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第百六十八話 無意識ですわ!

「こんにちわクリスタロスさん。この間頼まれたもの、何とか用意できそうだよ」


 会計さんに頼み事をした2日後、先日と同じように中庭のベンチで座っていた私の元に、会計さんが来てくれた。


「ありがとうございますですわ!」


 私はまさか本当に用意していただけるとはと言った感動と興奮が混ざり、とても大きな声量で感謝の言葉を述べた。


「いいよ気にしないで。明後日には渡せると思うから、お楽しみに」


 優しい笑顔を向けながらそう言ってくれた後、私の隣に腰を下ろした。

 


「‥いよいよだね。後3日だっけ?」


「‥はい。皆んなに話を聞いたら、予めて用意しておく事は殆ど済んだみたいで、後は最終確認と心の準備だけだそうです」


 それを聞いて会計さんは少し微笑んだ。


「そうだね心の準備は必要だ。人によってはそれが一番大事なくらいだからね」


 そう言った後、何かに気が付いたようにして、会計さんは気にかけながら私の方をじっと見つめてきた。


「ん?‥どうかしましたか‥ですわ?」


「いやね。先日会った時も‥いや、それよりも前からかな。クリスタロスさん、何か思い詰めた顔をしているなと思って」


「思い詰めた顔ですか?‥まぁそうですね。いよいよ作戦決行日が近づいて来ましたから‥みんなのことが改めて心配になってきて‥恐らくそれが原因だと思います‥ですわ」


「そうだね。それもあるだろうけど、それよりも君は気にしていることがある」


 私は気が付いているぞと言わんばかりに、会計さんはそう言い切った。


「私が気にしていることですか?‥ですわ」


「あーそうだとも、教えてあげようか?いや、君の中の不安を言い当ててみるとするよ」


 そう言って会計さんは私の胸に手を当ててきた。


「君は自分の無力さを気にしているんだ」


 私はそう言われた途端、明らかな動揺を見せてしまう。


「仲間たちだけが動いて、自分は何もしない。いや、出来ない。ただ仲間達が傷つくかもしれない不安の中で生きるしかない。その事を君は気にしているんだ」


 突如として、誰にも打ち明けたことのない、ましてや自分自身でも明確に言語化したことのないものを、言葉として発せられ、私は驚きのあまり何も言えなくなってしまう。


「‥ごめんね。こんな事本来するべきじゃないとは思うんだけど、やっぱり後悔してほしくないから」


「‥後悔ですか?」


 私は無理に返事をする。


「改めて考えて欲しいんだ。本当に君は無力なのか?何か力を得る方法があるんじゃないのか?少なくとも僕にはそう見えたけど」


 思い当たる節があり、それが頭をよぎる。


「君はそれを無理に見ないふりをしている。皆が私の為に頑張っているのだから、自分は余計な事をするべきではないと、そう言った言い訳を自分の中で無意識にしているんだ」

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