第二十八話 昼休みですわ!
「ぶっ倒れそうやわ」
私は眠気に襲われながら、2階から上り始め、4階にある図書館を目指している。
最近ではこの階段も慣れてきた気がしていたが、眠気に、疲労が重なった今はこの階段が永遠に続くものとさえ感じられた。
「後少しだ。頑張れリア」
3階を超えてから半分ほど上り切ったが、螺旋階段が故にまだ図書館は見えない。
目標が見えないというのはここまで苦痛だとわ。
「はぁはぁはがはぁはぁはぁはぁ‥ですわ」
「疲れ切ったということは理解できる」
私はやっと図書館へと辿り着いた。
時間にしてみれば数分しか立っていないが、その時間とは比例にならないほど体力が削られた。
「元から限界に近かったのにもう無理や」
私はそんなことを言いながらゆっくりと息を整えていく。
流石にこんなにも息が切れた状態で中に入るのは他の人に迷惑だろう。
なんせ今からお邪魔するのは図書館だ。
私語禁止の中、私の呼吸音だけが響きわたるというのはあまりにも迷惑でシュールだろう。
ある程度息が整った後、私は図書館の扉を開ける。
すると広がるのは本の匂い。
この匂いは昔から馴染みがあるからか、とても落ち着き、リラックスさせてくれる。
そうなった途端眠気が限界に達した。
(あかんぶっ倒れそうや)
私は両手で軽く頬を叩いて目を覚まそうとする。
「なんだい?随分と疲れ切っているじゃないか」
眠気を覚まそうとする私を見て、少し離れたところからノットさんがこちらに向かって歩いてきた。
「あっノットさん。こんにちわ。ちょっと今日は昨日頑張ったのが原因でもう満身創痍ですわ」
「ははは。何があったか知らないがご苦労さま。ひとまず席に座るといい。今日も今日とて人はいないからね」
どうやらここはテスト前など以外はあまり生徒が来ないらしい。
ノットさんは笑いながら私を席まで案内してくれた。
案内されたのは、扉を開けて左に少し歩いたところにある。皆が利用できる共有スペース。
そこでは、普段本を読む人や勉強する人が利用している。
「ありがとうございますノットさん。あのまま立っていれば意識不明になっていたかもしれませんですわ」
私は案内された席に座り、にゃあ吉には机にうつってもらった後、机に顔を乗せて楽な体勢を取りながらノットさんにお礼を口にする。
机のひんやりとした冷たさが気持ちいい。
「楽になったんなら良かったよ。それに君がここに来るのを実は待ってたんだ」
(ん?私なんかしたっけ?)
私は記憶のフォルダを漁りまくる。
眠たいのに何かしたかもしれないと言った、危機感からかものすごく頭が回る。
昔からこう言った話の切り出され方をされた時は決まって怒られていた。
特に母親に。
「その‥なんだ‥。郊外学習の場所ってあの町の図書館だったんだろ?なら私の妹と会ったりしたのかなって‥」
ノットさんは頭をかきながら少し恥ずかしいそうにして、私にそう質問する。
(良かった。怒られる様なことしたわけではなさそうや)
「妹さんって、エマさんのことですかですわ?」
「そ、そうだよ!知ってるっていうことは会ったのかい?!元気にしてた?」
ノットさんはこちらに詰め寄る様にしながら、近づいてきて、嬉しそうにしながら、瞳を輝かせていた。
「は、はい。会いましたですわ。元気そう‥というより私はあの町の近くの生まれなので、よくエマさんとは、図書館に赴いた時、お話ししていましたですわ」
「そ、そうだったのかい。じゃあ自分がエマと兄弟たってこと知った時は驚いたんじゃないか?」
「はい。とても驚きましたですわ。でもエマさんは私が驚くのを見る為に兄弟だということを黙ってたようですし、ノットさんも知っていると思ってましたですわ」
「あー実はね。自分たちはここ数年あっていないんだ」
予想外なことだった。
私はてっきり2人は仲のいい兄弟だと思っていた。
それはエマさんがよく本の貸し借りなどをしていたなどの様なことを言っていたからだろう。
けれどよく考えてみれば、昔はという言葉がその説明の前に入っていた。
あれは最近はあっていないという意味でもあったのかと今理解した。
「お二人はあまり‥その仲が‥」
「あー別に仲が悪いと言ったわけじゃないんだ」
私が気まずそうにしながら聞いたのに対して、ノットさんは笑顔で答えを返した。
「実はね‥。まぁこの話はいいや。郊外学習で他何したんだい?」
2人に何があったかわからないが、話を変える時点であまり踏み込こむべき話題ではないだろう。
「郊外学習であったことですか?‥そうですね‥やっぱり謎の女性にあったことですかね」
「ん?謎の女性?何のことだい?」
私は驚いた。てっきり先生達は皆、把握していることだと思っていたからだ。
現に生徒会にも知れ渡っていたのだから、何故ノットさんは把握していなかったのだろう。
私は郊外学習で出会った女性。『黒薔薇の最後』についての話をした。
「なるほどそんなことがあったのかい。大変だったね」
そう言った労いの言葉をかけてくれた後、笑顔で頭を撫でてくれた。
「自分が知らされていなかったのは割といつもあることなんだ。私はここの学校の先生として勤務しているのではなく、この図書館のみを任されている人間だからね」
それなら確かに納得だった。
魔法の実力がある先生としてではなく、図書館を任されて働いているノットさんに、そんな怖い人達がいたことを教えるというのは恐怖を煽るだけであまり宜しいことではないのだろう。
「ごめんなさいですわ。私不安になる様なことを言ってしまって」
「いやいや気にしないでよ。そう言った情報はあるに越したことないからね。私も何かしら対応を考えるよ」
この図書館の防犯のレベルを上げるのだろうか。
やはりノットさんはしっかりしている。
まさしく大人の女性だ。
「それから疲れているなら、この休み時間の間だけでも眠ったらいいよ。いろいろ教えてもらったお礼だ。図書館で眠ることを今だけ許可しよう」
この後の授業でも、しっかり起きていられるようにという理由もあるそうだ。
私はお言葉に甘えて眠りにつくことにした。
この後も授業があることを考えるとここで眠っておくのが得策だろう。
そう思い私は目を閉じる。
図書館で眠ることなど初めてだったが、沢山の本に囲まれながら眠るというのは不思議と落ち着くもので、とても新鮮な気分で心地よく眠ることができた。




