第三話 猫ですわ!
「それじゃあ行ってくるですわ!」
「おっお待ちくださいお嬢様!」
私は翌日、日が登って直ぐに家をでた。
早速動物を使役する魔法を使ってみたかったのだ。
(よし何としても今日中に最高の相棒を見つけるで)
そして私は屋敷近くの森を散策することにしたのだが、こっそり出てきたつもりがアリアがついてきてしまった。
「大丈夫やでアリア。ちょっとそこを散歩するだけやから」
「そう言って、何度も迷子になってるじゃないですか!」
「全くアリアは心配性やなぁ」
「心配にもなりますよ!大丈夫といって大丈夫だったことがないんですから」
そう言って途中まで着いてきてくれていたアリアだったが、気づかないうちにはぐれてしまっていた。
(あれ?アリアどこいったんや?はぐれたんかな?それともやっぱり着いてくるんやめたんかな?)
「アリアー?アリア?」
念の為、アリアが近くにいないか周りを散策する。
右へ左へとアリアを探しながら進んでいるうちに私はある事に気づいた。
「あれここどこや?」
迷子になっていた。
(アリアにあんなに注意されたのに、やってしまったな‥)
(まぁしゃあない!後悔してる暇があるんやったら前に進むべきやな!まだ目的も済んでないわけやし、もう少し奥に進んでみよ)
私はどんどんと森の奥にへと進んでいく。
道中まであった人が歩ける様な道は無くなっており、生い茂った草をかぎ分けながら奥へ進む。
進めば進むほど服が汚れ破れていき、綺麗だった服が瞬く間に残念な姿になっていく。
(もう服ボロボロやないか。帰ったらママにめっちゃ怒られそう‥どないしよ)
そんなことに気を取られていたからか、私は直ぐそこにある崖に気づけなかった。
「え、?あれ?道あらへんやん。うわーー!!!」
「あれ?私崖から落ちてどうなったんやっけ?」
少し気を失っていたみたいで、目を覚ますと登って間もなかった太陽が頂上へと達していた。
「いたた、見た感じ怪我はないみたいやけど、どれくらいの距離落ちたんやろ。うわそれより服ボロボロやん!後ろ半分もうほぼないし!オモロ!」
そんなこと言ってる場合じゃないのだが、これからどうすればいいのかあいにく検討もつかなかった。
崖を登ろうと心見るも、この10歳というまだ小さく非力な体じゃとても叶いそうになかった。
すると突然空の様子が怪しくなってくる。
「さっきまで晴れてたのに、何や急に」
一滴の滴が鼻先に当たる。
(あかん雨降ってきた)
私はその場から離れ、雨宿りができそうな場所がないか急いで探す。
けれどここは森の中、なかなかいい場所が見当たらず、全身が雨で濡れ体が冷え始めたころにやっと雨を凌そうな、洞窟を見つけることができた。
中を覗いてみると、先は何も見えず真っ暗闇で正直入るのに気乗りはしないが、外は雷までも鳴り始め私はやむを得ずその洞窟へ入ることにした。
奥まで行く理由もないので少し入ったところで、座り込み、服を脱いで軽く絞る。
しわくちゃになってしまい、その上ボロボロ、これは確実にママに怒られてしまうな。
憂鬱になりながら、搾り終えた服を着ていると、奥から何やら音が聞こえてくる。
音というより鳴き声だろうか、何か動物がこの洞窟に住み着いているのかもしれない。
私は鳴き声の正体が気になり耳を澄ませ、その鳴き声の正体を突き止めようとする。
「にゃ、、にゃぁー、」
私は洞窟奥へと走り出した。
「絶対猫や!確実に猫や!この世界にもおるんやな!猫!絶対や猫!絶対猫や!」
私は大興奮で奥へ進む。
何も見えないがそんなことは関係ない。
鳴き声を頼りに、ひたすらに奥へ奥へと進む。
そしてやっとのことで鳴き声が直ぐ側で聞こえるところまで来れたのだが、中は真っ暗闇で何も見えずにいた。
「くそー。せっかく近くまで来れたはずやのに!にゃー。猫どこやー!にゃーにゃーにゃー」
「にゃ、、にゃぁ、、にゃあー」
私の呼びかけに答えてくれたのか、猫が鳴き声を返してくれた。
けれど先程から、なんだか猫の鳴き声が弱々しい気がする。
そもそも全速力で人間が近づいてきているのに、そこを動かないのも妙だ。
もしかしたら弱っているのかも知れない。
「猫ー。もうちょい鳴いてくれー。どこやー」
私は少し心配になりながら猫を探す。
すると途端に天井のどこからか、月上がりが漏れ出す。
当たりがうっすらと見えるようになり、私は二つほどの光を見つける。
その光は青く、まるで星の輝きのような光を放っていた。
「綺麗な瞳やな。君が猫ちゃんか?」
私はその光が猫の目だということに気づいた。
そっと近づいてみると、その猫の姿が見えるようになってくる。
「大丈夫か猫!傷まみれやないか!どないしてん!」
猫の体は傷まみれだった。
真っ黒な毛皮にドス黒く赤い血がべっとりとついており、猫の周りの地面には血が染み付いていた。
「ど、どないしよ。猫しっかりしろ!」
猫はか細く泣いている。
私は服を引きちぎり、どうにか包帯の様に扱えないものかと試みるが上手くいかず、私は布で傷口を抑えてあげることしか出来なかった。
何の意味も無いかも知れないが、私はその場で何もせずにはいられなかった。
「どないしよ。どないしよ」
私は焦りのあまり涙をこぼす。
私の選択一つで、この猫の命が助かるかどうかが決まる。
何としても助けたいが、馬鹿な私は何も思いつかず唯傷を抑え続けることしかできなかった。
「もういい人間」
どこからか声が聞こえる。
いや何処から聞こえているのかはわかっていた。
けれどそれはあまりにも信じられないことで、私はその事実を飲み込めずにいた。
「え?!鳴き声と声違う?!」
「‥喋ることに対する疑問じゃ無いんだな」
猫が喋っていたのだ。