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ダンジョン合宿②

ダンジョンでモンスターに臆した男。


これが昨日の俺の成果だ。

木田さんに守られ、励まされそして甘えた俺は木田さんが壁にかけた盾の裏で身を潜めるように休んでいた。


どれだけ休んでいたのだろ?

窓がないダンジョン内、外の様子がわからない。


木田さんは、少し離れた場所で身体を動かしている。

準備運動だろう。


「ハルト、あれ何?」


木田さんは地面を指差しながら俺を呼んだ。


再ポップ…


先生の授業を思い出す。

ダンジョンモンスターは一定の時間が経過すると同じ場所に再び出現すると。万が一、その戦いが大ダメージを負う戦いなら前進より後退に徹するように心掛けなさいと教えられた。


前進先で強敵に遭遇し退却を選択した場合。高確率で前回倒したモンスターと再戦をしなければならない。


その戦いがギリギリの戦いであれば手負い時は更に苦しくなる。


自分達の力を過信してはいけない。


木田さんが指差している地面が赤く輝く。

そして頭蓋骨の頭頂部が見えてきた。


間違いない。再ポップだ。


「ハルト。再ポップです!」


どうやら木田さんも思い出したようだ。

急いで壁にかけた盾を取りに行き、再ポップ中の前で盾を構える。


「また叩くです!」


昨日のスケルトンの目の不気味な光が見えた。

嫌いだ。この不気味な光が怖い。


ゲームでは良くあること。


(モンスターはまだ気がついていない。)

(背後をとった。)


言葉は色々あれど結局は不意打ちだ。


「こっちを見るな!」


咄嗟に出た行動だ。

俺はおそらく奴の姿を見たくなかったんだ。

赤く輝く円陣から徐々に姿を現すスケルトン。

奴が上半身まで姿を見せた瞬間、俺はスキル

【ローキック】を発動していた。


誰かの骨を折った事は勿論ない。普段感じる事がない感触が足を通して全身に伝わってくる。


俺のローキックはスケルトンの右の肩口から左脇腹へと軌道を描きスケルトンの上半身を砕いた。


軌道上にあったであろうスケルトンのコアも砕けてしまった。


全貌を現す事なく消えていくスケルトン。彼にとって俺はただの卑怯者だったであろう。


「ハルト。凄い!」


初めてモンスターを倒した。

不意打ちだし、計画性もない咄嗟の反応。でも昨日抱いた恐怖には勝てたんだ。


人は自ら少しだけ前に進んだだけで「自信」を得る事が有るのだろか?


俺は「有る」側の人間のようだ。


「木田さん。昨日はごめん。俺はもう大丈夫たから先に進もう。」


木田さんは笑顔で盾を振り回していた。

「ハルトは、わたしの後輩!」

昨日も言っていたが、見た目は木田さんが妹のようだ。


再びダンジョン合宿を再開した俺達。

俺はもう木田さんの後ろを歩いてはいない。対等に横並びだ。


最初の広間から更に奥。通路順に進んでいく。


「ハルト…わたしパーティー名を思いつきました!」


横並びの木田さんは立ち止まり下から覗き込むように俺を見る。 


何故か緊張してしまう。


【先輩と後輩】


何だよそれ?と思ったが、俺は「いいと思う」と返答した。


それを聞いた木田さんは笑顔。そして「わたしが先輩」と言いながら再び前進した。


「今日の目標は【セーブポイント】まで行くことです!」


先輩の指示に従うのが【先輩と後輩】のルールだと後付されてしまった。


別に構わないが木田さんの先輩推しが、妙に愛おしい。


セーブポイント…

先生の授業内容では、各ダンジョンの各階層に必ずある

一種の「休憩所」だ。モンスターの出現も侵入もない部屋。おそらく、ダンジョン側が準備した部屋だろうが、その仕組みを知った人間達は実に都合良く部屋の内装を改造していったのだそうだ。


寝具にお風呂…各場所でバラツキはあるがひと通りの生活基盤は補償された部屋。


確かに行かない理由はない。


通路を抜けた先にまた最初に出た広間と同じような場所に抜けた。


(またいた!)


広間の中央付近でぎこちなく動いているスケルトン。

しかも今回は2体だ。


奴らには意思の疎通が有るのだろうか?

互いに噛み合わない行動だが俺達に気付いたあとの敵意は実に連動的で殺意がある構えだ。


咄嗟に盾を構える木田さん。

先輩らしく指示をとばす。

「ハルトはわたしの後ろ!盾で突進。ハルト横から出て1体にキック!」


初連携。


木田さんは指揮官としての才能があるのでは?

瞬時に判断からの指示に俺は驚いた。

でも、指揮官のスキルがあるか不明だし。実際、木田さんは【盾使い】と【回復魔法】だ。


だから今の指示はもともと木田さんが持っている高校生としてのあちら側での才能だろう。


大人しく気弱な感じがするけど、それは見た目の話しで実際はリーダーシップがある女性かもしれない。


(さすが先輩だ。)


俺は木田さんの後ろに構え一緒に突進に加わった。

スケルトン達から見たら、ただ盾が迫ってくるように見えるだろう…


「いまだよ!」


木田さんの合図で俺は左側から盾の外に出た。

スケルトン達はいきなり現れた俺に驚いたかは不明だが反応は遅れたと思う。


最初に俺の視覚に入ったスケルトンへ、俺は躊躇いもなくスキル【ローキック(左)】を発動した。


バキッ!


スケルトンの両足の脛を完全に狩りとった。スケルトンは体制を保てなくなり地べたに這いつくばる。


キキ!


駄目か…


スケルトンの胸のコアは破壊出来ていない。這いつくばるスケルトンへ砕けた骨が戻っていく。


はやいな…


おそらく、普段のスケルトンの行動スピードより骨が戻るスピードのほうが早いだろう。数十秒で再び立ち上がってしまった。


「ハルト!」


相性良いよね木田さんは?


再び立ち上がったスケルトンと構え合う俺。そのスケルトンの後ろで、もう1体のスケルトンが壁にめり込んで

消えていった。


木田さんは盾を振り回して喜びを表現している。

そして俺は2発目の【ローキック(左)】を放つ。

再び地面に這いつくばるスケルトン。大丈夫だ。俺の攻撃力はスケルトンの防御力を上回る!


バキ!

バキ!

バキ!


しつこいぞスケルトン!再生しても勝ち目はないぞ。

何故なら俺のローキックはお前の防御力を上回るからだ!


「ハルトだめ。胸のコアを壊すの!」


木田さんの指示は的確だ。


わかってますよ木田さん…

でもね。スキル【ローキック(左)】は膝上まで足を上げてくれないんだ。


勝てない…どうやっても俺はスケルトンに勝てないよ!


「助けてー木田さ〜〜〜ん!」


……ありがとう。


「ハルトはわたしの後輩!」


木田さんは俺の願いを聞いてくれた。

また壁にめり込んで消えていくスケルトン。


(負けてない。俺の攻撃力はお前の防御力を上回るものだ!)




現在の討伐数


木田さん・スケルトン3体

ハルト・スケルトン1体←不意打ち



          つづく


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