第百十話 早速ですわ!
「そんで当日や」
ラリヤの正体を知り、生徒会へ呼び出されたと言った濃い一日を送った翌日の朝、早速にゃあ吉には人の姿になってもらい、学校へと向かった。
「前はこの姿になって学園に訪れた際に、組織が攻めてきたんだったな。何も起きなければいいが」
「不吉な事言わんといてや‥」
そんな会話をしながら登校し、ララと出会い一緒に学校へと向かう。
「ところで、一体どう言った意味での呼び出しなんでしょうか?」
「にゃあ吉のこと?ララも聞いてないんや」
「はい。私は今組織の事を調査する協力をお願いされていて、時々生徒会に呼ばれたりしますが、アキさんの話は聞いていませんでした」
「なら組織絡みの用事じゃないかも知らへんな、にゃあ吉」
「どうだかな‥」
学校に着くと、生徒たちがざわつき始める。
特に女子生徒だ。
「誰?!あのイケメン!?」
「本当だ。学園にあんな人いた?」
「一体誰なんだろ」
にゃあ吉を見るや否や皆が口にするのは、なんてかっこいいのかと言った黄色い声援、そしてこの人物は一体何者なのかと言った疑問の声。
(相変わらず、にゃあ吉は物凄い注目されるな‥)
そして何人かの女子生徒がこちらに近づいてきた。
「あの!転校生さんですか?」
「学園を見学に来たんですか?宜しければ案内します!」
「宜しければ、お名前を教えていただけませんか?」
そして皆口々に、にゃあ吉となんとか関わりを持とうとした会話を持ちかける。
するとにゃあ吉は、口を開く。
「確かこの前は、手を繋いで校舎に入ったのだったな‥」
「うん。そうやったな‥めっちゃ恥ずかしかったわ」
「今回もそうしようかと思ったが、同じ事をしてもつまらないしな」
「え?」
するとにゃあ吉は、意地悪な笑みを浮かべた後、途端に私を抱き上げ始める。
(え?!何で急校門の前でお姫様抱っこなんかしてんの!?)
そして集まっている女子生徒たちに、にゃあ吉は笑顔でこう言った。
「すまないな君たち。私には既にフィアンセがいるんだ。せっかくのお誘いだが、お断りさせていただく」
そう言ってにゃあ吉は、校舎へと向かい歩き始める。
(何や今の話し方!あんな丁寧にいつも話さへんやろ!)
そしてやはり、意地悪な笑みを浮かべながら私を見つめ、口を開く。
「それじゃあ行こうかリア」
「行こうかじゃないわ!めっちゃ注目させれてるやん!おーろーしてー!」
私はジタバタと暴れる。
けれどそんな事お構いなしに、にゃあ吉はとても楽しそうに笑いながら校舎へと進む。
「いいじゃないかリア。男がいるとわかれば、お前も変な輩が寄ってこなくなって楽に過ごせるぞ」
「私はにゃあ吉みたいにモテてへんからこんなことせんでええねん!モテててもこんな事せんでええわ!」
するとララがこちらに近づいてきた。
(助けてくれるんか!)
「あの‥リア様って、アキ様とそう言った関係なんですか?」
「え?‥違うで!にゃあ吉の悪ふざけや!」
早速勘違いされていた。
後ろからは嫉妬の声が聞こえてきて、前からはにゃあ吉の笑い声が聞こえてくる。
(全く‥朝から何て状況やねん)
校舎に辿り着くと、満足したのかにゃあ吉はようやく私をおろした。
そして偶然先生が私たちの前を通りかかる。
「あっ!おはようございます先生。ですわ」
「ん?あークリスタロスさん。おはようございます。‥お隣の彼がアキさんですか?初めまして、本日はお越しいただきありがとうございます」
にゃあ吉は「気にする事はない」と、相変わらず偉そうな態度で返事をする。
「それじゃあクリスタロスさん。早速生徒会室に向かってくれませんか?」
「え?でも授業始まっちゃいませんか?ですわ?」
「そこまで時間は取らないと生徒会長さんは仰っていたので、大丈夫だと思います。もし1限目に遅れてしまっても遅刻扱いにはしませんので」
私は「わかりました」と了承したが、それほどまでに急ぎの用となると、やはり不安になってきた。
その後私はララと別れ、にゃあ吉と共に生徒会室を目指した。
生徒会室は別校舎にある。この校舎から歩いて10分程度の距離だ。
「早く来たとはいえ、1限目には絶対間に合わん気がするんやけど」
「朝礼の時間もある事だし、話が5分ほどで済めば間に合うのではないか?」
そんな会話をしながら進み、遂に生徒会の前にたどり着く。
この校舎にすら入った事がなかったので、何だか不思議な気分だ。
「一体何の用事なんやろ‥それに生徒会の皆さんがどんな人なんかもわからへんし‥あかん緊張してきたわ‥」
「私がいるのだから大丈夫だ。安心しろ」
にゃあ吉は相変わらず、物凄い自信だ。
けれどそう言った言葉のおかげで、緊張がほぐれた。
「それじゃあ‥早速入ろか」
にゃあ吉は返事をする。
そして私たちは、ゆっくりと生徒会室の扉を開けた。




