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第二十一話 二人目の友達ですわ!

「ふふふ。まさか前世のことなんて覚えてる訳ないじゃないですか。クリスタロスさまは面白いですね」


 ラストは楽しそうに笑っている。


「あ、‥あー!そうよな!そりゃそうですわ!私ったら何を聞いてるんだか‥」


 そう言って私は勢いよく椅子に座り込み、空を見上げた。

 完全に放心状態だ。


「え、え、どうされたんですか!?クリスタロスさま」


 ラストは突如落ち込む私を見て、驚いた様子を見せていた。


「あっいや何でもない。‥ですわ」


 かなり望みが遠のいた気がした。

 考えてみたら、ラストと話している途中から気づいても良かったはずなのだ。


 あの時亡くなった友達たちは、私がそうであったように、「LOVE SCHOOL」に登場する自分が好きだったキャラクターに、転生している可能性があると踏んでいた訳だ。


 けれどラスト・ライトのことが好きだったあの子は、とても元気で好奇心旺盛で、清楚の真反対に一する様な落ち着きのない子だった。

 私が振り回される程に元気だったのだ。


 それに対して、ラストはとても上品で、落ち着きがあり、まるで女神様のような人なのだ。

 仮に生まれ変わったとしてもここまでの変化が出るとは思えない。

 

 まだ記憶を思い出していないだけにしても、私がそうだった様に、前世での性格が反映されているはずなのだ。

 けれどラストにはそれがない。


 以上のことからラストが前世での私の友達の可能性はゼロに近いだろう。


「にゃー」


 落ち込んだ私を見て、慌てるラストを気に病んでか、私を心配したからか、にゃあ吉は私の頭の上に登り、励ます様にして、頭を撫でてくれた。


 ラストにもにゃあ吉にも心配かけて申し訳ないと言った気持ちでいっぱいになる。


 (そうやん。前向きに生きるって決めてんからこんなところでくよくよしてる暇はない。前世でのことは、他の手がかりを探せばいいねん!やからひとまずやらないと行けないことは‥)


 私は机に手を置いて勢いよく立ち上がった。

 にゃあ吉はそれを瞬時に察して、机に飛び移る。


「大丈夫ですか?クリスタロスさま?」


「うん。大丈夫。ありがとうですわ‥」


 そう言ったあと、心配そうに見つめるラストの手を両手で握った。


「ライトさん!私と友達になってや!ですわ!」


「え、えー!」


 ラストは顔を真っ赤にしながら驚いている。


 私は自分の考えを思い出したのだ。

 仮にラストが前世と何の関わりが無かったとしても、友達になりたいと思っていた事を。

 もしそうなれたらとても幸せじゃないかという事を。

 

 私は手を握る力少し強めて、目を輝かせながらラストに近づく。


「ライトさんとってもいい人やから、友達になりたいんですわ。‥ダメ‥でしょうか‥ですわ」


 返事がないラストに私は戸惑い、少し落ち込んだ表情を見せた。


「い、いえ!ダメなんてそんな。唯驚いただけです。私、この食事が終わればもうご一緒出来ないと思っていましたから」


 ラストはそっと胸に手を置いて深呼吸をする。


「ですので、そう言ってもらえてとても嬉しいです。こちらこそよろしくお願いします。クリスタロスさん」


 ラストはそう笑顔で答えを返してくれた。

 私は嬉しくなり、ラストに抱きついた。


「やったー!じゃあこれからよろしくライトさん。あっ!それから私のことはリアとよんでですわ!」


「は、はい。ではリア様。私のこともお好きにお呼びください」


 私が、抱きついたことに少し動揺し、顔を赤くしながらラストはそう返す。

 そんな姿も可愛いなと思ったが、申し訳ないので、抱きつくのをやめて会話を進める。


「うーんそうやなー‥呼び方‥呼び方‥。じゃあ、ララ!名前の頭文字をとってララなんてどうやろ!ですわ!」


「ララ‥。私誰かにあだ名をつけてもらったのなんて初めてです。是非よろしくお願いします」


 こうして私たちは友達になった。

 つまりはこの世界でにゃあ吉に続く、二人目の友達ができた訳だ。


 これからはもっといろんな思い出が増える気がして、楽しみになってくる。


「私この学校で、同じ庶民の友達が出来ると思っていなかったので、とても嬉しいです」


「そうなんですわ‥ん?」


 ニコやかにそう言ったラストの言葉を一度は飲み込んだが、私は違和感を覚えた。


「えっと‥私一応貴族‥ですわ」


 ラストはサッと血の気が引いた様な顔を見せた。


「ご、ごめんなさい!私その‥気がつかなくて‥。失礼なことを言ってしまいました」


「いやーええよええよ。全く気にして無いから‥」


 慌てるラストに私は笑顔をでそう返した。

 その後すぐにラストに背を向け、にゃあ吉を持ち上げて、問いかける。


「私ってそんなに貴族らしくないん?」


「ま、まぁそうなるな。貴族らしいと言われれば全くそんなことないし、庶民らしいかと言われればその通りだと言わざるを得ない」


 何とも残酷な、オーバーキルだった。


「ま、まぁいいし、逆にいえば親しみ安いってことやろ。うんうん」


 私は自分にそう言い聞かせて、ラストの方を向く。

 

「ララ。話は変わるんやけど、また今度どこか出かけへん?せっかく友達なってんからどっか行きたいですわ」


「はい!是非!」


 ラストは満面の笑みで返してくれる。


「やった!じゃあどこ行こか。うーん‥あっ!そうや!ひとまずまた今度ある郊外学習の日一緒にまわらへん?ですわ」


 この学校は、入学してすぐに、郊外学習が行われる。

 郊外学習とは言っても、殆どが生徒同士の交流を目的にしたもので、ほぼ遠足の様なものとなっている。


「はい!私一人で回ることになるからどうしようかと思っていたんです。是非ご一緒させてください!」


 こうしてラストと約束をしたのを最後にチャイムがなり、今日はお開きとなって、私たちはそれぞれの教室へと戻った。




「結局前世のことは分からずじまいだったな」


 教室へと戻った際に、にゃあ吉がそう言ってくる。


「そうやな。やけど、新しい友達ができたんや。前世のことはまた考えればいいし、うん。今日はとってもいい日やった」


 今回は何も前世の手がかりを得ることが出来ず、友との再開に近づく事が出来なかったかもしれないが、何も後ろに遠のいたわけじゃ無い。

 前に進む意思を諦めない私は、きっとこの先も進んでいけるはずだと改めて自分を鼓舞する。




 

 そうこの先も私は自分の意思次第で前へ進んでいけると思っていた。

 けれどこの先自分の力ではどうしようも出来ないことが待ち侘びているのだ。


 それはリアとして生きることに伴って生まれた、運命とも言える残酷な未来。


 その時、私には、友の力が必要となってくる。

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