第九十一話 祝杯ですわ!
「やぁ、リア君ににゃあ吉君」
声の主を辿ってみると、直ぐ右側にノットさんがいつものニヤつき顔を浮かべながら立っていた。
「ノットさん!もう来てたんですねですわ」
「私もさっき着いたばかりだよ。‥やはり君たちもこの馬車できたんだね」
見てみると、ノットさんも私たちと同じく、ギラギラと輝いた馬車で来たみたいだった。
「あっやっぱりノットさんもそれで来たんですね‥」
「うん‥。久しぶりに羞恥心というものを覚えたよ。元から注目されるのは苦手って訳じゃないんだけど‥何だかね」
ノットさんの照れ臭そうにする顔は、初めて見たかもしれない。
(新たな表情すら生み出してくれるとか‥すごい馬車や)
「何だお前ら、何か不満か?」
「やっ!別にそんな事ないで!」
「こんなもの‥こんな素晴らしい馬車に乗れる機会なんて早々ないんだぞ」
「こんなものって‥自覚はあったんだな‥」
するとナギアは少し笑う。
「この馬車は製作した当時から外装を豪華にし過ぎたなと思っていたんだ。それなのに今回感謝の意を込めてさらに豪華にしたから‥まぁこうなるよなと‥」
あえて何故そんなわかりきった事をしたのかというツッコミは誰もしなかった。
「まぁそんな事より。早く来た前お前たち!先ほども言った通り、祝杯の準備は整っている!」
「やった!祝杯や!祝杯!」
「一旦は馬車のことは忘れようか」
「そうだな。‥若干一名は既に忘れてそうだけどな」
私たちは一度利用させてもらった事のある食堂まで案内された。
一度来た場所が故に緊張感は薄かったが、到着して早々に緊張から汗をかいてしまう。
そこには見たこともない様な料理たちがずらりと並んでいたのだ。
以下にも高価そうな物ばかりが並んでいたり、食べるのがもったいない様な飾り付け、外装をした物までもが並んでいて、何というか。
「すごい‥ですわ」
嬉しさと同時に焦りが込み上げてきた。
そんな中、私たちは席につく。
「ナギア王、今日は随分と気合が入っていますね」
「勿論だ。これは勝利を祝うと同時に、お前らへの感謝の意味も込めている。遠慮する事はない。作法など気にせずに食すがいい」
そうは言われても、少し気が引けてしまう程、並んでいる物たちは豪華だ。
(まぁやけど‥せっかくのご厚意やしな)
「何だ?食べないのか?」
席につきながらも、食事に手を出さない私たちを見て戸惑った様子でそう言った。
そして私は答える。
「せっかくやし!いただきますですわ!」
欲望には敵わなかった。




