せんたくばさみ
疲れそう。
ぼくは金物れんちゅうとはちがうから
ちょきちょきに切り刻みはしないよと
シャツの一枚をちょこんとつまんでやって
乾くまで いっしょにひなたぼっこしてやる
おひさまにのんびり照らされてるのが仕事だなんて
ずいぶんいいご身分だなってからかわれるけど
強い風にもシャツがハンガーから飛ばされないように
ちょこんとつまみつづけるのも
たいへんなんだぜって言ってみせたら
親指とひとさし指の腹をくっつけて
片目を閉じるしぐさをためしては
まぁ そうかもなって なっとくしてくれたようだけど
そこに ちょっとまったの声が
そんなぼくとシャツをつるしながら
おれはずっと ぶらさがりつづけてるんだぜ
それにくらべたら なんて
ハンガーのやつが いかつい肩をこらせて
こきこきやりたそうにしながら 苦労を語る
そこに またしても ちょっとまったの声が
そんなぼくとシャツとハンガーを
ずらりと たくさんかけながら
おれはずっと まっすぐつっぱりつづけてるんだぜ
それとくらべちゃあ なんて
ものほしざおのやつが すらりとした長身をしならせて
腹筋で屈しているのか 半背筋でそらしているのか
はためにはわかんないけど
ぐぐっとらちからをこめたまま 苦労を語る
そして そんな
ものほしざおと ハンガーと せんたくばさみのぼくは
シャツがちゃんと乾くまで
きょうも 仲良くひなたぼっこをする
それが ぼくとおれたちの楽じゃない仕事
つまみつづけると、親指のつけねのふくらみが痛くなります。