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不滅のダンジョンマスター  作者: やみあるい
第三章 勇王国進軍の章

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83.ガルセコルトの戦場

あらすじ


ダンジョン前での戦いは始まりからずっと魔鹿たち有利に進んでいた。

しかし騎士団の指揮官たちが参戦したことにより、戦いに変化が起きる。

ジャイアントディアーの突進は騎士団副総長バルガスに止められ、ブラッディーホーンディアーの鋭利な角は第二騎士団団長リッシュバルトに弾かれた。

次第に人間側の有利へと傾いていく状況を察して、クリスタルホーンディアーが特大の魔法を放ったが、一時的に不利となった人間たちはすぐさま体制を立て直してしまう。

もし人間たちが勝利すれば、ダンジョン手前の土地は制圧され、ダンジョン内の高ランク冒険者たちは強力な援護を得る。

人間たちの勝利はすでに時間の問題だ。

あとはどれだけ魔鹿たちが耐えてくれるのか、それに掛かっている。



 ガルセコルトの待ち受ける第二階層の中部屋を抜け出た三つの高ランク冒険者パーティーは、魔狼たちの操る複製体のファングウルフをその圧倒的な力で蹴散らしつつ、第三階層へと続く階段のある部屋までやってきた。

 ここを守る守護者は、速さと連携を生かした戦法で敵を翻弄するフォレストウルフと四匹のファングウルフたち。知略でこそ第一階層の守護者ゴブリンリーダーに及ばぬが、既に全員が覚えているスキル『身体強化』を発動したフォレストウルフたちの身体能力は、第一階層の守護者たちを遥かに凌駕する。

 だが、そんなフォレストウルフたちは、部屋へ立ち入った瞬間に繰り出された、神姫の槍の冒険者による素早い連続突きを避け切れず、何一つできぬまま串刺しにされてしまった。

 事前に身体の内に魔力を巡らし、『身体強化』を発動させていたにも関わらず、だ。

 勿論、この先で待つ私の切り札たる黒牙は、ランク制限に縛られた守護者たちよりも遥かに強い。進化を果たした黒牙に、DPブーストという瞬間的な火力も追加すれば、あの三パーティーが相手でも勝つことは出来るだろう。

 しかし今回の戦いは、ただ黒牙が勝てばいいという訳では無い。

 黒牙がいるのは、第四階層に出来たこのダンジョンで二番目に大きな部屋だ。その先はもう、ダンジョンコアの置かれた第五階層の部屋まで何の守りも用意されていない。

 たった一人でも黒牙から逃げ延びて、その先に進まれてしまえば、その先に待つのは私の死のみ。

 黒牙には是が非でも、完璧なる勝利を成して貰わなければいけない。


 そのためにも、何か黒牙の為に出来ることはないか、まだ気付いていないことはないのか。

 黒牙の身体は魔鼠にしては巨大だが、それでも人間たちと比べれば遥かに小さい。その身体で先へ進ませないという目的を成そうというのなら、広い部屋の中で戦うよりも狭い通路で戦った方が利点は多いのではないか。

 それは、昨夜から私が何度も思った事である。

 だが、そんな私の考えは、黒牙自身が否定した。黒牙は自分から広い部屋で戦うことを希望したのである。

 なんでも、全力を出すのなら広い方が良い、そうだ。

 実際に戦う黒牙自身がそう望むのであれば、もう素人の私に意見できることなど無い。

 今のところダンジョン内で広い部屋は二つ。第二階層の中部屋と、第四階層の一部屋のみ。

 説得に成功したことでガルセコルトにも戦いに向いた広い部屋を用意しておく必要があったので、そこも含めて配置を考えるべきだろう。

 その二択であれば、最深部に近く、最終防衛線となる第四階層の部屋には、是非とも黒牙にいてほしい。それに第四階層であれば、魔力供給率にも余裕があった。魔力供給は黒牙の体調を万全に整えてくれるだけでなく、傷や魔力の回復具合にも影響を与える。それは転じて、戦闘力の向上にも繋がるだろう。少しでも勝率を上げたいと望むのであれば、第四階層を戦場とするべきだ。

 思考の道筋を辿り直して、浮かんだ疑問を潰していく。

 大丈夫。こちらに関しては、もう出来ることは何もない。

 あと私に出来るのは、現在進行形で知覚から得ている高ランク冒険者たちの情報を、黒牙へ伝え続けることだけだ。



 外での戦闘の知覚を任せていた副思考とは別の副思考が、少し厄介になりつつある戦況を感じている。それはガルセコルトがいる部屋を知覚をしている副思考だった。

 ガルセコルトと魔獣狩りの戦いは、外の戦い以上に黒牙の戦いへ影響を与える戦いだ。万が一、ガルセコルトが破れてしまえば、そのまま魔獣狩りという強力な高ランク冒険者パーティーが、黒牙と三つの高ランク冒険者パーティーとの戦いに参戦してくる。さすがにそうなれば、黒牙といえど危険だろう。

 幸いと言うべきか、三つの高ランク冒険者パーティーはまだ第三階層の途中にいる。その間にガルセコルトの戦いを知覚する副思考が記憶した情報も整理しておこうか。


 その前に今一度、Aランク冒険者パーティー魔獣狩りのステータスを確認しておく。



 名前:ルーヴァス

 種族:人間 職業:戦士

 年齢:42

 カルマ:-2

 LV:63/99

 スキル:『剣術LV10』『重剣術LV5』『体術LV10』『身体操作LV5』『採取LV3』『解体LV8』『気配察知LV8』『見切りLV7』『連携LV10』『闘気術LV7』『指揮LV5』『威圧LV7』『記憶LV7』『交渉LV3』『信仰LV3』『社交LV1』『森歩きLV3』

 称号:【勇神ユウトの加護】【勇王国カツラギの民】【勇神ユウトの信者】【Aランク冒険者】【Aランク冒険者パーティー:魔獣狩り所属】【魔獣の殺戮者】


 名前:スルークス

 種族:人間 職業:戦士

 年齢:43

 カルマ:-5

 LV:62/99

 スキル:『槍術LV10』『重槍術LV5』『体術LV10』『身体操作LV5』『採取LV3』『解体LV7』『気配察知LV7』『連携LV10』『威圧LV5』『記憶LV7』『見切りLV7』『闘気術LV7』『信仰LV3』『森歩きLV3』

 称号:【勇神ユウトの加護】【勇王国カツラギの民】【勇神ユウトの信者】【Aランク冒険者】【Aランク冒険者パーティー:魔獣狩り所属】【魔獣の殺戮者】


 名前:パルトマイン

 種族:人間 職業:狩人

 年齢:39

 カルマ:3

 LV:61/99

 スキル:『弓術LV10』『豪弓術LV5』『遠目LV5』『夜目LV7』『気配察知LV10』『気配探査LV3』『短剣術LV8』『体術LV10』『身体操作LV3』『採取LV6』『解体LV9』『威圧LV7』『記憶LV5』『見切りLV7』『連携LV10』『闘気術LV5』『信仰LV3』『森歩きLV3』

 称号:【勇神ユウトの加護】【勇王国カツラギの民】【勇神ユウトの信者】【Aランク冒険者】【Aランク冒険者パーティー:魔獣狩り所属】【魔獣殺し】


 名前:ギシフ

 種族:人間 職業:魔術師

 年齢:47

 カルマ:7

 LV:65/99

 スキル:『杖術LV8』『体術LV8』『採取LV7』『魔力感知LV9』『魔力操作LV10』『魔力制御LV3』『生活魔法LV8』『筆記LV5』『魔術理論LV8』『連携LV10』『魔法陣学LV5』『記憶LV7』『見切りLV3』『威圧LV5』『信仰LV3』『森歩きLV3』

 称号:【勇神ユウトの加護】【勇王国カツラギの民】【勇神ユウトの信者】【賢者の塔所属】【Aランク冒険者パーティー:魔獣狩り所属】【魔獣殺し】


 名前:ネルサン

 種族:人間 職業:神官

 年齢:40

 カルマ:-16

 LV:55/99

 スキル:『信仰LV8』『連携LV10』『鈍器術LV7』『盾術LV5』『体術LV8』『魔力感知LV7』『魔力操作LV7』『生活魔法LV5』『神聖魔法LV8』『採取LV5』『解体LV3』『記憶LV8』『森歩きLV3』

 称号:【勇神ユウトの加護】【勇王国カツラギの民】【聖女神リクシルの信者】【勇神ユウトの信者】【Aランク冒険者パーティー:魔獣狩り所属】【魔獣殺し】



 そのステータスは総じて、Aランク冒険者と呼ばれるにふさわしいものだった。昨夜の戦闘を思い出してみても、こちらの脅威となることは明らかである。もしも黒牙が彼らと戦うことになっていたら、黒牙は相当に苦戦したことだろう。

 だが、そんな彼らの相手をしているのは、昨夜彼らの仲間の一人を含む四人の高ランク冒険者たちへ重傷を与えたガルセコルトだ。

 まあ、昨夜の戦いではガルセコルトもまた彼らに数多くの傷を付けられたことから、さすがに楽観できるとまでは思っていない。

 でも正直なところ、ガルセコルトに分がある戦いだとは思っていた。

 なにせ、昨夜と比べ、ガルセコルト側に有利な条件が多く揃っている。

 今はガルセコルトが最も得意とする夜では無い。しかし、昨夜と違い、闇の魔力は封じられていない。つまりガルセコルトは、昨夜以上に全力で戦うことが出来るはずだ。

 それに対して魔獣狩りはというと、ここには昨夜のような騎士団の援護も無く、昨夜の戦いで仲間も一人欠けた状態。

 全ての状況がガルセコルトの有利に働いている。そう思っていたのだが……。


 私が知覚した現状は、むしろ魔獣狩りがガルセコルトを押しているようだった。



 ガルセコルトと直接戦っているのは、大剣を手にした戦士ルーヴァスと大槍を手にした戦士スルークスの二人。その後方では、重そうなメイスと大盾で武装した神官ネルサンが二人の後衛たちを守っている。守られているのは大弓を構えた狩人バルトマインと、魔術のために魔力を高めている魔術師ギシフだろう。


 その中でも私が最初に気になったのは、神官ネルサンだ。

 神官と言えば、後方から『神聖魔法』による支援を行う職業だと思っていたが、この魔獣狩りに所属するネルサンに限っては、そんな神官という職業に抱くイメージとは全く違っていた。

 神官ネルサンは、時折飛んでくるガルセコルトの攻撃を、そこらの戦士よりも見事な身のこなしで防いだうえに、反撃まで加えようとしている。魔獣狩りの神官は戦術だけでなく、戦意まで高いようだ。

 それはまさに、この魔獣狩りという冒険者パーティーの在り方を表している。


 ネルサンに守られた狩人バルトマインと魔術師ギシフも、前衛として戦っている二人の戦士の動きを見て、的確な瞬間に矢と魔術で援護を続けていた。その威力はどれもが、魔獣狩りというパーティーに相応しい威力を持っており、ガルセコルトに確かな傷を与えている。


 だが、やはりこの戦闘で最も活躍しているのは、前衛として直接、ガルセコルトと戦い続けている二人の戦士だろう。

 大剣の戦士ルーヴァスと大槍の戦士スルークス。戦闘スタイルこそ大きく違っているが、この二人の戦い方は何処か昨夜の騎士団総長デュランダルを想起させた。その巨大な武器による威力や動きの素早さもさることながら、まるでガルセコルトの動きを読んでいるかのように攻撃を避け、逆に的確な攻撃を加え続けているのだ。

 ガルセコルトが動く前にその動きを読んで攻撃を避け、逆に避け辛い箇所を狙って攻撃を加えていく。

 何らかのスキルの効果かとも思ったが、彼らのステータスにはそれらしいスキルは無い。だとしたら、あと考えられるのは【魔獣殺し】と【魔獣の殺戮者】の称号。

 称号の並びや、その名から感じられる意味からして、【魔獣の殺戮者】は、【魔獣殺し】と同系統の称号。恐らくは【魔獣殺し】より、上位の称号だろう。


【~の殺戮者】という称号の方はともかく、【~殺し】といった類いの称号は、幾つか知っている。かつての配下であるゴブ太が持っていた【邪妖殺し】や、黒牙が最近手に入れた【魔蟲殺し】だ。

 いずれもその系統の種族を多く狩ることで、習得出来る称号である。とはいえ、称号の習得条件にはいまいちわかっていない部分も多い。この称号にしても、その系統の種族を多く狩るだけで、同じ称号を手に入れられるわけではないようだ。

 しかし、少なくとも、その系統の種族をひたすら多く狩り続けるということが、習得条件の一つであると言うことだけは分かっている。上位の称号と思われる【魔獣の殺戮者】であれば、その習得には【魔獣殺し】以上に魔獣を殺し続ける必要があるはず。

 重要なのはこの点だ。

 魔獣狩りというパーティーは、その名にも使う程に魔獣という種族の魔物へ、強い想いを抱いている。その上で、パーティーに所属する全員が【魔獣殺し】や【魔獣の殺戮者】を習得するほどに魔獣を狩っているということは、それだけ魔獣との戦いの経験が豊富と言うことだろう。

 そう、私が想像した魔獣狩りに所属する冒険者たちが持つ先読みの力の正体は、数多くの魔獣と戦い続けることで培われた経験則。それをもとに、彼らはガルセコルトという魔狼の動きを先読みして、戦っているのだ。

 実際、彼らはたまにガルセコルトの動きを読み間違えることがあった。恐らくその瞬間、ガルセコルトの動きが、彼らの経験してきた魔獣の動きを越えたのだろう。だが、彼らはそこで慌てたりしない。片方が動きを読み間違えれば、もう片方が助けに入り、すぐ持ち直してしまう。その上、一度でも受けた攻撃は、もはや二度と通用しない。即座に対応されてしまうのだ。


 これで彼らの使う先読みの謎は解けた。

 とはいえ、それが分かったからといって、そこに大した意味は無い。何故ならガルセコルトはとっくに自身の動きが読まれていることを理解して、先ほどから色々と意表を突く戦い方を行っているからだ。けれど、戦いが長引けば長引く程、それらは魔獣狩りの経験則から外れた動きではなくなり、以降はガルセコルトがどんな動きをしようとも、彼らはしっかりと対応していた。



 しかし、魔獣狩りが押している現状の理由は、それだけでは無いだろう。

 今の魔獣狩りの戦い方と、昨夜の魔獣狩り戦い方で最も違っているのは、広い部屋全体を使った縦横無尽な動きだ。前衛として戦う大剣の戦士ルーヴァスと大槍の戦士スルークスは、ガルセコルトの近くで常に走り続け、片時も止まることなく攻撃と回避を行っている。

 守りに関して言えば、騎士たちに守られていた時の方が、体力を減らすことなく攻撃を防げていただろう。だが、攻撃の手数で言えば、今の方が圧倒的に多い。それに一つ一つの攻撃も、今の方が全力を出せているように思う。

 なにせ今の戦士二人の攻撃は、一度振るわれれば、ガルセコルトの毛皮だけでなく、その背後にある壁にまで深い傷を残しているのだ。

 あれを昨夜の状況でそのまま振るえば、確実に周囲を囲む騎士たちが犠牲となっていただろう。

 集めた情報からして、騎士たちと冒険者たちの間には多少の確執はあったようだが。

 さすがに命を奪う可能性を無視してしまうほどの敵意がある訳では無かったのか。

 もしくは冒険者側に何か別の思惑があった可能性もあるけれど、その辺りは私にはどうでもいい事だ。

 重要なのは、現状で魔獣狩りが押しているというこの状況である。


 なかなかに危険な状況だが、この場に関して私に出来ることは何もない。

 それにそろそろ、黒牙の下に先へ進む侵入者たちがやってくる頃だ。


 不安ではあるが、ここはガルセコルトを信じて、黒牙の待つ第四階層へと意識を移そう。








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