表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/300

第十一話 お姫様抱っこですわ!

「え?どう言うこと?にゃあ吉は猫じゃなくなったってこと?て言うか元々人やったん?え?ん?」


 私は混乱していた。

 何ていったって、目の前にかつて猫だった少年が立っているのだ。

 この文だけでも意味がわからない。

 私の友達だった猫はある日突然いなくなり、代わりに同じ瞳と声を持つ少年がいました。

 この事実を目の当たりにして、「あー猫が少年になったのか」と素直に受け入れられるわけがない。


「まぁ落ち着けリア。リアの言う通り私の元の姿は人間だ。そしてもう猫じゃなくなったのかと言われればそれは違う。私は魔力が無くなると、猫になってしまうんだ」


 そんなファンタジーなことがあるのだろうかと思った。

 けれどそれは起きる事なのだ。

 なぜかと言えば、ここはファンタジーを舞台にしたゲームの世界なのだから。

 私はにゃあ吉の言葉を信じるしか無かった。


「ま、まぁええわ。とりあえず助けてくれてありがとう。ほんま疲れたわぁ」


 私はにゃあ吉の腕の中でぐったりとしてしまう。


「まぁ確かにあんなことがあったのだからな。それに私がリアの魔力を貰ったのだから尚更だろう」


「え?魔力?何のこと?」


「その事も知らないのか‥まぁいい。ひとまずここを離れよう。また面倒ごとに巻き込まれるのはごめんだからな」


 そう言ってにゃあ吉は歩き出す。


「ちょっとにゃあ吉‥恥ずかしいんやけど」


 にゃあ吉は私をお姫様抱っこのままで運びながら、歩いている。


「何を言うリア。いつも君は私をこうして抱き抱えてるじゃないか」


 にゃあ吉は意地悪な笑みを浮かべる。


「人間の姿と猫の姿やと見え方が違うやろ‥」


 小声でそう言い返す私に、にゃあ吉は笑って見せた。


「リア様ー!どこですかー!」


「‥つい先日もこの様なことがあったばかりだな」


 アリアが辺りを見渡しながら私の名前を叫び続けている。


「ほらアリアに返事でもしてやったらどうだ?」


「いやや。この前怒られたばっかりやのに‥もう終わりや。にゃあ吉何とかしてくれ」


「はぁやれやれ」


 にゃあ吉は呆れた様子でアリアに近づく。


「ご婦人。探し人はこちらかな」


「あっ!リア様!」


 にゃあ吉が私をそっと下ろした後、アリアが抱きついてくる。

 

 (この前もあったなぁ)


 こんな頻度でピンチに陥っていいものなのか。

 自分のドジさが少し憎い。


「どこに行ってたんですか!急に走り出して!あんな速度で走られてしまったら、見失ってしまいますでしょ!」


 アリアは一通り私を抱きしめた後、改めてしっかりと怒る。


 (まずい!どうやって切り抜けよ)


 反省しないといけないのはわかる。

 けれどもう説教は懲り懲りだ。

 私は必死に頭を回す。


「まぁ彼女は被害者です。多めに見てあげて下さい」


 私が考える最中に、にゃあ吉がそうアリアに声をかけてる。


「あっ先程はリア様をここまで持って来て下さりありがとうございました」


 (持ってきてって‥私は物か何かか)


「それで被害者というのは?」


 アリアが不安そうににゃあ吉に問いかける。


「彼女は猫と食事をしていた矢先、男4人に連れ去られそうになっていたんです」


 アリアは偉く驚いている。


「そこを偶然通った私が助けた訳です。彼女はショックのせいか体調が優れなさそうだったので、ここまで運んできました」


 嘘はつかず、かと言って大事なところを抜いて話している。

 にゃあ吉は上手く誤魔化せただろと言った顔をこちらに向けてくる。


「そうだったんですね‥。このお礼は必ずさせていただきます。本当にありがとうございました」


 アリアはそう言いながら頭を深く下げる。


「気にしないで下さい。私はこれで」


 そう言って、にゃあ吉はその場を離れていった。


「良い方に助けてもらえて幸運でしたね。リア様も言われのない怒りをぶつけてしまい申し訳ございません」


「いい、いいって、ほんまいいから頭あげて」


 別に騙していると言ったほどではないが、罪悪感が押し寄せる。


「それでリア様。あの黒猫はどちらに?」


「あっあー!」


 (そうやん。そのことはどう言えばいいねん)


 私は何も考えていなかった。

 どうしたらいいのか頭を回すが、先ほどの疲れで上手く頭が回らない。


 (うー。頭がパンクしそうや。そもそもにゃあ吉は、何処に行ったんや)


「にゃー」


 すると突然にゃあ吉が顔を出した。


「あれ?!にゃあ吉?」


「にゃーにゃー(戻ってきたぞ。上手く誤魔化せ)」


「あれ?先ほどの間は何処におられたんですか?」


「あっ、あーそういや襲われた時に、にゃあ吉はすぐそばの店に隠したんやった忘れてた忘れてた」


「にゃー(嘘が下手すぎるぞ)」


「そうなんですね。何はともあれ無事でよかったです」


「にゃー?!(何故信じるんだ?!)」


「まぁほんと何はともあれ一件落着やな」


 私たちは帰るため、家へ向けて歩き出す。

 今日は災難な目にあった。

 良い一日だったとはとても言えない。


 けれどにゃあ吉と一緒に食べたご飯は美味しかったし、にゃあ吉の人間の姿が見れた。

 何も悪いことだけな一日だった訳ではないのも確かだ。


「なぁにゃあ吉。またあの人間になった理由とか詳しく教えてや」


「あーリアは魔法について知らないことが多すぎるからな。詳しく教えてやろう」


 何だかんだで家についた後、今日起きたことの報告を両親にしたところ、案の定母に心配させてしまい泣かせてしまった。


 当分外には出ない方が良いのかもしれない。

 あまり心配ばかりかけるのも心が痛む。


 その事をにゃあ吉に話すとこの様な返事が返ってきた。

「ならちょうど良い。ここらで魔法について教えてやろう」


 にゃあ吉先生の魔法教育が始まるみたいだ。

 まぁ他の勉強と違って興味のある事だからよしとしよう。


 にゃあ吉はこの世界の魔法について話し始める。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ