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不滅のダンジョンマスター  作者: やみあるい
第三章 勇王国進軍の章

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87.束の間の安息

あらすじ


ダンジョンの外では、魔鹿たちが敗北寸前まで追い詰められていた。

しかしそんな状況を前にして、人間たちは撤退を開始していたのだ。

その理由は、勇王国キサラギの王都が滅んだから。

そのため、急遽王都へ帰還するようにと伝令が来ていたらしい。

果たしてそれは真実か、或いは偽の情報か。

どちらであろうとも、撤退を始めた人間たちを追撃するのは危険すぎる賭けだ。

ガルセコルトを黒牙に殺させて、強くなった黒牙に追撃させる。

そんな可能性も考えたが、感情論が邪魔をして結論は出せない。

結局私は、撤退していく人間たちを追撃することは出来ず、病魔の森中に放った魔鼠情報網を動かして、彼らの足取りを追うにとどめた。


そうして、私たちと人間たちとの戦いは、一先ず何とも言えない微妙な終わりを迎えたのだった。



 人間たちが撤退していった日から、早くも五日の時が過ぎた。まだ、人間たちが再侵攻にやってくる気配は無いが、油断は出来ない。

 魔狼たちや魔鹿たちという戦力が、未だこの場にいてくれているとはいえ、来たるべき日の為にもう一度、戦力の増強に取り掛かるべきだろう。


 今回の侵攻で、私はダンジョン探索を得意とする冒険者たちに、罠や迷路が大して役に立たないということを思い知った。まあ、奴らのスキルがどのように発揮されているのかさえわかれば、そこを逆手にとる手段があるのかもしれないけれど、現状ではそれを探る時間が無い。

 それでも一応、今回の侵攻に参加した探索系スキル持ちの高ランク冒険者は全員返り討ちにしたが、次の侵攻時にはまず確実にその辺りの人員補充も行ってくるはずだ。

 そこで私は、罠と迷路という手段を抜きにして、ダンジョンの戦力を高める方法を考えた。

 そうして私が考えたのは、新たな魔物の召喚だ。

 だが、新たな魔物の召喚には先立つものが必要である。ダンジョンの機能を活用するために必要となる力、DPだ。

 DPを手っ取り早く増やす方法と言えば、配下に狩ってこさせた魔物を吸収してDPへと変換することである。そして今、私が森の中を自由に動かせる配下の中で、それを行える者と言えば、黒牙のみ。それにより多くのDPへと変換できる魔物というのは、ランクやレベルの高い強い魔物だ。それを黒牙に倒させることは、黒牙の強化にも繋がるだろう。

 つまりそれは、私の切り札である黒牙の力を高めつつ、ダンジョンに新たな戦力を生み出すためのDPも稼げる一石二鳥の方法。戦力の増強を考えるのであれば、やらない手は無いだろう。実際、人間たちが侵攻してきた際も、この方法でDPを貯めていたのだ。

 やり方はもう、分かっている。

 だが、その時と今とでは少し状況が違う。

 今の状況で黒牙をダンジョンから離し過ぎるのは、さすがに怖い。

 人間たちの動向を魔鼠情報網で探らせているとはいえ、森に散らばった魔鼠たちが齎す情報は、遅いうえに大雑把だ。人間たちが唐突に撤退から反転して再侵攻を始める可能性を考えると、やはり黒牙にはダンジョンの側にいてもらいたかった。

 ただ、そのためだけに黒牙をずっとダンジョンへ待機させておくというのは、さすがに勿体ないとも思う。緊迫した状況の中で、黒牙にも何かをさせておきたい。

 少しでも、この状況を好転させるための何かを。

 そうして散々迷った末に私は、一先ず黒牙を引率役とし、繁殖を期待してこれまでダンジョンに住まわせていたゴブリンたちと、あの戦いを生き残った二匹のゴブリンシャーマンたちに、ダンジョン近くの森で、戦闘の訓練と様々な森の恵みの採取をさせることにした。

 我ながら当初の予定と比べて、かなり質の下がった戦力増強方法だとは思うけれど、何もしないよりはマシだろう。そう思うことにして。



 ゴブリンシャーマンたちに関しては、相変わらずの体力の無さに殆ど役立ってはいないようだが、ゴブリンたちは持ち前の器用さと環境適応能力を発揮して、あっという間に森での活動にも慣れ始め、そろそろ黒牙の引率も必要ないのではないか、という所まで来ている。

 そもそも、ダンジョン近くの森であれば私の知覚がある上に、強い魔物は黒牙が殆ど狩ってしまい、戦闘に関しての危険は殆ど無い。

 それに加えて、弱い魔物であればゴブリンたちでも協力して倒すことが出来るようになったため、黒牙の出番は完全に無くなってしまっていた。

 黒牙にはまた別の仕事を割り振るべきだろうか。


 とはいえ正直、これらは全て気休めだ。黒牙をただ待機させるよりはマシだろう程度の意味しかない。

 今更ゴブリンたちが少し強化されても、一般騎士の相手すら厳しいだろうし、ゴブリンシャーマンたちにしても、たった二匹が少し強化されたところで、あまり意味は無いだろう。

 ただ、ゴブリンたちの採取した森の恵みに関しては、少しだけ使いどころがあった。


 森の恵みをDPに変換したとしても、ゴブリン数匹が集まられる量では数DPにしかならないだろう。それに今は、森の恵みを活用してポーションなどを作る技術を持つ配下もいない。

 だが、そんな森の恵みを欲しているものがいたのだ。

 それは魔鹿たちである。特に先の戦いで重傷を負い、その巨体故にダンジョンへ立ち入ることが出来ず、回復の泉を使えなかった為、碌に動けずにいたジャイアントディアーには、貴重な食料となったようで、大変喜ばれた。

 そんなジャイアントディアーだったが、クリスタルホーンディアーが伝えてきた通り、食べて、寝てを繰り返すことで信じられないほどの自然治癒力を発揮し、たった二日程で殆ど元通りに回復してしまっている。

 かなりズタボロだったように思うのだが、ダンジョンからの魔力供給がある訳でも無いのに、さすがにちょっと異常だ。

 まだジャイアントディアーはダンジョンに入ったことが無いので、ステータスは確認できていないけれど、私はその事からジャイアントディアーが己の自然治癒力を強化するような系統のスキルを所持しているのではないかと睨んでいる。


 ちなみにジャイアントディアー以外の二匹の魔鹿のステータスに関しては、先の戦いの後に回復の泉を使って貰った事で確認済みだ。



 名前:――――

 種族:クリスタルホーンディアー ランク:B

 年齢:52

 カルマ:-17

 LV:36/80

 スキル:『聴覚LV7』『夜目LV7』『森歩きLV7』『気配察知LV8』『角術LV3』『魔力感知LV10』『魔力探査LV5』『魔力操作LV10』『魔力制御LV7』『岩石魔法LV5』『威嚇LV7』『体術LV5』『身体強化LV3』『連携LV7』『山歩きLV10』『地形把握LV7』『加速思考LV5』

 称号:【結晶角】


 名前:――――

 種族:ブラッディーホーンディアー ランク:B

 年齢:34

 カルマ:-11

 LV:39/75

 スキル:『聴覚LV7』『夜目LV7』『森歩きLV5』『気配察知LV8』『角術LV10』『真・角術LV5』『威圧LV5』『体術LV10』『身体操作LV5』『身体強化LV8』『見切りLV5』『連携LV7』『山歩きLV8』『地形把握LV5』『猛突進LV7』

 称号:無し



 私がこのステータスを確認した時、一番気になったのはそのレベルだった。スキルだけで言えば強力な上級スキルが相応に育っているけれど、それに比べてレベルはそこまで高くはない。レベルだけで言えば、つい最近Bランクへと進化を果たした黒牙よりも低いくらいだ。


 魔鹿たちが戦っていた騎士団の指揮官たちから感じた強さは、ダンジョンに侵入してきたBランク冒険者たちから感じる強さ以上だった。

 必ずしもそれが実際の強さに直結する訳では無いというのは、先の戦いでもう十分に分かっていることだけど、レベルを予測するための目安にはなるだろう。

 そこから考えると、恐らく騎士団の指揮官たちのレベルは五十前後だ。

 さすがにこれ程レベルに差があると、戦いにも影響が出てくる。特に単純な戦い方を得意とする魔鹿たちであれば余計に。

 そう考えると、魔鹿たちはよくあの指揮官たちを抑えられたものだと思えてくる。

 最終的には敗北一歩手前まで追い詰められてしまったが、それでも生き残ったのは奇跡というべきなのかもしれない。

 本当に、あの状況で人間たちがもし撤退をしていなければ、今頃は三匹とも完全に命を絶たれていたことだろう。

 だからこそ、人間たちの突然の撤退の理由はとても気になる。



 そんな撤退していった人間たちのその後についても、魔鼠情報網を通じて少しずつ私の下へ情報が届き始めていた。

 ケーブラットたちが伝言リレー形式で運んできた情報なので、あまり細かな所までは分からないが、どうやら人間たちはその後も、迅速な動きで切り開いた道を引き返していき、一部はすでに森の外まで撤退していったようだ。まさに強行軍とでも言うべき速度である。

 まあ確かに、早馬で伝えられた情報が真実であったのなら、そのくらい焦って行動していてもおかしくはないだろう。

 けれど、それを伝えられた今でも、私は勇王国が滅んだという情報に懐疑的だった。

 あまりにもこちらにとってタイミングが良すぎるという点、ダンジョンに侵入していた高ランク冒険者たちを置いて撤退を始めた点、それに先の戦いにおいて、私の知るAランク冒険者イグニスが出てこなかった点も。

 考えれば考える程に気になる部分が増えていく。

 ダンジョンの前から人間たちはいなくなったが、未だ私の心には私の命を狙ってダンジョンへ攻め込んでくる人間たちが居座っている。

 あんなにもあっさりと終わる訳がない。

 何か、何か裏があるはずだ。

 そんな風に思ってしまうからこそ、私は大胆に動くことが出来ず、何も出来ぬ歯がゆい日々を送っているからこそ、そんな考えが余計に思考を過ぎってしまうのだろう。

 悪循環だ。

 いっそのこと、撤退していった人間たちが今すぐにでもダンジョンへ攻め込んで来れば、こちらも相応の対応を考えることが出来るのに。

 何かを考えるには、情報が不足している。

 一先ず、今回の戦いで相手側に与えた損害を、分かっているだけでもまとめておこうか。



『記憶』の中を思い返し、主思考、副思考が知覚して集めた情報を精査していく。

 人間側に与えることが出来た被害は、まず勇王国騎士団から通常の騎士が八十三名、精鋭と呼ばれていた騎士が六名、そして指揮官から第二騎士団団長リッシュバルトの左腕。

 とはいえ、リッシュバルトの左腕は重傷ではあったが、実際の所は深く切り裂かれただけで、以前のAランク冒険者イグニスのように、切り落とされた訳では無い。

 その上、相手は勇王国第二騎士団団長の肩書を持つ指揮官だ。ポーションなり、『神聖魔法』なりで傷を癒し、次の戦いには完全な状態で挑んでくることだろう。


 それから高ランク冒険者が十八人。その内、二人はガルセコルトが行った夜襲により倒した者たちで、あとの十六人はダンジョンに侵入してきた所をガルセコルトと黒牙がそれぞれ返り討ちにしたものだ。

 私が知覚した範囲では、やってきた高ランク冒険者はあれで全てだった。しかし、ずっと私の中に疑問として残っているように、まだ人間側には危険な高ランク冒険者が存在していることを私は知っている。

 最初にダンジョンを襲った、竜の装備を身に纏うAランク冒険者イグニス。

 先の戦いでは不参加だったが、もし次の戦いがあれば参加してくるかもしれない。


 こうして考えてみると、冒険者たちにはかなりの被害を与えることに成功したが、肝心の勇王国騎士団や勇王国魔導士団には、殆ど被害らしい被害を与えられなかった。

 一応、騎士八十三名と精鋭と呼ばれていた騎士六名を葬ったが、葬った騎士の十倍以上の騎士がまだ控えていたのを覚えている。

 葬った数だけを思えばそれなりの数だと思えるが、全体の割合で考え直してみると、その損害は全騎士の一割にも満たないのだ。

 特に指揮官を一人も殺せなかったのが悔やまれる。

 指揮官たちはあの騎士たちの中にあって、高ランク冒険者並みの強さを有していた。それに騎士たちの本領は明らかに指揮官の指揮があって初めて発揮されている。

 幾十の騎士たちを打ち倒すより、一人の指揮官を葬ることの方が重要だったのだ。

 もう少し時間があれば、一人くらいは指揮官を倒す機会はあったかもしれない。

 そういう意味では、やはりあの撤退は意図的なものだったのか。


 まあ全ては、今更の事。

 たら、れば、を考えるのはいいが、その思考に拘泥しすぎると、意味のない後悔へ浸ることになる。

 やはり少し無理をしてでも早急に、もう一度戦力を増強する必要があるだろう。



 しかし、そんな決意をした日の夜。

 事態はまた、思わぬ方向へと動き出すのだった。








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