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第五話 野宿ですわ!

「それで‥どうやって帰ろか」


 私は洞窟の外の激しく降る雨を眺めながら、にゃあ吉に問いかける。

 

「今帰還しようとするのは危険だな」


 にゃあ吉はキッパリと言い切った。


 「ただでさえリアは迷ってここに辿り着いたのだろ?ならこんな雨の中を進んでしまえば、より迷ってしまうかもしれない。ひとまず‥いや、今日はここで一泊するのがいいのかもしれないな」

 

「やったー!初めての野宿や!」


 思い詰めた顔を浮かべたにゃあ吉とは対照的に、私は手を大きく広げながら喜ぶ。

 前世から野宿やキャンプに興味があったからだ。


「貴族のようななりで、野宿を喜ぶとはな。やはりリアは変わっている」


 そう言いながらにゃあ吉は笑っていた。


「とりあえずもう少し奥へ行こ。ここは雨が入ってきて冷たい」


 そう言って私はにゃあ吉を抱き抱えながら、奥へ進む。


「おい。もう私の傷は癒えたのだから抱えなくて良いのだぞ」


「まぁまぁそういわんと」


 (あ〜にゃあ吉あったか〜。もふもふやし最高やわ〜)


 にゃあ吉は不満げな表情を浮かべながらも、諦めたのか無抵抗で抱き抱えさせてくれた。


私は入り口の光が届くギリギリのところまで進み、腰を下ろした。

 

「ここらへんで今日は休もか。あんまり奥行きすぎたら何も見えんくなるしな」


「そうだな」


 そう言って私の腕から離れる。


「ずっと腕の中おってもええのに」


「何の冗談だ」


 にゃあ吉は呆れた顔を浮かべる。


 お互い疲れたのかその場で寝転がり、一休みする。


 雨音だけが響く中、にゃあ吉が話し始める。


「なぁリア。あった時から不思議に思っていたんだが、リアはここまで何をしにきていたんだ?」


 私は昨日契約魔法を取得した事と、早速今日その契約魔法を使う為に森へ来ていたこと、そしてその後迷ってしまった事を話した。


「迷ったってリア‥ここは崖に囲まれた洞窟だぞ。崖を下らない限りここに辿り着くことは出来ないし、崖を下るための道も用意されていない。一体どうやってきたんだ?」


「あー私崖から落ちてん」


 にゃあ吉は驚いていた。


 「いやー流石にびっくりしたわ。何が起こったのかわからへんかったもん」


「崖から落ちたって‥よく無事でいたものだ。頑丈だとは言っていたがそこまでとは‥」


「私のことよりも!にゃあ吉のことが気になるわ。なんであんなぼろぼろやったん?ボロボロやのに何でわざわざ洞窟におったん?」


 私も気になっていたことをにゃあ吉に質問する。


 けれどこの質問をした途端、にゃあ吉は少し顔を曇らせた。


「あっいややったら言わんでいいで」


 触れられたくない空気を察して私はすぐに話を切り上げようとする。


「‥あーすまない。隠し事をする様で悪いが‥時期に話すとする」


 にゃあ吉は俯きながらそう答えた。

 何か訳ありのようだし、あまり人の‥いや猫の事情を詮索する様なことはしないほうが良さそうだ。


「とりあえず今日は寝よか。もう何だかんだ暗いし。あー洞窟の中やからか」


「今が何時なのかはわからないが、ひとまず寝るのは賛成だ。迷子だというのなら朝、雨が上がって直ぐに帰宅を試みるのが最善だろう」


「うんそうやな。じゃあおやすみにゃあ吉」


 そう言って私はにゃあ吉の体を枕にするようにして、横になる。


「なにしてんねん」


「方言がうつってるでにゃあ吉」



 

「おい朝だぞ。起きろリア」


「んー?今何時?まだ暗いでアリア」


「暗いのは洞窟の中だからだ。それとアリアではなく‥にゃあ吉だ」


「‥にゃあ吉‥にゃあ吉!」


 起きて早々私はにゃあ吉に抱きつく。


 抱きつきながら頬をにゃあ吉の顔に擦り上げる。


「痛い、痛い!なんだリア。朝から元気すぎやしないか」


「だって夢でもにゃあ吉が出てきたから、もしかしたらにゃあ吉と出会ったんも夢ちゃうかなって思ってん。よかったーにゃあ吉」


 私は改めて抱きしめる。


 するとにゃあ吉は手をグッと伸ばし、私の顔を押し除ける。


「リア。ひとまずは家に帰ることに専念しよう。このまま崖を登ることが出来なければ、私達は飢え死にしてしまうからな」


「そうやな。にゃあ吉ー!」


「だからその頬を押し付けるのをやめろ!」




 洞窟を抜け、外に出てみると朝日が登っていた。

 どうやら昨日寝てから結局朝に至る今まで寝ていた様だ。

 

 かなり長い時間寝ていたことになると思うけれど、よほど疲れていたということだろう。

 

 私たちはひとまず周りの崖を確認する。


 崖は見上げないといけないほどの高さで、角度は90度に近い。

 掴めそうな場所を掴んではみたが、すぐに崩れおちる。


「やはりこの高さを登るには何かしらの工夫が必要なようだな。普通に登ろうとして登れる距離じゃない。だからリア今直ぐ降りてこい」


 何度も登ろうとしては落ちる私に、にゃあ吉は呆れながら注意する。


「でもどうしよか。工夫って言ってもなんにもおもいつかへんし」


「確かに、今直ぐ思いつきそうにはないな。ひとまず登るのではなく助けを呼ぶことに力を入れよう」


 そう言ってにゃあ吉は森に入り、口を使って葉っぱや枝を一箇所に集め出す。


「それをどうするん?手伝おか?」


「いやいい。すぐに完成する」


 そう言って、にゃあ吉は集まった枝や葉っぱを焚き火をする形に組み立てていった。


「おーキャンプとかでよくみるやつや、でもこれをどうするん?ライターとか持ってへんで」


「ライター?それが何かわからないが、火ならこうやってつける事も可能だ」

 

 にゃあ吉はそこに手を翳した。


 すると、にゃあ吉の手から微量ながら火が放出される。


「えっ?!何それ?!」


「これは‥そうだな。魔法のようなものだ」


 にゃあ吉はそう言っているが、「LOVE SCHOOL」ではその様な魔法は登場しない。

 

 ゲームで使える魔法は、身体強化、回復、使役のみだ。

 

「LOVE SCHOOL」はあくまでも恋愛ゲーム。

 ファンタジー世界を舞台にしているが、基本戦闘などの描写は存在しない。

 そのため戦闘などをメインに扱う作品によく登場する、火、水、雷といった魔法は登場しなかったのだ。

 

「すごーい!かっこいい!」


 登場しない魔法をみた私は、それが疑問に思う暇もない程に大興奮していた。


 私は元々恋愛ゲームよりRPGが大好きなのだ。

 それをこうして現実で目にすることができるとは、思ってもみなかった。

 少ししか見えなかったが、手から火が出るというのは何ともカッコいいものだ。

 私も使ってみたい。


「すごいなにゃあ吉!他にもなんかできるん?」


 私は目を輝かせてにゃあ吉に顔を近づける。


「まぁ……出来はするが‥また今度にしてくれ」


 軽くあしらわれてしまった。


 火は徐々に強くなっていき、ばちばちと焼ける音が聞こえてくる。

 火から溢れ出る煙は上へと昇っていった。


「これで気づいてもらえればいいのだが‥まぁ難しいだろうな。ひとまずこの間にも作戦をねろう。なるべく時間は有効に使いたい」


 にゃあ吉がそう言って直ぐのこと、崖の上から何者かがこちらに向かって走ってくる音が聞こえた。

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