第十五話 入学ですわ!
「おいあれって今年の筆記試験一位だった‥」
「満点だったらしいよ」
「満点?!あのテストをか?!」
ところかしこから聞こえてくる、私に対する尊敬や嫉妬の声。
そのどれもが心地よく、私はそれに浸っていた。
「私今めっちゃ目立ってる!超頑張ったかいがあったって感じやな!なっ!にゃあ吉」
私は校門を潜ってすぐの大きな道の真ん中で、頭に乗せているにゃあ吉に話しかける。
「まぁそうだな‥。けれどリア、何も黄色い声援ばかりではないぞ」
「でも実技テストはほぼ0点なんだって」
「いやいや、逆にどうやってそんな点出せるんだよ。ありえないだろ」
私は一気に気を落とし、地面に崩れ落ちる。
「別に気にしてへんし、別に褒めてもらう為に頑張ったわけやないんやから」
「‥情けないぞリア」
にゃあ吉は可哀想なものを見る目でそう言いながら、私の頭を撫でる。
「てかあの上に乗せてる生き物なに?もしかして黒猫?」
「マジで黒猫じゃね?うわあんなの連れてくるとかどうかしてるだろ」
「ほんと気持ちの悪い」
素直ににゃあ吉に頭を撫でられていると、そんな言葉が聞こえてきた。
私は腹が立って、立ち上がり、にゃあ吉の悪口を吐いている人たちを睨みつける。
すると私が睨んだのに気づいた人たちは、少し気まずそうにしながら俯く。
「リア。気にしないでくれ、慣れている」
「私がいややの!なんなんあの人たち!」
諦めを見せるにゃあ吉に、私はそう言い返した。
「ふん。学年一位がどんなものかと思ってましたけど、黒猫なんて連れてる上に、同学年を睨みつけるなんて、とんだ愚か者ね」
先程睨みつけた人たちのすぐそばにいた、金髪頭のいかにもなお嬢様が、私に罵声を浴びせながら近づいてくる。
「あなた謝りなさいよ。さっきあなたが睨みつけたのは私の友達なの」
「先に悪口言ってきたんわそっちやろ。謝るならそっちが先や」
私の前に立ちはだかった彼女は、私にグッと顔を近づけて、馬鹿にしたような笑みを浮かべながら睨みつけてくる。
「ふん。その薄気味悪い生き物の悪口をいって何が悪いっていうの?」
「なぁにゃあ吉。この子私より悪役令嬢っぽくない?」
罵倒を繰り返す彼女を無視して、私はにゃあ吉に話かける。
「ちょっと聞いているの?早く謝罪を‥」
「あなたの話なんて聞きたくない。私の友達をこれ以上悪く言わんといて」
彼女が私を睨みつけるのと同様に私も睨み返す。
それに腹が立ったのか。少し余裕をなくした彼女は酷く眉間に皺を寄せていた。
「ちょっとこら!あなたたち!何入学して、そうそうに喧嘩してるの!」
すると門に立っていた先生が、私たちの方に向かって走ってきた。
「それではご機嫌よう。無礼なお方」
「シャャャー!!」
その場を離れていく彼女に私は威嚇をした。
「何をしてるんだリア」
「威嚇や。何やってんあの人たち、失礼やわ!」
そう言って私はにゃあ吉を抱き抱えて、頭を撫でる。
「だから私は‥気にしてなどいない」
その後私は軽く先生に怒られた後、入学式が行われる体育館に向かった。
「全く入学式すらまだ終わってないんだぞ。先が思いやられるな」
にゃあ吉は心配そうな顔をしながら、頭を押さえていた。
「まぁなんとかなるって」
そう私は6年という月日の努力が実って、ここ魔導学園に入学することができたのだ。
「きっとここに、主人公も入学しにくるはずや」
「それが君の友の、転生先の可能性があるって話だったな」
「そうや!」
ひとまず主人公を見つけ出して、何とか関係を持ち、前世での私の友達かを確認してみせる。
「それでは只今より、入学式を執り行います」
ようやく入学式が始まった。
あの後直ぐに、体育館に着いたのだが、開始まで随分と待たされてしまった。
どうやら新入生代表の一人が遅れてしまっているようだった。
「それでは新入生代表、リア・クリスタロスさん‥」
まず代表の一人は私だ。
筆記試験で満点を取ったことで選ばれたのだ。
そしてもう一人は実技試験で一位を取った、あの人の筈だ。
「そして、ラスト・ライトさん前へ」
ラスト・ライトやはり原作通りだ。
真っ白で透き通るような色、綺麗に手入れされ繊細さを保った長い髪に、真っ白い肌、顔つきはとても美しく、そして小動物のような愛くるしい可愛さも兼ね備えている完璧な容姿。
そして緑色に輝く、エメラルドグリーンの宝石のような瞳。
彼女こそが、「LOVE SCHOOL」 の主人公だ。
私は舞台に向かって歩く。
彼女は私よりも舞台に近いところに座っていたようで、私より先に舞台に辿り着いた。
私も辿り着くとまずは彼女に挨拶してみようと思ったが、先生が少し入学式が遅れたことから、なるべく早く終わらしてくれとの指示が入った。
私と彼女は、なるべく早く代表挨拶を済ませ、お互い会話を交わすことのないままはけていった。
「あー結局話せんかったー」
その後入学式中は当然話すことが出来ずに時間は過ぎ、終わった後も、各々の教室へ連れて行かれて会話を交わすことができなかった。
「結局私とライトさんは一番離れたクラスになってもうた」
「‥ついてないなリア」
クラスに皆が集められた後、全員で挨拶をするからもう少し残っていて欲しいと、先生から指示が出た。
けれど、その前に少し休憩を取るとのことで、私はその間に作戦を練ろうと、にゃあ吉をつれて、校舎裏のベンチのある庭に来ていた。
「どうしよか、にゃあ吉」
「リア前を向け」
にゃあ吉は真剣な顔をして、私にそう言った。
「見つけましたよ。新入生代表さん」
前を向くと入学式前に言い争ったいかにもなお嬢様と、その取り巻きらしき女性が四人ほど並んでいた。




