火  作者: 田作たづさ
ハルは水花火
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 土曜日の夕暮れ時、私達は病院へと向かって歩いていた。


 まずは受付へ行こうとして、病院前のベンチに座っている祖母を発見する。祖母は漫画を読んでいた。最近流行ってる恋愛漫画だ。


 あれ……? 思ってたより元気……?


「おばあちゃん……?」

「灯ちゃん! わざわざお見舞い来てくれたの?!」

「う、うん」


 祖母は私の手をぎゅっと握ってブンブン上下に振った。

 

 あれ? あれ?


「あと数日で退院できるって!」

「私、もっと、その……体調悪いのかと思ってた。寝たきりとか想像してたんだけど」

「やっだー! 重体とか危篤とか思ってたの? もしかして病状を百合子に聞きにくかったとか?」


 全くその通りだった。俯いて黙っていると、祖母は大口を開けて笑った。


「やっぱそうなんでしょ! あなたたち気が合わないもんね〜! ウケる!」

「まあ元気そうでなにより」


 ……じゃない!! 元気なのは嬉しいけど、花織さんどうしよう。

 

 花織さんを見ると困ったような顔をしてる。そりゃそうだ。


「で、そちらの方は?」


 やっぱり祖母も花織さんのことが気になったようだ。


 どうしようどうしよう頭が回らない……。何と言うのが正解だ? 


 と、とりあえず予定通り恋人だって紹介するか。


「あ……あのね。こちらお付き合いしてる花織さんです……」


 彼の方をちらっと見る。彼は一瞬驚いたように目を見開いたが、すぐにいつもの調子に戻った。


「初めまして。花織です。灯さんとは同じ会社で働いています」

「えーーー!!! 恋人ですってーーー!!!」


 祖母は叫び飛び上がった。そしてクルクルと回っている。本当に元気だな。


 でもなんで祖母はこんな所にいるんだ?


「寿美子さん! やっと見つけた! 病室で安静にって何回言えば分かるんですか!」


 看護師さんが息を切らしながら慌てた様子で走って来た。


「えー、だって寝てるだけなんて暇だもん! たまには春風に当たりたかったし!」


 え? 病室抜け出したの? しかも常習犯じゃん。看護師さん、本当にごめんなさい。


「もう! 病室戻りますよ!」

「灯ちゃんまたね!!」


 祖母は大きく手を振りながら、病院の中へと連行されていった。

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