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第百十八話 苦手ですわ!

「いやぁぁぁ!怖いぃぃぃいぃぃ!」


 自信満々に橋を渡り始めたが、私はすぐに根を上げて引き返してしまった。


「‥もしかして、高いところ苦手なのかだよ?」


「もしかしなくてもそうやろ!あっ!ごめんな叫んじゃって!怖くてまともな判断が出来ひんくなってるわ!」


(にゃあ吉に抱えられて、高いところ行くんは怖くないんやけどな‥安心感の問題なんかな‥)


「全く‥そう言うことなら迂回するんだよ」


「えっ!?他の道あること知ってたん?!」


「別ルートがあることぐらいは知ってるだよ。どうせ吊り橋効果でも狙ってんたんだよ」


「バレてたんか!恥ずかしい!」


 私はそう言って、迂回するルートへ行こうと歩き出す。

 けれどその足は、すぐに止まってしまった。、


「ん?どうかしたのかだよ?」


「いや、勿体無いと思いだしてん‥せっかく吊り橋があるのに‥ごめんラリヤ!やっぱり戻ろ!」


 私は悩んだ末に、その様な結論に至った。


「大丈夫なのか?お守りはごめんだよ」


「大丈‥大丈夫じゃない‥かもしれへんけど!やっぱり吊り橋効果をスルーすんのは勿体無い!」


「それ‥あんまり自分から口に出さない方がいいと思うんだよ‥」



 


 私たちはゆっくりと橋を渡し出していた。


「ほら着いてきてラリヤ。怖かったら私の手握ってもええからな」


「そう言うセリフは、前に立って言うべきだよ。後、手を握りながら言うことでもないんだよ」


 私はラリヤの背にしがみつきながら、ラリヤの手を握っていた。


「ごめんなぁラリヤ。ほんまはここでもっとかっこいい事をやな‥計画台無しやぁ」


「メンタルが崩れたのか知らないけど、計画とか口にするなだよ」


 そう言って先に進むと、足場にヒビが入った。

 私たちは黙り込み、細かな木片が崖へと落ちていく音だけが聞こえる。


「おいクリスマス。やっぱり2人くっつきすぎていると、橋にものすごい負担がかかってしまうだよ。だからもう少し離れ、、」

「いややぁぁーー!」


 私は首を勢いよく左右に振りながらそう叫ぶ。

 その瞬間に、橋も同じように揺れ出してしまう。


「わかった!わかったから!揺れるなだよ。大馬鹿野郎」


「ありがとうラリヤ‥でも罵倒せんといてぇ‥傷つくぅ」


 恐怖からか私はメンタルが弱ってしまっていて、ラリヤはこの状況のストレスからか、普段より言葉遣いが荒くなっていた。


「意地悪なんて言ってないだろがだよ、超大馬鹿やろう」


「さっきより深く傷ついた!見てみるか?!私の心!」


「何だよ?服ひん剥けばいいのかだよ?」


「ごめんなさい。やめて下さい」



 長い橋とはいえ、通常は2,3分程あれば渡れるはずなのに、私たちは10分ほど渡るのにかかってしまった。

 けれどこれは完全に、私の責任だ。


「ごめんラリヤ!私のせいで、渡るのにめっちゃ時間取らせちゃった!そしてありがとう!ここまで運んでくれて!」


 私は何度もお礼と謝罪を繰り返す。


「はいはいもう大丈夫だよ。それよりせっかく着いたんだから、早く村に行こうだよ」


 その言葉に私は、凄く救われた気持ちになった。


「ありがとう!そうしよそうしよ!‥それからラリヤ。一つだけ聞きたいねんけどいい?」


「ん?何だよ?」


「吊り橋は効果あった?」


 そう私が言った途端、少し空気が変わった気がした。


「‥あーあったぞ」

 ラリヤは笑顔でそう言った。


「ほんま?!ならここ使ったかいあったな!」

 

「‥吊り橋のドキドキのおかげで、お前に対するイラつきが半減したからだよ。このドキドキがなければラリヤはクリスタロスに何をしていたかわからない‥ほんとよかっただよ」


「えっと‥ほんまごめんやわ‥」


 笑顔のまま怒りを露わにするラリヤはとても怖かった。

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