第五十九話 人探しですわ!
情報交換が終わると同時に食事も終えて、本日はひとまず解散かと思われたが、王様がまだ話すことがあるらしく、私たちは庭園へと場所を移った。
「やっぱり綺麗やわ!ですわ」
庭園について早速、その景色に圧倒され、お腹も満たされている私はとても上機嫌になっていた。
「君が随分とここを気に入っていたからね。わざわざ話す場所をここに移したんだ。感謝するんだな」
「恩着せがましいですわ」
「君は本当に‥だんだん遠慮がなくなってきてないか」
私たちは庭園の中心にあるベンチまで移動し、そこに召使の人たちがベンチとは別に私たち用の椅子を用意してくれた。
私たちは話しやすい様に、円状に並べられた席に座った。
「それで、まだ話があるのか?さっき話すべきことは殆ど話だと思うが」
にゃあ吉は足を組んで王様にそう問いかける。
「そう急かすなキャット。実は君たちがこの街に来た理由を、ジニアから聞かせてもらったんだ。人探しをしてるようじゃないか。」
王様は笑みを浮かべながら私たちにそう質問をした。
「はいですわ。ちょっと事情がありましてですわ」
私は、探している理由は伏せておいた。
「そのことだが、協力してくれる礼として僕様が代わりに見つけてやろうと思ってね」
「ほんまですか!?ですわ!」
私はとてもご機嫌に、前屈みになって王に問い返す。
「勿論だとも。僕様にかかればぞうさもないことだからね。君たちだけじゃ苦労してたんじゃないか」
王様の言う通りで、捜索はとても難航していた。
手伝ってくれると言うのなら、ぜひお願いしたい。
「お前に手助けされるのは癪だが、正直なところ協力しながら人探しをするのは、難しいのではないかと考えていた。ここにも長い間滞在できるわけじゃないしな」
「そうなのか?ここにずっと滞在するとは思っていなかったが、どれくらいここにいるんだ?」
王様は気楽にそう聞き返す。
「後1週間も入れないですわ」
「後1週間!?!?」
王様は顔色を変えて、立ち上がり、大声を出した。
「まぁ落ち着けナギア」
にゃあ吉は平然と王様をなだめているが、確かに残り1週間しか入れないと聞かされれば驚くのは当然だろう。
なんせ近々組織が襲ってくると言っても、別に1週間以内と決まったわけではないからだ。
「なんでそれを早く言わなかったんだ。もしそれまでこなければ‥」
そう言って王様は勢いよく椅子に座った。
顔を手で覆い、とても落ち込んでいる様子だ。
もっと早めに言っておくべきだったと反省をした。
その直後だった。
「いやよそう。冷静さを失っても仕方がない。ひとまずそれまでに攻めて来ることを祈ろう」
(え‥それはそれで間違ってる気もするけど‥)
問題は後回しにするタイプの様で、王様は瞬時に冷静さを取り戻しのだ。
そしていつもの温度感で再び話し始める。
「それじゃあ話を戻すが、お前たちが探している人間を教えてくれ、早速だが探してやろう」
「えっ?いいんですかですわ」
今の流れでまさか手伝ってくれるとは思っておらず、私は少しばかり驚いた。
「もういいよ。先に恩を売っておいて帰りにくくしてやる」
そういうことかと思いつつも、背に腹は変えられず、私は王様を頼ることにした。
「えっと見た目がまず‥」
「容姿などどうでもいい。早く名前を教えてくれ」
私はどの様な人物か、まずは見た目から教えようとしたのだが、王様はまるでそれが不要かの様に言い出す。
「えっ、でも名前だけでどうやって‥」
「私はこの国に滞在している全ての人間を把握している。そんなことも知らないのか」
それを聞いて思い出したが、料亭の定員さんがそんなことを言っていた気がする。
定員さんを疑っていたわけではないが、まさかそれが事実だとは思っても見なかった。
「えっとじゃあ‥『ラリヤ・ネスト』という方ですわ」
そういうと、王様はその名前の確認を再度してきて、私はそれに頷いた。
すると王様は目を瞑り、右手で両目を隠す様にする。
「あーこの女だな」
「えっ?本当にわかったんですか!?ですわ!?」
「なんだ信じていないのか?じゃあ確認だ」
王様はネストさんの特徴を次々と語り出した。
その情報は何一つとして間違ってはいなかった。
「本当にわかったんやですわ!すごいですわ!」
私は素直に感心して、王様を褒めちぎった。
「踏みつけモンスターにしては素直に褒めるじゃないか。もっとあがめても良いのだぞ」
「‥覗きやろう」
「っ!‥この手の能力使いに、最も言ってはいけないことを!貴様!」
「それで何処にいたんだ?」
王様の怒りを遮って、にゃあ吉がそう問いかけた。
「‥残念だけどこの街にはいなかった。私が確認したのは彼女の写真のみだ」
「えっ!いなかったんですですわ?」
私はそれがあまりに予想外のことで、大きな声を出して驚いてしまう。
学園に入学していないならこの街にいると思ったのだが、見当がつかなくなってしまった。
(もう何処におるか全くわからん‥どないしよ)
「まぁ兎に角助かった。いない人間を探すところだったからな」
「確かにそれはそうですわ。ありがとうですわ。ナギア王」
私は悩む前にひとまず王様にお礼をした。
「今更褒め直しても帳消しにはしないぞ。踏みつけモンスターめ」
この街を探しても意味がなくなったことで、いよいよここでの用事は組織との対決のみとなった。




