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不滅のダンジョンマスター  作者: やみあるい
第二章 迷宮覚醒の章

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エピローグ.会議

あらすじ


魔鼠たちによる情報網は正常に機能し、“私”へ沢山の情報を届けてくれている。

魔鹿の群れと魔狼の群れは心強い同盟者となった。

そして残る魔蜂の群れを討伐したことで、黒牙はさらなる進化を遂げる。

支配領域も広げられるだけ広げ、第一階層の最大まで拡大した。

そうしてついに、“私”は魔鼠たちからその報告を聞く。

生きるために、生き延びるために、“私”は戦う覚悟を決める。

 勇王国カツラギの王城、謁見の間。

 現在そこには、宰相を初めとして、各大臣、騎士団長、宮廷魔導士長など、限られた重要人物たちが急遽集められ、揃って難しい顔を並べていた。

 そんな彼らに囲まれるようにして騎士が一人、空の玉座へ跪いている。

 騎士の名はフロイグ・ベルセード。勇王国建国初期から名を連ねる高位貴族ベルセード伯爵家の三男にして、【Bランク冒険者】の称号を持つ騎士団の若手だ。

 フロイグは青くなった顔を床へ向け、震える手で拳を固め、強く握りしめながら、その時を待っていた。フロイグはまだ呼び出された理由を知らされていない。だが、この場に満ちる雰囲気から、何か良くないことが起こったのだと、直感的に理解していた。



 国王が壇上の端から現れて玉座に付くと、いよいよ会議が始まる。

 国王の側に立つ宰相が一歩前に進み出て、居並ぶ者たちに向かい、国王の言葉を代弁すべく口を開いた。


「今日其方らに集まってもらったのは、他でもない。以前から話題に上っていた病魔の森について、新たな情報が齎されたからだ。詳細は冒険者ギルド、勇王国カツラギギルド統括ギルドマスター、ガルバート殿から語ってもらう」


 宰相の言葉に促され、集うものたちの中から、未だ屈強な体つきを残す白髪隻眼の翁が、一歩前に進み出る。そして、その経緯を話し始めた。


 発端は、病魔の森で本来の強さに見合わぬ力を持った魔物と交戦した、という冒険者の報告からでした。その冒険者が交戦したのは、Fランクのゴブリンだったそうですが、Eランクから、下手したらDランク相当の力を持っていた、とのこと。幸いなことに交戦した冒険者が戦闘の得意なCランクの者たちであったため、大事には至りませんでしたが、これは明らかに異常なことです。

 ダンジョン内であれば、ランクに見合わぬ力を持つ魔物の出現も不思議なことではありません。ですが、病魔の森はダンジョンではない。

 であれば、それは近場にあるダンジョンでスタンピートが発生した、と考えるべきです。病魔の森の近くにあるダンジョンは、病魔の森のダンジョンのみ。

 だからこそ私は病魔の森を、緊急特定危険領域に指定したことを冒険者たちにまず伝え、病魔の森のダンジョンへの特殊調査依頼を出しました。

 ご存じとは思いますが、ダンジョンのスタンピートは周囲へ甚大な被害を巻き起こしますので、迅速な調査とそれに基づいた適切な対処が不可欠です。

 幸いなことに丁度良い人材が当ギルドに滞在中であったため、その者に頼むことで早急に調査へ向かって貰うことが出来ました。

 数日が経ち、帰ってきた冒険者の報告によると、スタンピートは確かに起きたが、既に収束した後だったそうです。そちらに関しては、問題ありませんでした。

 問題は、その冒険者が持ち帰ってきたもう一つの報告に関してです。その冒険者は病魔の森のダンジョンを未到達の第四階層まで進んだ所で、強力な力を持つ魔物たちに襲われました。これもまたあのダンジョンの危険度を書き換えるうえで、重要な情報ではありますが、最大の問題はこの後に付け加えられた一言です。

 彼は言いました。


 襲ってきた中で最も強い力を持っていた魔物は、闇を操る魔鼠だった、と

 」


 統括ギルドマスター、ガルバートが最後の言葉を告げた瞬間、部屋の中に重い沈黙が降りかかる。誰もが、一言も喋れない。それもそのはず。勇王国において、禁忌とされる魔鼠系統の魔物。それがよりにもよって、あの病魔の森にあるダンジョンで発見されたというのは、それほどに重要な意味を持つのだ。

 統括ギルドマスターガルバートは、語ることを語り終えると、その場から一歩下がり、元いた地点へと戻っていく。


 それから、暫くの沈黙を経て、国王が重い口を開いた。


「騎士フロイグよ。お前の報告では、あのダンジョンに異常な部分は無く、ダンジョンとしての格も低い、勇者の足跡を探すには値しない場所であるとのことだったが。此度の件について、何か弁明はあるか?」


 聞かれたフロイグは、ビクリとその肩を震わせて、同じく震えるその唇を開いた。


「わ、私は確かに病魔の森のダンジョンを探索致しました。しかし、その時には異常は何処にも見られず……そ、そもそもっ! その報告を持ってきたという冒険者は信用できるものなのか!? 言い方からして、この国の者では無いようだが?」


 途中からフロイグはガルバートへ首を向け、そちらへ怒鳴るように問いかける。声へ籠る怒声に反して、フロイグの目は何処か縋るようであった。そうであってほしい、と。

 苦し紛れのようにも聞こえる言葉だったが、それを言及する者は無く、皆の首が問われたガルバートへと向けられた。一考の余地はあるとでも言うかのように。

 その瞬間、フロイグの脳裏に微かな希望が芽生えた。

 だが、現実は無情である。

 問われたガルバートは、その場から動くことなくフロイグの問いへ答えるべく口を開いた。


「確かに彼は勇王国の冒険者ではない。スタンピートの可能性があり、しかもその場所は危険度の高い病魔の森の中心近く。それ相応の冒険者を探していたら、彼が手を上げてくれたのだ。彼の故郷は魔導王国スカラビ。彼の名はイグニス。【Aランク冒険者】の【孤高の炎剣】イグニスです」


 その言葉を聞いた瞬間、フロイグの目が大きく見開かれる。その他の者たちも同様に、上げられた名に驚いていた。それを口にした張本人であるガルバートと、事前にそれを聞いていた国王、宰相の三人を除いて。


「イグニ、ス? 【Aランク冒険者】の? それは、まさか、【孤高の炎剣】竜殺しのイグニス、です、か?」


 震えるフロイグの声に、ガルバートはただ首肯をもって答えた。



 【孤高の炎剣】という二つ名で知られる【Aランク冒険者】イグニス。その名は【Aランク冒険者】へと昇格する最大の要因ともなった竜殺しという英雄譚と共に、広く世界に知られていた。

 彼の故郷である魔導王国スカラビ。その辺境にある片田舎の村にほど近い山へ、ある時、火竜が住み着いた。

 竜という魔物の脅威は有名だ。下手をすれば一国をも滅ぼす力を持つ怪物、それが竜。

 されどその場所は、辺境の片田舎。魔導王国の首都からはかなり離れている。その事から魔導王国は、わざわざ騎士団による遠征討伐を行わず、ただ冒険者ギルドへ依頼を出すのみに留めていた。

 その依頼を受けたのが、当時イグニスが率いていた六人組のパーティーだ。彼らは魔の領域にあったあるダンジョンを踏破したことで、名が売れ始めていた新進気鋭のBランクパーティーだった。

 彼らは火竜退治に乗り出して、激闘の末、パーティーメンバーの犠牲の果てに火竜へトドメを刺すことに成功する。

 犠牲となったのは五人。

 生き残ったのは、イグニスただ一人だ。

 その後、イグニスは仕留めた火竜の素材を使い、二つ名の素となる火竜の剣を手にした。そして、二度とパーティーを組まず、今もたった一人で冒険者を続けているという。



 【Aランク冒険者】とは実質、冒険者ギルドの認定する最高位のランクである。これを越える称号は、魔王の討伐を成した伝説級の英雄に贈られるランクのみ。

 元来、実力主義で知られる冒険者ギルドにおいて、そんな【Aランク冒険者】の肩書は非常に強い効力を持つ。それはつまるところ、全国に支部を持つ冒険者ギルドが、その者の信用を保証するという事だ。【Aランク冒険者】という肩書には、それほどの効力があった。

 ただしそれは同時に、もし冒険者が犯罪を犯したり、故意に嘘の報告を行った場合は、各国にある冒険者ギルドがその威信にかけ、総力を挙げてその者を罰するということでもある。

 それ故に、古参の貴族家出身とはいえ、伯爵家三男であり一介の騎士でしかない【Bランク冒険者】フロイグと、生ける伝説である【Aランク冒険者】【孤高の炎剣】イグニスとでは、どちらにより信用が置けるか。それは誰の目にも明白であった。


「弁明は無いようだな」


 国王の言葉に、フロイグはただ跪き、首を垂れることで答えとする。その姿はまさに、沙汰を待つ罪人のようであった。

 言い訳は幾らでも考え付く。だが、事が起きてしまった以上、もはやそれらは全て騎士が口にしてよい弁明とは言い難い。フロイグの内にある騎士としての矜持が、貴族としての誇りが、フロイグの口を噤んだ。

 国王はそこで黙し、その視線で宰相へ向け、議題を先に進めるよう促した。


「勇王国カツラギに魔鼠の存在を許すわけにはいかぬ。これより勇王国は、病魔の森のダンジョンとそこを住処とする魔鼠たちを殲滅すべく、冒険者ギルドと連携を取って動いていく。これは既に決定事項であり、どのような反対意見が出ようとも、覆ることは無い。全てにおいて優先し、病魔の森のダンジョンの攻略及び、魔鼠の一掃を行う」


 その言葉に集まった者たちからざわめきが起こる。確かに魔鼠は勇王国カツラギにとって、その存在を許してはならない天敵だ。だが、だからと言って、あの未だ危険が犇めく病魔の森の最奥へ向かって、進軍するというのはあまりにも損害の伴う行為である。現状での被害が少ない事を鑑みて、果たしてそこまでする必要があるのか。そう思う者たちは少なくなかった。

 それを感じ取ったのだろう。国王がその重い口を開き、今回の騒動の核心に触れた。


「勇神ユウト様より齎された神託によれば、神域が侵害された形跡は無いそうだ。つまり、魔の領域や他の国からその魔鼠がやってきた可能性はゼロである。となれば、その目撃された魔鼠と、その魔鼠が住処とする病魔の森のダンジョンは、彼の【大魔王】病魔を振りまく厄災と何らかの繋がりがあると見るべきであろう。魔鼠は我が勇王国カツラギの禁忌であり、彼の【大魔王】病魔を振りまく厄災に連なる存在は、勇神ユウト様の敵である。それだけではない。もし彼の【大魔王】病魔を振りまく厄災が再来するような事になれば、それはもはやこの国だけの危機ではないのだ。全世界の人間が滅びる可能性すらありうる」


 痛みを伴う選択をする覚悟を持った国王の眼差しに、皆が静まり返る。


「それに、これは勇神ユウト様のご意思でもある」


 最後に告げられた国王の言葉は、その決定が絶対であると物語っていた。

 再度、宰相が口を開き、議題を進める。


「ここからは病魔の森のダンジョンへ攻め込む方法についてを話し合ってもらう。ダンジョンの探索については、冒険者ギルドに一日の長がある。ガルバート殿にも続けて会議に参加してもらい、忌憚なき意見を語ってもらうぞ」




 こうして議論は開始され、数日の後より勇王国は、病魔の森のダンジョン攻略に向けて、本格的に動き出すのだった。



ストックが切れたので、ここで一旦終了です

次の更新は、またある程度ストックが貯まってからを予定


評価、感想、ブックマークの登録ありがとうございます。

レビューまで頂き、大変うれしく読ませていただきました。

これらを励みに出来る限り全力で、書いていこうと思います


それではみなさま、良いお年を!

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― 新着の感想 ―
[一言] 「  発端は、病魔の森で本来の強さに見合わぬ力を持った魔物と交戦した、という冒険者の報告からでした。  襲ってきた中で最も強い力を持っていた魔物は、闇を操る魔鼠だった、と  」 …
[一言] 一気読みしてしまった...コツコツ成長していくのがなんとも楽しい... 更新楽しみに待っています!
[一言] 今年もよろしくお願いします。 更新楽しみに待ってます!
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