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第九話 お出かけですわ!

「にゃあ吉!着いたで!」


「はしゃぎすぎるなよリア」


 私たちは昨日約束した通り、町に来ていた。

 昼食をとってから来たので今は既に昼を過ぎており、一番人が多い時間帯がゆえ、町は大変賑わっていた。

 

「お嬢様!くれぐれも、逸れないで下さいね!」


 人混みという事もあってか、アリアは力強く私にそう伝える。

 

 この前母と約束した通り、一人で出掛けては行けないという事でアリアが同伴することになった。


 にゃあ吉がいるからいいじゃないかと言った要望は当然通らなかった。


「にゃ、にゃあー」


 にゃあ吉はアリアがいる手前、本当の猫の様に振る舞う。


「ごめんなにゃあ吉。他の人の前では喋りたくないって言ってたから、出来る限り私一人で行動したいと思っててんけど、流石に前の一件があるから伝えられへんかったわ」


「仕方ないことだ。今日は何とか誤魔化せる様に頑張るとする」


 私は頭に乗せているにゃあ吉と小声でそう話す。


 にゃあ吉は他の人の前で喋るのが嫌みたいで、私の前以外では本当の猫の様に振る舞っているのだ。


「まずはどちらに向かわれますかお嬢様?」


「まずは図書館‥やな」


 私は小声で早速図書館でいいかをにゃあ吉に確認すると、構わないとにゃあ吉は返事をし、早速図書館へと向かうことになった。


「それにしてもリア様が図書館に行きたいと言い出すなんて‥いまだに信じられません」


「ま、まぁ私にもそういう日くらい、あるってもんやで」


「誤魔化し方が下手すぎやしないか」


 にゃあ吉は先が思いやられたのか、ため息を吐いていた。


 数分ほど歩いたところで目的の図書館に辿り着いた。

 図書館は町の中心部にあり、随分と大きな建物で身立つ外装をしている。

 100年以上も前に作られたらしく、少し古臭い見た目ではあるものの、それもまた味があって私はいいと思う。


 早速中に入ると紙の香りと同時に数えきれないほどに並べられた書物が目に入ってくる。

 いくつあるのか数えるのに時間がかかりそうなほどの量の本棚の中には余すことなく本が並んでいる。

 古びて剥がれかけている表紙のものや、昨日今日入ったばかりの様な綺麗なものまで、あらゆる年代のものが揃えられていた。


「リア早速だが新聞のある場所に行ってくれないか」


 私が本の量に驚いているとにゃあ吉が小声でそう声をかけてくる。


 私は頷いて、図書館内を散策する。

その途中でアリアは、目が回ったのか「出入り口にてお待ちしております」と言って、顔色を悪くしながらその場を去っていった。


「リア‥もういいからお店の人に聞かないか?」


「嫌やここまで探してんから自分で見つける!」


 私は何十分もかけて目的の新聞を探している。

 今更人の手を借りたくないと言った何の意味もない意地で探し続ける。


「あのー何かお探しでしょうか」


 すると後ろから一人の女性が話しかけてくる。


 振り返ると、胸元にお店の札を貼った女性が心配そうにこちらを見ていた。

 大きなメガネをかけ、三つ編みをしていて、いかにもな文学少女といった容姿をしていながら、豊満な肉体、それに、唇の右下にほくろがあり、大人の色気をも感じさせる。


「ずっと本も持たずに、この辺りを歩いていましたので、もしかして何かお探しなのかなと声をかけたのですが‥」


 女性は丁寧に声をかけた理由を話してくれた。

 正直悔しいが、この人に新聞の置いてある場所を聞いてみることにした。


「あの実は、新聞が置かれた場所を探していまして‥ですわ」


「新聞でしたら、店頭には並んでいませんので、私どもに読みたい新聞を教えていただければ、裏からお待ちいたしますよ」


 私が探していた時間は何だったのか。

 途端によろめき、ひどく落ち込んだ。


「おいリア。落ち込んでないで新聞をもらってくれ。ほしいものは過去1ヶ月のもの全てだ」


 にゃあ吉は小声で私に注意をしながらそう要求した。


「過去1ヶ月の間に発行された新聞を全て見せていただきたいんですが、可能ですか‥ですわ」


「はい。大丈夫ですよ。読書スペースにてお待ち下さい」


 そう言って女性は小走りで去っていった。


 私たちも言われた通りに、窓際にある読書スペースに移動した。


 昼間で人の多い時間だからか殆どの席は埋まっており、私は一番角奥の席に座ることになる。


「何ださっきの敬語かなんなのかわからない喋り方‥いやあの語尾は何だ」


 私が腰をかけて早々に、にゃあ吉が尋ねてくる。


「え?貴族令嬢としての喋り方やで?」


「あんな口調のもの見たことないが‥」


 私は「またまた」と軽くあしらう。

 にゃあ吉は「あれが貴族の口調なのか?」と首を捻っていた。


 そんな会話をしている内に女性が両手に新聞を抱えて持って来てくれた。


「わざわざありがとうございますですわ」


「いえいえ大丈夫ですよ。上から下にかけて新しいものとなります。では失礼します」


 新聞を渡し終えると足早にその場を去っていく、どうやら忙しいみたいだ。


 (それやのに声をかけてくれて、いい人やな)


 受け取った新聞を机に置くと、にゃあ吉は早速新聞を読み始める。

 器用に手を使ってページを捲り、読み終えたものは元通りに折りたたんで端に置く。

 それを繰り返していた。


 (暇や)


 正直な感想だった。

 せっかくの図書館なのだから何か手にとって読めばいいじゃないかと思うかも知れないが、私は書物などにあまり興味がないのだ。

 興味がないというよりも、苦手と言った方が正しい。

 前世での国語の時間中のテストで、文を読み解くのに頭を悩ませすぎて熱が出たほどだ。

 だから出来る限り本などは読みたくない。


 


「ふぅなるほどそういうことだったんだな‥。待たせてしまって申し訳ない。読み終えたぞリア」


 暫くしてにゃあ吉は久しぶりに口を開いた。


 時間は経ったが、この量の新聞を読むにしては早すぎるくらいだ。


「お疲れ様にゃあ吉。じゃあもう図書館をでても大丈夫そう?」


「あー用事は終わったし、お暇させてもらおう。次はリアが言っていた通り、食べ歩きでもしよう」


 私はやっと町を回れると思い、気分が高揚し始める。

 新聞を返して、早速図書館を後にした。


「リア様随分といらっしゃったみたいですね。何を読まれていたんですか?」


「あっえーと‥小説」


「リア様が小説?!‥信じられませんね」


「リアは小説を読むことすらあり得ないと思われているのか‥」


 そんな会話をしながら図書館から離れて、町の飲食店や屋台が並ぶ場所に出て来た。


「いいですかリア様。お小遣いは2000ゴールドまでです。それ以上は使ってはいけませんからね」


 アリアはそう言って私にお小遣いを渡す。

 普段から無駄遣いしがちな私の財布はアリアが管理してくれているのだ


 私は元気に返事をして、お小遣いをもらった後、早速匂いに釣られて、全速力で屋台に向かった。


 店頭に並んだ串焼き肉を購入して、早速いただく。

 4つほど大きなお肉が串に刺さっており、どれも蕩けるほどに柔らかでとても美味しい。


「にゃあ吉も食べるか?」


 そう言ってにゃあ吉に差し出すと、最初は遠慮していたが、私が急かすとパクパクとそれを食べていた。


 見てるだけで癒される。


「次は何食べよっか」

 

「リアの好きなものでいいよ」


 私たちは店を転々と歩き回り、いろんな場所でいろんなものを食べた。

 そして最後に買ったバナナを食べながら私は気づく。


「あれ?アリアは?」


「気づいていなかったのか?」


「いつから見てないっけ?」


「リアが匂いに釣られて串焼きのところまで走り出してからだな」


「あーじゃあ序盤やな‥どないよ!!」


 私はまた迷子になってしまったと大慌てだ。

 迷子になったのが不安なんじゃない、この後母からの制裁が怖いのだ。


「あーあんなに怒られたばかりなのにどないしよー」


 私は慌てて当たりを探し回る。


 頭に乗せたままのにゃあ吉は振り落とされない様にしっかり私の頭を掴んでいた。


「終わった‥」


 いくら探しても見つからない。

 私は裏路地で両手を地面につけて崩れる様に落ち込んだ。


「どうしたものか‥ひとまずリア。最初のところまで戻ってみないか?もしかしたらアリアさんもそこで待ってくれているかもしれない」


「ナイスアイデアやでにゃあ吉!じゃあ戻ろか、いたっ」


 私はにゃあ吉と話しながら前へ進んでいたため、前の人に気づかずにぶつかってしまい、弾かれて尻餅をついてしまった。


「ごめんなさい。前見てなくて」


 私は相手に謝罪をする。

 前を向くと私が見上げないといけないほどの大男が立っていた。

 横には取り巻きの様な人が3人ほどいて、私は失礼ながら相手の容姿からか雰囲気からか何か嫌な予感がした。


「いや謝らなくていいんだお嬢さんこれくらいのこと、、俺たちは君にもっと酷いことしようとしてここにいんだから」


 私は危険を察知して、直ぐに立ち上がりその男がいる反対方向に走ろうとする。


 けれど腕を掴まれてしまい、逃げることは出来ずに男たちに囲まれてしまった。

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