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第二百九十一話 馬車ですわ!

「ごめんみんな、待たせたみたいで」


 その場にはナギアとにゃあ吉、そしてララとラリヤの他に、先日組織メンバーがこちらにやってきた際には見かけなかった、エマさんの姿もあった。


 皆何処か暗く、強張った表情をしているが、エマさんはその中でも特に険しい顔を浮かべている。

 

「私たちも、先程ナギア様に知らされたばかりですので‥」

「本当に全然待ってないんだよ。さっき準備出来たばかりだよ」


 どうやら皆も私と同じく、今さっきノットさんの件を伝えられたらしく、急いで準備してきたみたいだ。

 今の2人の発言と、皆のいつもよりも整えられていない身だしなみを改めて確認すれば、だいたい察しがついた。

 

「あー‥すまない。別に隠していたわけではないのだ。伝達ミスというかだな‥」


 どうやらナギアは、皆の強張った顔を見て、怒っているのだと思ったらしく、遂に謝罪の言葉を口に出し始めた。


 珍しいものを見れたのはラッキーだが、どうやらナギアは勘違いをしている。


 少なくとも皆が強張った顔を浮かべているのは、怒っているからではないからだ。


「いえ、別に怒っているわけではないのですが‥」

「うん。‥何というかだよ」

「姉さんがどうなるのか‥不安で‥」


 やはり私の思った通りだ。

 皆私と同じく、不安から強張った顔を浮かべているのだ。


 正直ナギアにギリギリまでノットさんの事を知らせてもらえなかった事に対する怒りもあるが、そんなものは二の次三の次で、何よりも今は、ノットさんの事が気になって仕方がない。


「おいナギア、皆準備が出来たのだ。早く出発するぞ」


 にゃあ吉も少し焦る気持ちがあるらしく、ナギアを急かすような発言をする。


「‥あー、そうだな。馬車を用意してある。皆それに乗って移動するぞ」


 私たちはナギアに言われた通り、玄関先まで足を運び、用意されていた馬車に乗り込んだ。


 4人がけの馬車のため、私とにゃあ吉とナギアは共に乗車し、残りの3人は別の馬車に乗る事になった。


「どれくらいで着くん?そもそも王国内で、裁判が行われるんよな?」


 早速出発した馬車に乗りながら、私はそのような質問を投げかけた。

 

「その通りだ。何、到着まで1時間も掛からない。それまでは大人しくしていろ」

「それよりもナギア、判決は直ぐに知らせてもらえるのか?」

「その為に僕様も同伴してるのだ。国王権限で、真っ先に知らせてもらう。それをお前たちに伝えるのだ」


 歩く事もなく、ただ馬車に揺らさせているだけだというのに、鼓動がとても早くなっているのを感じた。

 緊張のし過ぎなのか、それともただ馬車に酔ってしまっただけなのか、吐き気にまで襲われ始めている。


 もし重い罰を受けて仕舞えば、2度とノットさんと再開を果たせないかもしれないのだ。


 そんな事は絶対に嫌だと、心の底からそう思いながら、震える足をグッと抑える。


 到着まで1時間弱、普段ならあっという間にすぎる時間だが、今はそうはいかない。


 馬車は私たちと共に大きな不安を乗せながら、目的地へと進んでいく。

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